米国で開幕された世界最大級の家電見本市「CES 2018」。これに合わせて小さな出展ブースを集めたイベントが複数回開催されるのが恒例だが、今回もそうしたイベントの中に出展されていたものから、いくつかピックアップして紹介したい。

DeXやContinuumを使ってスマホをノートPCに

フランス発のベンチャー企業であるMiraxessが開発するのが「Mirabook」。13.3型ディスプレイとキーボードを備えた一般的な見た目のノートPCだが、CPUなどのPCとしての心臓部がなく、スマートフォンを接続してPCとして利用するというもの。

  • Mirabook

    Mirabook。表示されているのはGalaxyの画面

以前から同様の思想で開発された製品は多いが、成功例はないと言っていいだろう。Mirabookは2017年のCESでプロトタイプを出展していたが、当時はWindows 10 MobileのContinuumを想定していたようだ。

  • パームレストに接続用ケーブルが内蔵

    パームレストに接続用ケーブルが内蔵されている

  • 青いパーツは交換可能

    ちなみにこの青いパーツは交換可能

2017年になってSamsungがGalaxy S8でDeX Stationを発表。専用のクレードルにディスプレイを接続しておき、端末を置くとPCのようなUIで利用できるようになった。

  • 本体を閉じたところ

    本体を閉じたところ

  • 底部

    底部

これと同様の機能を実現するのがMirabookだ。キーボード側にUSBケーブルを内蔵しており、それを対応端末に接続すると、USB Type-Cの機能を利用してDeXと同様にPCライクなUIでディスプレイに画面を表示する。

  • 横から見るとノートPC然

    横から見るとノートPC然としている

  • いまどきのノートPCとしてはちょっと厚めかも

    USBポートのサイズを見るといまどきのモバイルノートとしてはちょっと厚めかもしれない

対応するのはDeXが利用できるGalaxy S8、Galaxy Note8に加え、同じような機能が使えるHUAWEI Mate 10も対応する。この辺りは機能が共通しているため、「USB Type-C経由でディスプレイにPCライクなUIで出力できる」機能があるスマートフォンであれば、同様に対応するだろう。また、Windows 10 MobileのContinuumにも対応する。

スマートフォンをUSB Type-Cケーブル経由で接続すれば、大画面ノートPCとして活用できる。NUCのような小型PCを接続しても出力できるようなので、さまざまな使い方ができそうだ。

もともとクラウドファンディングで出資を募っており、すでに目標額を超えて成立したことから製造を開始するタイミング。価格はプリオーダーで249ドル。13.3型フルHDディスプレイで重さは1.3kgとやや重めなので、要望したところ、薄型軽量化した次期モデルも検討するそうだ。

キーボード付きスマートフォン「GEMINI」

同じようにクラウドファンディングで話題になったのがキーボード付きスマートフォン「GEMINI」。過去に何度も登場しては消えていった製品だが、Androidも進化してキーボード操作もこなれてきているので、使い勝手はだいぶ良くなっている。

  • GEMINI

    キーボード付きスマートフォン「GEMINI」

  • ディスプレイを閉じればスマートフォンサイズ

    ディスプレイを閉じればスマートフォンサイズ

開発をするのは英Planet Computers。1990年代に話題となった小型端末「Psion」風の外観で、キーボードを開くとノートPCのようにキーボード入力できる。強めのバネでキーボードが開くので、全体の作りはしっかりとしている。

  • 本体側面

    本体側面

  • ボディはメタリックな感じ

    ボディはメタリックな感じ

  • インタフェースはUSB Tyep-C

    インタフェースはUSB Type-C

  • 左右に1ポートずつ配置する

    左右に1ポートずつ配置する

キーボードタッチはやや独特で好みが分かれそうだが、サイズ感は打ちやすい。日本での発売も計画しており、日本語キーボードも用意するという。

  • 多少窮屈だが、十分タッチタイピングができる

    多少窮屈だが、十分タッチタイピングができるサイズ

  • Android 7.1.1を搭載

    Android 7.1.1を搭載

Wi-Fiモデルと4Gモデルの2種類を用意。VoLTEによる通話にも対応しており、閉じた状態で通話ができる。ただし、外側にディスプレイがないため、発信はキーボードを開いた状態で相手先を指定する必要がある。

