2018年度以降の増税や減税、新税の創設といった税制改正をまとめた税制改正大綱が、昨年12月に発表されました。実際に施行されるまでには閣議決定や国会での関連法案の可決が必要になりますが、大綱は比較的実現性が高い文書と位置づけられています。これをチェックすると、これから負担増になる税金などをいち早く把握することができるのです。

2020年1月から所得税の仕組みが変わる

今回の税制改正大綱で、最大の注目点となったのが所得税の仕組みです。基本的な考え方としては課税される所得を圧縮できる様々な控除を見直し、働き方によって税負担に大きな違いが出ないようにするということ。所得税の税率を変えるのではなく会社員向けの「給与所得控除」を縮小して、すべての納税者が受けられる「基礎控除」を拡大することになりました。

具体的には、年収850万円以下の会社員の給与所得控除を一律10万円減らし、納税者の誰もが使える基礎控除を10万円増やします。これにより年収850万円以下の会社員は減税にも増税にもなりませんが、会社に所属せずフリーランスや個人請負などで働く人は減税になります。

しかし年収850万円超の会社員は給与所得控除が195万円で頭打ちとなるため、基礎控除を含めた控除額が全体として減少。これにより、下図のように年収900万円の場合は年間1万5,000円、1,000万円の場合は4万5,000円の負担増になると試算されています。

  • 会社員の増税額

対象者は会社員や公務員の4%に当たる約230万人。家族に22歳以下の子供や介護が必要な人がいる場合は対象外になりますが、2013年以降は下図のように給与所得控除額は度々削減されてきました。

当初は年収1,500万円超という高収入の人が対象でしたが、今回の改正では850万円超の人まで対象が拡大。給与所得者の税負担は増える一方です。

  • 給与所得控除額の上限がどんどん引き下げられている

そのほか、年金受給者向けの「公的年金等控除」も見直されます。基礎控除が10万円増える分として一律で10万円減らした上、年金以外の年間所得が1,000万円を超える人は控除額を最大20万円引き下げ、年金収入が1,000万円を超える人は控除額の上限が195万5,000円に。年金受給者の0.5%に当たる約20万人が増税になると見込まれています。

新しい税金「国際観光旅客税」と「森林環境税」が導入される

所得税の仕組みに次いで、個人が注目すべき内容が2つの新税です。

ひとつは、訪日外国人客の帰国時はもちろん日本人が旅行や仕事で出国する際に、1人あたり1,000円を航空運賃などに上乗せして徴収する国際観光旅客税が2019年1月7日から導入されること。集めた税金の使い道は出入国手続きの自動化、国内観光のプロモーション、観光拠点や文化財の整備などが想定されています。

もうひとつが、地球温暖化対策として、市町村が森林を整備・管理する財源に充てるため2024年度から導入される「森林環境税」。個人住民税に上乗せする形で、年1,000円が徴収されることになります。しかし23年度までは東日本大震災の復興事業費として住民税に1,000円上乗せされているため、実質は税の目的が変わるだけで負担に変化はありません。

しかし37府県と横浜市は、既に森林環境税と同じ目的で独自に年300~1,200円を課税しているため、こうした地域に住んでいる人は国と自治体に二重の税を徴収されることになります。

  • 鈴木弥生

鈴木弥生

編集プロダクションを経て、フリーランスの編集&ライターとして独立。女性誌の情報ページや百貨店情報誌の企画・構成・取材を中心に活動。マネー誌の編集に関わったことをきっかけに、現在はお金に関する雑誌、書籍、MOOKの編集・ライター業務に携わる。ファイナンシャルプランナー(AFP)。