ニュース番組などの報道で、たびたび耳にする「コンプライアンス」。なんとなく理解できるけど、正しく理解している自信はない…… という人は多いはず。そこで今回は、「コンプライアンス」の意味と使い方について詳しく紹介します。

「コンプライアンス」の意味や使い方を学びましょう

コンプライアンスの意味

コンプライアンスとは、「遵守」「従順」「適合性」などの意味を持つ英語【compliance】から来たカタカナ用語です。ビジネスシーンでは「法令遵守」のことを指し、文字通り、企業が法などに反することなく業務を正しく遂行することを意味します。

「法令」と聞くと、法律や条例のことだと思う人も多いと思いますが、それだけではありません。私たち個人もそうですが、人から信頼される人物であるためには、単に法律さえ守っていればよいというものではありませんね。毎回遅れてきたり、口が軽かったり、順番待ちの列に横入りしたり…。いずれも法律違反ではないかもしれませんが、モラルに欠けます。

企業も同じです。今の時代、「法に触れさえしなければいい」という安易な考え方は通用しません。社内ルールやマニュアル、倫理的・道徳的なモラルといった社会規範にも注意を払いつつ、すべての業務に公正かつ誠実に向き合わなければなりません。

具体的なコンプライアンス違反事例

企業におけるコンプライアンス違反の例を挙げると、「粉飾決算」「脱税」「インサイダー」「横領」「談合」「個人情報流出」「産地や性能の偽装」「リコール隠し」「過労死」「賃金不払い」「出資法違反」など、実にさまざまです。

世間を騒がせたンプライアンス違反事例としては、「かんぽ生命による不正販売問題」が記憶に新しいのではないでしょうか。信頼の厚い郵便局が、まさかの詐欺まがいの不正契約を行っていたことは、驚きでした。

ほかにも、以下のようなケースがあります。

・レオパレス21の建築基準法違反
吉本興業タレントによる不祥事と事務所の対応
・関西電力の金品受領
・ゼネコン大手4社によるリニア新幹線の談合
旅行会社てるみくらぶの粉飾決算
・神戸製鋼の性能データ改ざん
東芝グループの不適切な会計

このように毎年、多くのコンプライアンス違反が発生しています。日本では、特に2000年以降に企業の不祥事が相次ぎ、この頃から、コンプライアンスがクローズアップされるようになりました。

コンプライアンス違反が起きる原因

知識不足

コンプライアンス違反が起きる原因もさまざまですが、その一つとして「知識不足」が挙げられます。「横領」や「データ改ざん」「情報漏洩」などであれば、明らかにやってはいけない事だとわかるでしょう。では、「会社の備品(ボールペンなど)を自宅に持ち帰って使ってしまっている」というのはどうでしょうか。実はこれも「横領」になります。

また、「脱税」した人が「正しいと思ってやってきた会計処理が、実は間違いだった」と言い訳することがありますが、それが本当であれば、これもまた知識不足が招いた結果と言えるでしょう。ちなみに、故意の場合は、単に国にお金を渡したくないからですね。

不正を働きやすい企業体質

欠陥品であることを知りながらの「リコール隠し」、業績をよく見せようとしての「粉飾決算」など、経営陣自らが不正を指示するケースも珍しくありません。こうした組織ぐるみの不正を行うような企業は、コンプライアンスに対する従業員の意識が低いだけでなく、経営陣の責任感も希薄で、企業自体が不正を働きやすい体質であると言えます。

内部牽制が機能していない

個人による不正が気付かれないのは、「内部牽制が機能していない」職場だからです。長期間にわたって、同じ人物が一人で経理を担当していると「横領」に手を出してしまったり、発注側と受注側の担当者が長年同じだと「水増し請求」など、他人の目が届かない状況が続くことで不正が起きやすくなったりします。

そのため、通常は業務の分担、配置転換、内部監査などの対策がとられています。しかしながら、そもそも支店がなかったり、従業員数が少なかったりする職場では、それも難しいのが現状です。

コンプライアンス体制を構築する意義

多くの時間と努力、実績を積み重ねて得た信用は、たった1度の不正で簡単に崩れてしまいます。失った信用を取り戻すのは容易でなく、倒産に追い込まれるケースも少なくはありません。そこで、コンプライアンス違反を未然に防ぐために重要とされているのが、「コンプライアンス体制の構築」です。

具体的には、「知識不足」を防ぐために、守るべき法令や規則、起こり得るリスク、違反した際の罰則などをまとめたマニュアルや行動規範の作成、専門家による社員研修の徹底など、コンプライアンスに対する教育を行います。教育は従業員のみならず、会社のトップや経営陣も受けるべきです。

また、前項でも述べたように、内部牽制をきちんと機能させることも重要です。業務の分担、配置転換、内部監査のほか、各部署にコンプライアンス担当者を配置したり、専門部署を設置したりするのもよいでしょう。最近では、不正に気付いたものの、どうすればいいのかがわからない人のために「内部通報窓口」を設置する企業も増えています。これだけでも、抑止効果は期待できます。

こうした教育や対策に取り組むことで、従業員の意識を高め、不正のしづらい環境と風土を確立することが重要なのです。

コンプライアンス標語コンテストとは

コンプライアンスを世の中に浸透させるためのユニークな取り組みも行われています。企業のコンプライアンス推進活動を支援する会社「ハイテクノロジーコミュニケ―ションズ(HTC)」は毎年、コンプライアンスをお題とした「標語コンテスト」を開催しています。この標語コンテストもその一例です。

2020年7月に発表された「第11回 コンプライアンス標語コンテスト 特選100」では、「灰色も 重ねて塗れば 真っ黒に」が最優秀賞に選ばれました。また、「心にも あるぞソーシャル ディスタンス」「テレワーク コンプラ意識も 持ち帰る」「パワハラは 自粛じゃなくて 禁止です」など、新型コロナウイルス感染拡大に関連した作品が目立ちました。

なお、入選作品を含む100作品は「コンプライアンス標語コンテスト 特選100」として、同社ホームページにて公開されており、企業・団体のコンプライアンス意識向上のために自由(無償)で使用することができるとのこと。ぜひ、活用してみてはいかがでしょうか。

コンプライアンスの使い方と例文

  • コンプライアンス意識を持って、行動しましょう
  • 新入社員のコンプライアンス教育を徹底してください
  • 我が社も、コンプライアンス体制を確立すべきです
  • 我が社は、コンプライアンス重視の経営を行っています
  • まだまだ小さい会社ですが、コンプライアンスは徹底していると自負しています

まとめ

不正防止の観点からコンプライアンスについてお話してきましたが、コンプライアンスは、不正防止のためだけでなく、社会から信頼され、期待されるような企業であるために取り組むものでもあります。

コンプライアンス体制を構築・運用できている企業は、法令遵守に対する従業員の意識が高いとみなされ、消費者や取引先から「優秀な企業」「信頼できる企業」と高い評価を得ることができます。ひいては、業績向上やブランド価値の向上、株価の安定など、企業全体の質や価値の向上につながるでしょう。

また、営業のアピールポイントとしても有効です。先方から聞かれることもあるでしょう。具体的にどう取り組んでいるのかを説明できるよう、自社のコンプライアンス体制についてしっかり把握しておきましょう。