京都と言えば懐石料理やおばんざいなどの和食がまず思い浮かぶが、一方でパンへの支出が全国で最も多い「パン屋激戦区」の地としても有名だ(総務省、家計調査より)。実際、市内には「進々堂」や「志津屋」をはじめとした老舗チェーンからアットホームな店まで、大小様々な規模のパン屋がいたるところに点在している。

  • 「まるき製パン所」には昔懐かしいパンがいっぱい!

    「まるき製パン所」には昔懐かしいパンがいっぱい!

老舗のパン屋のメニューとして、何となく「コッペパン」をイメージする人も多いのではないだろうか。そこで今回、京都を代表する老舗パン屋のひとつで、地元に根強いファンを持つ「まるき製パン所」を取材してみた。何を隠そう、このまるき製パン所の看板メニューはコッペパン! 人気の秘密を探ってみたい。

平日にも関わらず早朝に行列!

まるき製パン所へは、京都駅烏丸口バスターミナルA3のりばから市バス206号系統で向かう。最寄りのバス停は「大宮松原駅」となる。大宮通から松原通に入り、商店街を少し歩くと、お惣菜とパンのいい匂いがふんわりと漂ってくる。あった! 「まるき製パン所」だ!!

  • 最寄のバス停は「大宮松原駅」。松原通を歩いていると、パンのいい匂いが漂ってくる

まるき製パン所は店先に各種パンがずらりと並ぶオープンなつくり。商品は食パンや菓子パンといった定番のほか、コッペパンに様々な具を挟んだものが多い。子ども連れの家族から年配の人まで、お客がひっきりなしに訪れている。常連さんらしきお客で、何十個という単位でパンを購入する人も見かけた。

  • レトロな木の看板が目印。お客がひっきりなしに訪れる人気ぶり

    レトロな木の看板が目印。お客がひっきりなしに訪れる人気ぶり

店頭のすぐ奥に厨房があり、どんどん新しいパンが出来上がり、すぐに売れていく。次々と訪れるお客に従業員がテキパキと笑顔で接客されているのが印象的だ。

  • オープンな店頭に様々な種類のパンがずらりと並ぶ。パンを何十個も購入するお客も

    オープンな店頭に様々な種類のパンがずらりと並ぶ。パンを何十個も購入するお客も

大人気のコッペパン、誕生のきっかけは?

忙しい中にも関わらず、社長の木元廣司さんが快く取材に応じてくれた。

  • 快く取材に応じてくれた、社長の木元廣司さん

    快く取材に応じてくれた、社長の木元廣司さん

――お店の温かい雰囲気と活気に驚きました! 毎日どのくらいの数のパンを焼いているのでしょうか?

パンの種類は約60種類あります。なくなったらその都度、焼いているので、総数は数え切れませんね(笑)。

――お店は創業から何年になりますか?

昭和22(1947)年に妻の父が創業したので、もう70年以上になります。義父の病気がきっかけで、私と妻が店を継ぐことになりました。私はそれまでパン作りの経験がなかったので、最初の内は本当に手探りでした。現在は私と息子が中心となって経営しており、新メニューの開発にも積極的に挑戦しています。何を買おうか迷っているお客さんを見かけると、「もっと魅力的なパンを作ろう」と思いますね。

――コッペパンを使ったメニューが多いのはなぜですか?

現在はもうないのですが、以前、店の近くに女子高があったんです。そこの学生さんが通学時に大勢来られるものだから、パンがあっという間に売れてしまって。そこで、具材を挟むだけですぐに出せる、コッペパンの商品をたくさん作るようになりました。

  • コッペパンたちは次から次へと生まれていく

    コッペパンたちは次から次へと生まれていく

――コッペパンはお客さんの要望に応えた結果、偶然生まれたメニューだったんですね! パン作りへのこだわりを教えてください

よく聞かれますが、特にはないんです(笑)。お客さんに喜んでもらえたらそれでいいと思っていますね。強いて言えば、コッペパンは一般的なものより柔らかめ、甘めかもしれません。また、パンの具は、無添加・手作りを心がけています。やはり、市販のものと全然味が違うので。

  • コッペパンは生地を1時間程度寝かせてから焼きに向かう

    コッペパンは生地を1時間程度寝かせてから焼きに向かう

パン作りの現場も見せていただいた。コッペパンは生地を1時間程度寝かせてから焼き上げる。そして、焼き上がったパンに、従業員が手際よく手作りの具を挟んでいく。出来立てのパンはどれもおいしそう。

  • 手早く具を詰めていざ、店頭へ

    手早く具を詰めていざ、店頭へ

お待ちかね! オススメパンを実食!!

