下痢気味だと思っていたら血便が出た――。そんな経験はないだろうか。血便が出ると「何か病気が潜んでいるのかも? 」と不安になるのも無理はない。一方で下痢になったり血便が出たりしても、特に何とも思わずやり過ごしてしまう人もいるかもしれないが、それは危険。下痢や血便には、実は重大な病気が潜んでいる可能性もあるからだ。
下痢が起こる原因は
まず、下痢は何が原因で起こるのかを明らかにしておこう。
感染性の下痢
最も多いのが、食中毒菌に感染することで下痢が起こるケース。簡単に言えば食あたりで、風邪による下痢も感染性の下痢に分類される。風邪ウイルスが呼吸器に感染すれば咳や鼻水などの症状が出るが、消化管に感染すると下痢や腹部の症状が起きる。
例えばB型インフルエンザは、呼吸器症状よりも下痢や嘔吐などの消化器症状を発症しやすいと言われている。強い伝染性を持って、集団発生するようなノロウィルスや腸管出血性大腸菌、コレラなどの感染症は別にして、単発的に不適切な食品の保存で食中毒を起こす下痢は、ビブリオやサルモネラ菌、ウェルシュ菌感染などが主な原因である。
ストレス性の下痢
仕事や人間関係などでストレスがたまることで、ストレス性の下痢が起きることがある。
食事性の下痢
フランス料理や焼き肉など、脂っこい食事が原因で下痢になるケースもある。膵臓の脂肪分解能力や腸管からの吸収がもともと弱い人や、高齢になって弱くなった人などは特に食事性の下痢が起こりやすいとされている。
下痢と一緒に嘔吐や胃痛の症状が出る
感染性の下痢の場合、腸管に感染している菌を洗い流すために下痢によって生体を防衛する。この際、腸管がいつも以上に激しく運動しているため、その激しい運動に伴い胃痛や嘔吐などの症状も出現する。つまり、下痢と一緒に嘔吐や胃痛・腹痛が発生した場合は、感染性の下痢の随伴症状と考えてもいいだろう。
下痢に伴う血便で疑われる疾患
続いて、血便が出る原因を探っていこう。
感染
ビブリオやサルモネラ菌などに感染して感染性の下痢が起こった場合、腸管が激しく動くことで粘膜の損傷や炎症が起こり、それに伴い血便が出る可能性がある。
大腸がん・大腸ポリープ
大腸がんや大腸ポリープによって腸管の粘膜に腫瘍ができると、腫瘍からの持続的な出血や便が通過する際に腫瘍から出血を伴い、血便になるケースがある。大腸がんや大腸ポリープによる血便はあまり下痢を伴わないことが多い。
痔
痔も血便を招く原因の一つ。便に血が混ざっていれば血便、便の表面に血液が付着していれば痔に伴った血便と判断しよう。排便時に肛門付近が痛いときは肛門に傷がついている場合が多い。一方で痔核などは自覚症状に乏しく、痔核から出血に伴う血便で気づく患者も少なくないという。
こんな血便は特に危険
●黒い血便
ストレスなどが原因で胃や十二指腸に潰瘍ができると、その潰瘍からの出血が便に混ざり、真っ黒な「タール便(黒色便)」が出るケースがある。黒い血便は胃潰瘍や十二指腸潰瘍、特に胃がんなどが潜んでいる可能性があるので要注意。食中毒や食あたりによって黒い便が出ることはないため、もしも出たらこれらの病を疑ってみてもいいかもしれない。
●粘液に混ざって血便が出る
血便に粘液が混ざっていた場合は、潰瘍性大腸炎やクローン病などの炎症性腸疾患の可能性がある。頻回の下痢と腹痛、血便、そして便に粘液や膿が混ざるという独特の症状を示す。この潰瘍性大腸炎やクローン病は国の難病にも指定されている。
潰瘍性大腸炎は元来欧米人に多く見られていたが、近年は日本人の発症率が急激に増えている。穀類を中心とした従来の日本人の食生活が、近年は肉食を中心とした欧米型食生活へと変化していることが増加の理由と指摘されている。いざ発症した場合、日本人の方が重症化しやすいとも言われており、大腸がんにつながるケースもあるので注意したい。
●大量の出血を伴う血便
大量の消化管出血を伴うと、貧血になってしまうことがある。特に胃潰瘍や十二指腸潰瘍で大出血があり、下血とともに大量吐血を伴って生命の危機に至る危険性もある。
子どもの血便への対応は?
成人同様、子どもでも感染性の下痢によって血便を伴うことがある。O157感染症が代表例で、感染性疾患を伴う場合は急速に症状が重症化するケースが多い。また、便秘しやすい子どもが肛門裂傷を起こして血便になることもある。もしも血便を認めたら、医療機関へ行く前に体温を測り、医師が状況を把握できるよう、便をビニール袋に入れて持参すると状況が判断しやすい。
また、子どもの場合は脱水が進行しやすいため、下痢が起きたらきちんと水分を補給させるように。この際、水だけだと電解質バランスを崩してしまい、かえって脱水を助長してしまうので、スポーツドリンクや麦茶のようにナトリウムやカリウムが含まれている飲料がお勧めだ。
下痢の予防・治療法を学ぶ
日常的に便通を整える食物繊維や腸内環境を整えるヨーグルト、乳製品、キムチなどの発酵食品を積極的に摂取すると下痢の予防につながる。
ストレス性の下痢の場合、ストレスをためずに発散することが第一。心のストレスは消化器に直結するので、趣味や息抜きの時間を作り心をリラックスさせよう。
食事性の下痢は、普段の食事から注意したい。過脂肪食を避け、必要に応じて消化促進薬などを服用することも考えるといいだろう。
下痢が起こったときの治療法は
治療をするとなったら、医療機関を受診しての原因解明が第一となる。大きな病気や伝染病でない場合は、基本的には自宅で治療することになる。一般的には絶食して消化器を休ませ、下痢による腸内の洗浄効果を期待して便を出しきるようにしよう。
この際、脱水症状に陥らないようにしっかり水分補給して、症状が落ち着いてきたら消化のよいものから食べ始める。しばらくは消化器に負担の少ない食生活を心がけるようにしよう。
また、頻回の下痢は排便時の肛門への機械的刺激、腸液の曝露などで肛門周囲の皮膚がかぶれて痔や肛門周囲炎を誘発する可能性もある。こまめに洗浄するなどして肛門周辺を清潔に保ち、皮膚炎の薬を塗布することも重要となる。
受診をするとなったら、大人は消化器内科や消化器外科など消化器を標榜しているクリニックを、子どもは小児科を受診するのが最も安心。特に大量の出血を伴う血便は大きな病気が潜む可能性がより高くなるので、すぐに受診するようにしよう。