富士通は1月31日、携帯端末事業の再編に伴い、ポラリス・キャピタル・グループへ3月末を目処に株式譲渡を行うと発表した。富士通は2016年2月に携帯端末事業を100%子会社の富士通コネクテッドテクノロジーズ(FCNT)に分割。富士通周辺機で携帯端末を製造する工場と合わせて譲渡する。
FCNTは持株比率を30%まで落とし、富士通周辺機の工場についてはジャパン・イーエム・ソリューションズ(JEMS)を新たに立ち上げて事業を移管し、持株比率を19%にする。なお、JEMSはFCNTの携帯端末製造を継続して行うだけでなく、ODM・EMSビジネスの拡充を図り、新規事業開発を目指す。
同日行われた決算説明会で富士通 代表取締役副社長 CFOの塚野 英博氏は「経営方針説明会で『会社の形を変える』としていたが、その結果として今年度中に取り決めたい。ブランドや商標を維持するという考えから、(株式は)継続して持つことにした。ただ、今回の譲渡によって投資資金を得たし、先々はIPOを目指したい」と語った。
ネットワークが通期見通しを下方修正
富士通はもう一つのコンシューマー製品群であるPC事業も、2017年11月にレノボと戦略提携の名のもとに出資比率を44%まで引き下げた。PCとスマートフォンのコモディティ化が進む中で、国内需要しか取り込めない事業規模では部材調達などでグローバルリーダーにコスト面で引けを取り、事業継続が難しくなっているためだ。
同日の第3四半期で富士通は、連結業績の通期予想こそ売上高が4兆1000億円、営業利益が1850億円に据え置いた。ただ、携帯基地局などのネットワークプロダクトでは、売上高が10月予想から250億円減となる2250億円、営業利益も同150億円減の330億円にとどまった。第2四半期から「第4四半期の動向による」と先行き不透明な状況を匂わしていたが、その不安が的中した形だ。
ネットワークプロダクトは、国内外でEricssonとHuawei、Samsungの「三強体制になっており、我々はその他。ただし、散々言われてきた情報と通信の融合はまだこれから。5G世代になってようやく現実のものになる」(塚野氏)と話すように、これからも挽回の余地があると指摘。ハードウェアとサービスを融合できる数少ないITプロバイダーとして、その立ち位置を活かすためのネットワークプロダクトであり、携帯端末事業とは切り離して考えるようだ。
国内では2020年のオリンピックイヤーに携帯キャリア各社が5Gをスタートする見込みだが、5Gは4Gで構築したモバイルネットワークをベースに、当初は三大都市圏を中心に基地局が整備されるものとみられる。そのため、「過度な期待はせず、2020に『大きく挽回できる』という期待をしてはダメ。デジタルビジネス領域と同じく、やり方を変えて、アライアンスや手段、ハードありきの考え方ではない、ネットワーク事業の再編を考えていきたい」と塚野氏は話す。
オリンピック後も市場環境は堅調との読みも……
オリンピックイヤーの2020年からその後に控える大阪万博、カジノなどの統合IRなど、ITの大規模投資が期待されることを踏まえ、富士通の事業環境は「(ITへの企業姿勢は)コストではなく投資というマインドセットの変化もあり堅調」(塚野氏)という。
ただし中核となるテクノロジーソリューションのサービスセグメントは、為替の想定レートよりも円安に振れたことで売上高が400億円増の2兆6100億円という上方修正こそ出来たが、営業利益は150億円マイナスの1870億円と伸び悩む。法的紛争案件と、過去の不採算プロジェクトの精算による一時的損失という減額理由だが、今期の決算説明会のたびに説明してきた「ビジネスモデル変革による効果の進展が遅れている」という文言が今回も刻まれた。
「(デジタルビジネス領域は)エマージング・マーケットと異なり、成長率こそ高くて3%程度だが、売上自体は伸長しており、ベースラインでは難を感じていない」と塚野氏は話すが、選択と集中を一通り終えた来年度は、富士通にとって大きな試金石となりそうだ。