続いてはいよいよ実食タイム! 特に人気が高いパンを教えてもらった。

不動の1位は「ハムロール」(170円)
店での一番の人気メニューが「ハムロール」。とてもシンプルなメニューで、コッペパンにキャベツとハム、マヨネーズを載せたものだ。人気の理由を聞くと、「おいしいから」と木元社長。

食べてみて納得。シンプルなのにめちゃくちゃおいしい! 柔らかいコッペパンがシャキシャキしたキャベツとハムの食感が引き立てている。パンの甘さと素材の味のバランスが絶妙。このおいしさは文章では伝えきれないので、ぜひ現物を味わってほしい!

  • 「カツロール」(220円)は、分厚いハムカツがおなかをしっかり満たしてくれる
  • 「ハムロール」(170円)はシンプルで素材の味が引き立つ

ボリューム大臣「カツロール」(220円)
あっさりとパクパク食べられるハムロールに対し、がっつりおなかを満たしたいなら「カツロール」がオススメ。ハムロールと同じハムの原木を厚切りにして、揚げているのでボリューム満点だ。

  • 「カツロール」(220円)は、分厚いハムカツがおなかをしっかり満たしてくれる
  • 「カツロール」(220円)は、分厚いハムカツがおなかをしっかり満たしてくれる

    「カツロール」(220円)は、分厚いハムカツがおなかをしっかり満たしてくれる

シャキシャキ食感がたまらない「サラダロール」(220円)
おかずパンとしては「サラダロール」も人気だそう。食べてみると、トマト、キュウリ、キャベツという生野菜が驚くほど新鮮だった。クリーミーなポテトサラダとシャキシャキした野菜の歯ごたえが楽しい。

  • 「サラダロール」(220円)は、クリーミーなポテトサラダとシャキシャキした野菜の歯ごたえが楽しい

    「サラダロール」(220円)は、クリーミーなポテトサラダとシャキシャキした野菜の歯ごたえが楽しい

高級感のある上品な甘さ「あんぱん」(150円)
惣菜系以外にも、「あんぱん」は雑誌の特集で西日本チャンピオンに輝いたこともある、同店屈指の人気メニューだ。普段食べるあんぱんとは全くの別物で、小豆の風味が際立つ上品な甘さのあんは、まるで高級和菓子のよう。あんはもちろん、無添加・手作り。

  • 「あんぱん」(150円)。手作りのあんは甘すぎず、高級感のある味

    「あんぱん」(150円)。手作りのあんは甘すぎず、高級感のある味

冬季限定! 2種のクリームがコラボする「シスター」(170円)
少し変わり種として人気なのが、2種のクリームを揚げパンで挟んだ冬限定のパン「シスター」だ。名前は姉妹のような「ミルククリームと生クリーム」にちなんでつけられた。どこか懐かしい甘さで、包み込まれるような優しさを感じる。疲れた時、コーヒーとともにゆっくり食べたくなる味。

  • 「シスター」(170円)はどこか懐かしい甘さ。ミルククリームは、牛乳、生クリーム、砂糖、小麦粉、コーンスターチを混ぜたもの

    「シスター」(170円)はどこか懐かしい甘さ。ミルククリームは、牛乳、生クリーム、砂糖、小麦粉、コーンスターチを混ぜたもの

リーズナブルでおいしく、懐かしく、それでいて新しい驚きがあるまるき製パン所の麗しきパンたち。各種コッペパンは、食べ歩きにも便利なお手頃サイズなので、朝イチで購入して京都観光のおともにぜひどうぞ。

●information
まるき製パン所 住所: 京都府京都市下京区松原通堀川西入ル
営業時間: 6:30~20:00(日曜日・祝日: 7:00~14:00)
定休日: 不定休

※価格は税込