ネットの役割が増大していく中で、データセンターの重要性が高まっている。データセンターとは読んで字のごとしで、大量のサーバーを集約し、ネットサービスの運用・保守、クラウドなどを提供する拠点だ。
このデータセンターの領域で、少しおもしろい動きがあった。2018年1月下旬、最新設備を整えた大規模データセンターが、新潟県長岡市で稼働し始めたからだ。「新潟・長岡データセンター」と名付けられたこの施設は、1ラックあたりの最大供給電力30kVA、床耐荷重3トンという性能を誇る。一般的にサーバーの性能が上がれば給電能力が求められるし、高性能のサーバーラックであればあるほど重い。そうした傾向に対応できるだけのデータセンターということになる。
つまり、AIやディープラーニング、ブロックチェーン、4K・8K映像といったように、高い処理能力が必要とされるサービスを見越したデータセンターなのだ。だが、データセンターのパフォーマンスについてはここまでにしておこう。このデータセンターのおもしろみは、ほかにあるからだ。
なぜ、新潟県長岡市に建設されたのか
まず、なぜ新潟県長岡市なのかということ。多くのデータセンターは首都圏や関西圏といった都市部に近いところに建設されることが多い。ところが新潟県長岡市は、決して都市部に近いわけではない。
その狙いのひとつが、地方創世にある。地方創世といえば、政府も主導する大きな目的だ。その一助になろうという意図が見え隠れする。とはいえ、データセンターはデータが集約するところ。製造業の工場のように大量の雇用が生じるわけではない。担当者によると、30人ぐらいの人員でまかなえるそうだ。現在、データセンターは1棟だけだが、2棟目も建設予定。両方そろえば60~70人の雇用が生まれるそうだ。
「たいした雇用人数ではない」というのが正直な感想だが、データセンターに勤めて得られた知見は今後のIT社会で強みになる。そうした人物が長岡市周辺で活動していれば、自然とITに興味を持つ人が増え、ITを軸にした地域活性が進む。長い年月が必要となるが、決して無駄ではないと思う。
たとえば同じ新潟県の三条市。IT普及と単純に比べられるわけではないが、三条市は鍛冶職が盛んだったため、鉄製品の産地として知られている。現在ではスノーピークやキャプテンスタッグ、モチヅキといったアウトドア用品メーカーの集積地として、その存在感はゆるぎない。