Windows 10を取り巻く環境が変化しつつある。これまでのWindows OSはリリース日を起点としたサポートライフサイクルを設けてきたが、WaaS(Windows as a Service)という概念を取り込んだWindows 10はサポート期間が不明確になった。
Windows 10と連携するOffice 365のサポートライフサイクルにもずれが生じたことから、2017年6月には「Windows 10とOffice 365 ProPlusはリリース日から18カ月サポート」するサービシング期間の統一を明らかにしている。
一方、Microsoftによれば「1年半では短い」とサポート期間の延長を求める顧客が少なくないという。そのため同社は「EnterpriseおよびEducation向け追加サービス」を新たに設けることを公式ブログで明らかにした。
Windows 10 1607(Anniversary Update)は2018年4月10日でサポート終了
上図は公式ブログで発表された内容をまとめたものだが、例えば現行のWindows 10 バージョン1709は、2019年4月9日にサポート終了を迎えるが、Windows 10 EnterpriseおよびEducationの場合は、2019年10月8日まで利用可能であることが見て取れるだろう。
なお、本稿執筆時点のWindowsライフサイクルのファクト シートでは、Windows 10 バージョン1607以降のサポート終了時期が仮定だった。
Office 365 ProPlusについてはシステム要件の変更が加わっている。「サポート終了を迎えたWindows 10半期チャネルは対象外」「2020年1月14日以降、Office 365 ProPlusはWindows 8.1以前、Windows Server 2016以前、Windows 10 LTSC(Long Term Service Channel)をサポート対象外」になるという。
その理由としてMicrosoftはWindows 10とOffice 365の両者が常に最新の機能を備えると同時に、セキュリティを担保するため、定期的な更新を確実に取得するためだと説明する。
新たなリモートデスクトップ機能とVDI機能を提供予定
また、すべての環境を刷新できない利用者の救済策として、Windows 10 EnterpriseおよびWindows Server半期チャネル向けに、新たなリモートデスクトップ機能とVDI(仮想デスクトップ基盤)機能を2018年後半に提供する予定だ。
他方でMicrosoftが開発中の技術として「RAIL(Remote Application Interface Layer)」と「VAIL(Virtualized Application Interface Layer)」がある。
前者はMicrosoft Azureを利用してデスクトップアプリを実行し、後者は非ネットワーク環境を対象にデスクトップアプリを仮想化レイヤー上で実行する技術だ。これらを開発コード名「Polaris」に取り込み、Windows 10プラットフォームを拡充するデバイスに搭載するのでは、という噂(うわさ)が以前から流れていたが、同社はRAILやVAILをOffice 365のサポート対象OS変更に伴う救済策に用いるのではないだろうか。
2018年第2四半期にプレビュー版が登場するOffice 2019は、Windows 10半期チャネル、Windows 10 Enterprise LTSC 2018、次期Windows Server LTSCでしか動作しない。
インストール方法も基本的にはClick-to-Run技術のみとなり、MSI(Microsoft Windows Installer)はOffice Server製品に限定する。公式ブログではWindows 7などに触れていないため、事実上Windows 10/次期Windows Serverでのみサポートする形だ。
本件についてMicrosoftは、「10年以上経過し、イノベーションの恩恵を受けていないソフトウェアは、安全性や生産性が乏しい。以前は5年間の標準サポート期間と5年間の延長サポート期間を設けていたが、新しく効率的な管理ソリューションと、包括的なセキュリティアプローチを提供するため、Office 2019は5年間のメインサポートと約2年間の延長サポートとする」と述べている。
常に新しいモノを欲するユーザーには、特に問題な変更点だが、移行コストが大きな負担となる大企業や中堅中小企業は注視すべき情報である。日本市場では各社が提供するVDIソリューションの価値がさらに高まるだろう。
阿久津良和(Cactus)