プロ野球の日本シリーズが終わると、間もなくメディアから聞こえてくる「年俸」という言葉。キャスターは「ねんぽう」と読んでいるでしょうか? それとも「ねんぼう」? そこで本稿では、「年俸」という言葉の正しい読み方と使い方についてご紹介いたします。
■「年俸」の正しい読み方
「年俸」の正しい読み方は「ねんぽう」です。「ねんぼう」と読むことはありません。発音の法則からすると、「は・ひ・ふ・へ・ほ」の前が「ん」の時は、「ぱ・ぴ・ぷ・ぺ・ぽ」となるのが一般的なようです。他に、「憲法(けんぽう)」「漢方(かんぽう)」「分配(ぶんぱい)」「金粉(きんぷん)」「身辺(しんぺん)」などがこれに当てはまります。つまり、そもそも「ねんぼう」という言葉は存在しないのです。
■「年俸」と「年棒」
「ねんぼう」とパソコンに入力すると「年棒」と変換されますが、よく見て下さい、木へんの「棒」です。「ねんぼう」と打てば「年棒」と変換され、その文字が「年俸」とそっくりなことから、同じ熟語だと錯覚したり、勘違いしてしまう人が多いのだと思います。試しに、インターネットで「年棒はいくら」と検索してみると、間違った字のまま掲載されているものが多数見受けられます。個人的なブログ等ならまだしも、ニュース記事などでも間違っていることがあります。記事の中で「年俸」と「年棒」が入り混じっていても、気付かない人が多いのです。きっと書き手だけではなく、読み手もまた、気づかないことが多いのでしょう。
■「年俸」の意味
これだけ「年棒」が多用されてしまう一因として、「俸」という漢字が持つ本来の意味を理解している人が少ないからだと、筆者は考えます。「俸」とは給料のことです。木などで出来ている「棒」とは全く違います。「年俸」という言葉の意味は、予め一年間でいくらと決められた給料ということになります。言わば、一年分の働きに対する「期待料」です。ちなみに「年収」は、一年間に入るお金の合計、つまり働いた「結果」です。会社の業績や残業代などで変動するため、終わってみなければわかりません。
発音からしても、漢字の意味からしても、「年棒(ねんぼう)」という言葉が存在しないものだとご理解いただけたでしょうか。日本語には、知らぬ間に間違ってしまっている言葉がまだまだありそうです。パソコンの変換に頼り過ぎるのはいかがなものか、筆者も考えさせられたテーマでした。
■「年俸」の例文、正しい使い方は?
•「メジャーリーガーの年俸は桁違いだ」
•「年俸5,000万円でサインした」
一般的に聞き慣れている「年俸」と言えば、やはりプロスポーツ選手の年俸でしょう。「年俸」は、個人と企業との間で交わされる契約において、一年間の給料そのものを指しています。
•「来期から年俸制を導入する」
こちらは「年俸制」を用いた例文で、一年単位で給与を決定する「給与形態」のことを指します。最近では、スポーツ界に限らず、一般企業でも「年俸制」を採用する企業が増えているとか……。いつ自分の会社が年俸制になってもいいように、期待に応えられるだけの十分なスキルを身に付けておきたいものです。