ディスプレイは18:9の5.99インチで解像度は2,160×1,080ドット。画面タッチによる操作も可能だ。OSはAndroidとLinuxのデュアルブートで、プロセッサはMediaTek MT6797X Helio X27、メモリは4GB、ストレージは64GB。本体サイズは171.4×79.25×15.1mm、308g。

LINEも開発する音声翻訳完全ワイヤレスヘッドホン、発売間近

LINEの音声アシスタントClovaを利用できるワイヤレスヘッドホンを開発するのがNAVER。オーディオ関連技術のOrfeo SoundWorksと協力して、完全ワイヤレスヘッドホンと翻訳機能を融合させた「MARS」を出展していた。2017年11月にLINEが発表したものが製品化に近づいていることが示された形だ。

  • 完全ワイヤレスヘッドホン「MARS」

    LINEの完全ワイヤレスヘッドホン「MARS」

MARSは、完全ワイヤレスヘッドホンの片方を自分が、もう片方を会話相手が装着して会話をすると、その言語をNAVERの音声翻訳「Papago」で翻訳して、結果をスマートフォンに表示してくれるというもの。ヘッドホンのスイッチを押して話した内容をリアルタイムに翻訳してくれる。

  • 片方を自分がもう片方を相手が装着

    片方を自分がもう片方を相手が装着

現状の翻訳言語は日韓英を含む10カ国語だが、今後Google翻訳を活用して40カ国語に対応するという。

  • 交互にボタンを押してから話すことで翻訳が可能

    交互にボタンを押してから話すことで翻訳が可能。テストを見ていた限りは聞き取り、認識、翻訳精度のいずれも実用的に感じた

Clovaの音声アシスタントにも対応しており、音楽の再生やテキストの読み上げなどの操作を音声で行える。インナーマイク技術による高いノイズリダクション機能も備えるという。

音楽の連続再生時間は3時間、音声通話時間は1.5時間、充電時間は1時間。付属のクレードルにセットすれば4回分の充電が可能。今年第1四半期には韓国で発売される予定。

ソースネクストの翻訳機が米国デビュー

音声翻訳ツールといえば、ソースネクストの「POCKETALK(ポケトーク)」が米国発売を目指して出展。POCKETALKは、双方向の音声翻訳が可能な翻訳機で、話しかけるとディスプレイに音声認識結果を表示し、それをインターネット経由で翻訳して、結果を音声とディスプレイ表示で教えてくれる。

  • POCKETALK

    ソースネクストの音声翻訳機「POCKETALK」

  • 背面にSIMスロット

    背面にSIMスロット。ソラコムのSORACOM Air for セルラー」を採用しているため、国内外で通信が可能

50カ国語に対応し、ベースはGoogle翻訳を活用するが、複数の翻訳エンジンを組み合わせており、Google翻訳の使えない中国本土内ではバイドゥ翻訳を使うなど、状況によって最適な設定を自動的に判別するとのこと。

  • 本体底部にはUSB端子があり

    本体底部にはUSB端子があり、充電が可能

デバイスは小型で操作は分かりやすい。無線LANまたは携帯ネットワーク経由でインターネットから翻訳結果を取得するが、通信環境があまり良くないイベント会場内でも結果は高速に表示され、実用的なスピードだった。

国内ではすでに発売済みだが、製造の都合で初期予約分は完売しており、さらなる生産を行っているという。米国では5月の発売に向けて、CESの会場で反応をチェックしたい考えだ。

  • 話しかけると、聞き取った言葉を表示した後、翻訳結果が表示される

    話しかけると、聞き取った言葉を表示した後、翻訳結果が表示されるので、その都度確認しながら利用できる。結果はディスプレイ表示に加えて音声も流れる。ただし、一部の言語は表示のみ