米労働省が2月2日に発表した1月雇用統計の主な結果は、(1) 非農業部門雇用者数20.0万人増、(2) 失業率4.1%、(3) 平均時給26.74ドル(前月比0.3%増、前年比2.9%増)という内容であった。
(1) 1月の非農業部門雇用者数は前月比20.0万人増と市場予想の18.0万人増を上回った。幅広い業種で雇用が増加しており、米北東部を襲った寒波の影響はほとんど見られなかった。米経済の堅調さを裏付ける結果と言えるだろう。 なお、人口の集計方法や季節調整の方法を改めた結果、2017年の非農業部門雇用者数は合計で217.3万人増となった(改定前=205.5万人)。
(2) 1月の失業率は、4.1%となり市場予想と一致。2000年12月以来の低水準を4カ月連続で維持した。ただ、労働参加率は今回も62.7%と低水準にとどまっており、不完全雇用率(フルタイムを希望しながらパートタイムで働く労働者を含めた広義の失業率)は0.1ポイント上昇して8.2%に悪化した。
こうした点は、依然として米雇用市場に改善の余地がある事を示している。
(3) 1月の平均時給は26.74ドルとなり、前月から0.09ドル増加。伸び率は前月比+0.3%で市場予想と一致したが、12月分が上方修正(26.63ドルから26.65ドルへ)された事を考慮すれば予想以上の結果と言えるだろう。
また、前年比では2.9%増加して2009年6月以来の高い伸びを記録。市場予想の2.6%増も大きく上回っており、労働需給の引き締まりがようやく賃金上昇に結び付き始めた可能性を示す結果となった。
米1月雇用統計で最も印象的だったのは、賃金の伸びが加速した点だろう。インフレ率を米連邦準備制度理事会(FRB)が目標とする2%に押し上げるためには、前年比+3%程度の賃金上昇が必要とされており、今回はその兆候が見られた事になる。米政府による減税措置の効果も相まって、今年はインフレ率の上昇が鮮明となる可能性がある。
そうなるとFRBの利上げが昨年以上にペースアップする事も考えられる。そうした見方からか、今回の雇用統計を受けて米10年債利回りは約4年ぶりの水準となる2.85%前後まで上昇。ドル/円はこれにつれて110円台を回復した。
一方、米国株は長期金利の上昇を嫌気する形で大きく下落。NYダウ平均は665ドル安となり、一日の下落幅としては史上6番目の大きさとなった。
今回の雇用統計は、米長期金利の低迷、ドルの下落、株価の上昇という昨年来の金融市場の流れを反転させるきっかけになったのかもしれない。今後の各金融市場の動きが注目される。
執筆者プロフィール : 神田 卓也(かんだ たくや)
株式会社外為どっとコム総合研究所 取締役調査部長。1991年9月、4年半の証券会社勤務を経て株式会社メイタン・トラディションに入社。為替(ドル/円スポットデスク)を皮切りに、資金(デポジット)、金利デリバティブ等、各種金融商品の国際取引仲介業務を担当。その後、2009年7月に外為どっとコム総合研究所の創業に参画し、為替相場・市場の調査に携わる。2011年12月より現職。現在、個人FX投資家に向けた為替情報の配信(デイリーレポート『外為トゥデイ』など)を主業務とする傍ら、相場動向などについて、WEB・新聞・雑誌・テレビ等にコメントを発信。Twitterアカウント:@kandaTakuya