5月13日からは成田=ヘルシンキ線をダブルデイリーにし、4つの空港で展開する日本=ヘルシンキ線を欧州線最大規模となる週31便(JALとのコードシェアを含めると週38便)で運航するフィンエアー。2017年に最新機材であるエアバスA350を成田・関西線へ導入したことに続き、2月7日からは日本人シェフによる初のシグニチャー・メニューを成田=ヘルシンキ線で展開する。
四季折々の旬を感じられる心地よい体験
フィンエアーは2013年より、長距離路線ビジネスクラスのカスタマーエクスペリエンス向上の一環として、世界各国のトップシェフたちと共同で開発したシグネチャー・メニューを提供している。この2月7日からは、日本人シェフとの初めてのコラボレーションで、旬の野菜と乾物を主役とした和食店「七草(ななくさ)」(東京都渋谷区)のシェフである前沢リカ氏が監修した和食のシグネチャー・メニューを展開する。なお、同じ7日から中国路線と香港路線でも、新しいシグニチャーシェフとのメニューを開始する。
数ある日本の飲食店の中で前沢氏を起用した理由として、フィンエアーのインフライトサービス部門主任のマーリット・ケラネン氏は、「初めて前沢さんにお会いした時、すぐにピンときました。ある意味、運命的な出会いだとも感じました」と話す。前沢氏の地元の素材にこだわり四季折々の旬を大切にする精神は、自然を大切にするフィンランドの精神にも通じるものがあると感じたそうだ。
日本のシグネチャー・メニューのプロジェクトは2017年秋から始まり、フィンエアーの担当者も実際に七草に訪れたほか、機内食の調理を担当するシェフとのワークショップも実施しながら、今回のメニューを決定した。前沢氏が七草以外の場でメニューをプロデュースするのは初めての試みであり、機内という限られた空間で提供し味わってもらうために、どうすれば一番心地いい体験につながるかを最後までこだわったという。
前沢氏の料理は、家庭料理をルーツに野菜や乾物を中心としたもので、日本の四季折々の旬が表現されている。「料理は、おいしく味わっていただくこと、旬を味わっていただくことを第一にしていますが、もうひとつ、いかに居心地のいい空間を提供できるか、ということも大切です。9時間30分という飛行時間の中で、『またフィンエアーに乗りたい』『また旅行がしたい』と思える、記憶に残る料理を提供できればと思い考案しました」と前沢氏は言う。
イメージしたのは「お花見弁当」
フィンエアーの機内食は3~4カ月ごとに変わる。前沢氏とのコラボレーションは2~5月に提供するメニューを皮切りに、まずは1年間、四季の移ろいを感じられるメニューを展開する。初めてのメニューは、前菜に「春の七草花織り箱」を、メインに「牛ヒレ肉の八丁味噌とバルサミコソース添え 蕗の薹(ふきのとう)のタプナードとともに」「松の実ご飯 黄身そぼろ」を考案。メニューはその後、デザートへと続く(前沢氏とのコラボは前菜とメインのみ)。
和食に機内食では漆塗りの箱を使うことが多い中、前菜の箱にあえて木箱を使ったのは、森と湖の国・フィンランドをイメージしてのこと。その蓋を開ければ、日本の風景を伝えられるようなストーリー性のある料理がぎっしり詰まっている。春から連想される「お花見弁当」がコンセプトで、機内で提供し味わうことを考え、ダシを閉じ込めたしっかりと味が立つメニューを意識したという。
野菜や乾物を大切にした前沢氏の料理の心は、干し柿白和えや鯛子含ませ 干し椎茸煮などにも込められている。ふっくらと甘い卵焼き、食感の面白さもある生麩の百合根饅頭揚げ、季節を知らせる菜の花、断面も美しいスナップエンドウとカリフラワーの寒天寄せなど、一つひとつを目で舌で味わえる。
メインのダブルソースにもこだわりあり
メインの「牛ヒレ肉の八丁味噌とバルサミコソース添え 蕗の薹(ふきのとう)のタプナードとともに」は、海外の人にも春の代名詞ともいえる蕗の薹を楽しんでもらいたい、という想いからつくられた一品。また、スパイスやハーブを使うことで、前沢氏は和の野菜と洋の野菜の融合も意識したという。
ただし、蕗の薹の独特の苦味が受け付けられないのために、蕗の薹のソースとともに、八丁味噌とバルサミコソースを添えたダブルソースにした。八丁味噌とバルサミコソースのコクと酸味、蕗の薹の苦味は、それぞれのソース量を調整しながら、自分にとって一番好みの味を楽しんでみるといいだろう。
フィンエアーのビジネスクラスの機内食は、和食・洋食のいずれかを選ぶことができる。初のシグネチャー・メニューは成田=ヘルシンキ線から展開し、乗客の反応も見ながら今後、関西や名古屋路線での展開も検討していくという。日本人にとっても前沢氏のシグネチャー・メニューは、日本の食の深みを改めて知る体験となるだろう。6月以降はどんな夏メニューが登場するのか、想像するのもまた楽しそうだ。