京王電鉄は24日に実施した記者発表会で、有料の座席指定列車「京王ライナー」の概要を発表した。「京王ライナー」は平日・土休日夜間の最速種別として、ダイヤ改正を行う2月22日から新宿発橋本行・新宿発京王八王子行の2系統で運行開始する。

  • 記者発表会に京王電鉄キャラクター「けい太くん」も登場。2月22日の「京王ライナー」運行開始とダイヤ改正をPRした

記者発表会では、京王電鉄代表取締役社長の紅村康氏らが登壇。紅村氏は座席指定列車の導入背景について「当社でも長年、有料特急の導入について議論が続けられてきました」「通勤列車における着席ニーズが高まり、鉄道車両の座席設計においてロングシート・クロスシート転換機能を備えられるようになるなど、座席指定列車の導入に向けて機は熟したと考えています」と説明。利用者の要望に応えてサービス向上を図るとともに、「鉄道事業の収益力向上にもつなげたい」と述べた。

停車駅は新宿駅から20km以上が基準に

新型車両5000系を使用する座席指定列車の愛称は、昨年4~5月に行われた愛称投票で最多得票となった「京王ライナー」(総数約2万4,000票、「京王ライナー」は約6,300票を獲得)に決定。ロゴデザインも公開され、シンボルマークは「京王ライナー」の頭文字「K」「L」を組み合わせ、5000系の丸みを帯びた形状や車体前面の黒、外板のシルバーとそこに映える京王レッドのカラーリングなどを表現したデザインとなる。「KEIO LINER」のロゴタイプはスピード感と柔らかさをあわせ持つ書体で表現した。

「京王ライナー」は新宿発京王八王子行・新宿発橋本行ともに平日20時台・土休日17時台以降に5本ずつ、それぞれ1時間おきに運転。発表会では平日に深夜0時台まで「京王ライナー」の設定があること、新宿駅から京王多摩センター駅まで最速24分、京王八王子駅まで最速35分であることなどが強調されていた。新宿駅では京王線2番線ホームに停車し、1両4カ所ある扉のうち、両端の2カ所が開扉する。

新宿駅を発車した「京王ライナー」の最初の停車駅に関して、「長距離利用のお客様の着席ニーズと目的地への速達性向上に応えるため、京王八王子行は府中駅、橋本行は京王永山駅としました」と紅村氏。現行の特急停車駅を基本としつつ、新宿~京王八王子間・新宿~橋本間ともに営業キロが約40kmであることから、その半分となる20km以上を基準に選定したとの説明もあった。新宿駅から約15kmの調布駅は通過となる。

  • 座席指定列車の導入背景や「京王ライナー」の運行概要について説明

  • 「京王ライナー」の座席指定券の購入方法や車内設備の紹介も

乗車する際、乗車券とは別に座席指定券の事前購入が必要。新宿駅に設置される専用券売機で乗車日当日に購入できるほか、専用ウェブサイト「京王チケットレスサービス」でも購入可能で、京王パスポートクレジット会員向けの特典もあるという。

座席指定料金は一律400円。府中駅・京王永山駅以降の駅から乗車する場合、座席指定料金は不要となる。座席指定料金は同様のサービスを提供する他社の料金も参考に、割高感が出ないように考慮した上で設定したとのこと。「乗車区間の定期券をお持ちの場合、座席指定券の購入のみでご利用いただけます。勤務先・外出先からお帰りの際、ぜひ多くのお客様にご利用いただきたいと思います」と紅村氏は話していた。

JR中央線・小田急線より1カ月早くダイヤ改正実施へ

「京王ライナー」を含むダイヤ改正のポイントについては京王電鉄専務取締役 鉄道事業本部長の高橋泰三氏が説明。「京王ライナーは増発であり、通常列車の運行本数は現行のまま維持します」と述べた。「初めての座席指定列車の導入で混乱がないように」と考え、今回は夜間の下りのみの導入となったが、「状況を見極めた上で、朝の時間帯なら(座席指定列車の導入は)可能だと思いますので今後検討したい」という。

質疑応答では、「京王ライナー」の導入で見込まれる効果や、小田急線との競合に関する質問も。紅村氏は「京王ライナーは10本すべて増発で、その分の増収が見込めると思います。平日は高い稼働率が期待でき、土休日も期待をもって収支に織り込みたいと考えています」「当社も多摩センター方面の利便性を高めるダイヤ改正を実施しますが、これは他社との対抗というより、我々にとって一番の課題が多摩ニュータウンの活性化であるということ。(京王・小田急)それぞれ利便性向上のダイヤ改正を行うことで、結果としてお客様が増え、活性化に寄与するものと考えています」と答えた。

紅村氏は「京王ライナー」を導入する背景のひとつとして「今後、当社の地盤である東京都の人口が減少すると予測され、お客様の年代構成が変わり、事業環境も大きく変化しています」と説明しており、現在の多摩ニュータウンについても「同じ時期に入居され、同じように高齢化された方が多いという現状があります」と話す。「多摩市と相談する中でも、空家などが増えているとのことなので有効活用を考えたい。いわゆる『買い物難民』も増えており、移動販売車の増車などにも取り組んでいます。通勤の利便性向上も含め、今後さまざまな施策を打っていきたい」とのことだった。

ダイヤ改正日と「京王ライナー」運行開始日は2月22日とされており、JR中央線・小田急線のダイヤ改正より約1カ月早い実施となる。これに関して、高橋氏は以前から春のダイヤ改正を2月頃に行っており、今回もこれにもとづき実施すると説明した上で、「単独でダイヤ改正を行うことで注目度を上げたいとの思いもありますし、2月22日で覚えやすい日ということもあり、今回はこの日に設定しました」とコメントした。

  • 新型車両5000系の座席(模型)も会場に。後方にあるレバーを引くと座席が回転する

「京王ライナー」に使用する新型車両5000系は2017年9月から通常列車で運行開始している。「いままでの京王の車両とは異なるシャープなイメージで、ロングシート・クロスシート転換座席や電源コンセント、公衆無線LANなど、さまざまな設備を盛り込んだ斬新な車両として評価をいただいています。通常はロングシートで通勤通学やお出かけなどに利用できる車両とし、夕方以降は京王ライナーで使用することにしたいと考えています」と高橋氏。紅村氏も「駅で見かけた方、ご乗車になった方から『いつから座席指定列車として走るのか』との問い合わせをいただいております」と話した。

高橋氏によれば、新型車両5000系は年末までに5編成すべてそろったという。現在はロングシートでの運行だが、「京王ライナー」の運行時はクロスシートとなり、電源コンセントも使用可能となる。車内照明は落ち着いた暖色系に。新宿駅停車中、音楽監督・指揮者の和田一樹氏が作曲したオリジナルBGMを車内で流すとのことだった。