子どもたちの食生活に、どれくらい気を遣っていますか? 気にはなるけれど、食事作りに思うようには時間をかけられないという人も多いかもしれません。
そんな中、子どもたちがとるべき食事と栄養などについて詳しく書かれた『成功する子は食べ物が9割』が発売され、反響を呼んでいます。「子どもの鉄欠乏が発育発達を妨げる」「身長を伸ばすなら"骨端線"がある思春期までに」など、気になる言葉が続々と出てくる本書。監修者の1人、管理栄養士の宇野薫さんに子どもたちの食生活の実態と、成功する子を育む食事について聞きました。
宇野薫
女子栄養大学卒。管理栄養士として予防医療に携わる。現在は女子栄養大学大学院にて母子健康の研究を行うかたわら、「ラブテリ トーキョー&ニューヨーク」での妊婦栄養研究や、妊娠・母子健康に関する最新データをもとに栄養カウンセリング教育活動を行っている。保育士養成課程での「子どもの食と栄養」担当。二児の母。
子どもの食におぼえた危機感
――この本を出版しようと思われたきっかけは何ですか?
5年前、東京都内の小学校で行った調査が大きなきっかけになっています。各ご家庭での食事を撮影してもらったのですが、その食事内容に衝撃を受けました。そもそも子どもたちが朝ごはんを食べない、パンとバナナだけ、菓子パンだけという食事をしている。野菜やたんぱく質の摂取量がとても少なかったのです。
もちろん共働きの家庭が増えて、食事作りに時間をかけることは難しくなっていますし、特に朝食は、なかなか子どもが食べてくれず苦労している方も多いでしょう。そのほかにも、知識や技術、お金が足りないといったさまざまなハードルがあるのが現状だと思います。
そんな中で食事について指導をすると「こんなのできない」と思わせてしまったり、罪悪感を抱かせてしまったりすることが多くあります。ですから、「簡単にできる」「今からでもできる」というメッセージを打ち出した本を作ろうとメンバーが集まり、出版に至りました。
脳神経は6歳までに約9割が完成する
――本書の中では「魚を食べない家庭の増加」についても言及されていましたね
3~12歳の子どもがいる母親244人を対象に調査を行ったところ、魚が食卓に並ぶ回数は42%が「週2~3回」、35%が「週1回」という結果になりました。魚料理を提供しても家族に喜ばれなかった経験のある人や、「生臭い」「食感が嫌」など、魚をおいしく食べられていないことなどが背景にあるようです。
しかし、魚の脂に多く含まれているDHA(ドコサヘキサエン酸)は、脳の神経細胞の主な成分となり、脳の働きを高めるという点で、とても大切な栄養素です。特に脳神経は6歳までにその約9割が完成するといわれていますので、DHAを多く含んだ魚は子どもたちにとってとても重要な食材になります。
さらに、魚は良質なたんぱく質の源で、カルシウムやマグネシウム、ビタミンD、DHA、EPAも多く含んでいるんですよ。
――とはいえ、ついつい食卓では子どもが好きなお肉を出してしまいがちです……
例えば、いつものハンバーグのタネにさば缶を加えてみるのも一つの手です。缶詰ならばストックしておけますし、手軽にDHAをチャージできます。本書には、栄養素の大切さを知ったときに、すぐにでも取りかかれる簡単なレシピをいくつかのせているので、参考になると思います。
塩分量には注意してほしいのですが、さば缶をはじめとして、はんぺん、ちくわ、かまぼこ、じゃこ、ツナなどの加工品を活用することから始めてみてもいいですね。
骨を強くできるのは思春期まで、栄養素はバランスよくとって
――他に、特に意識してとった方がいい栄養素はありますか?
特に欠かせない栄養素を一つだけ決めることはできません。例えば、骨を強くできるのは思春期までだと言われていますが、そのためにカルシウムだけとっていればいいというものではないのです。
骨を作るには、カルシウムのほかにも、たんぱく質、マグネシウム、ビタミンD、ビタミンKと複数の栄養素が必要になってきます。また十分な栄養に加えて、睡眠、運動、そして日光浴も大切な要素です。
時間と技術のハードル、どう乗り越える?
――栄養素をバランスよくとるのが大事なのは分かりましたが、調理過程でたくさんの食材を扱えるか不安です
家庭で調理しにくいものも、缶詰だと手軽にとることができます。特にツナ、ミックスビーンズ、トマトがオススメですよ。また、「何もない!」というときに大助かりなのが、乾物。おから粉、干椎茸、かつお節、ひじき、切り干し大根など、日持ちがして便利なので活用してみてください。
料理が苦手でも、大丈夫。本書の中では「栄養トッピング」と呼んでいるのですが、じゃこ、のり、鰹節、きな粉、粉チーズ、スキムミルクなどをサラダやスープ、パスタやうどんなどに足すだけでも、栄養の偏りを防ぐことができます。
――時間がない中ではどのような工夫ができるでしょうか?
私が実践している方法なのですが、まず、食材の買い物については宅配サービスを活用して時間を節約しています。宅配でまかなえない分は、1週間分の大体の献立を決めて、週末にまとめ買いをしておくと安心です。
また時間のあるときには、肉や魚を調味料に浸けて冷凍したり、野菜は皮むきやカット、下茹でなどをしてから冷蔵・冷凍保存したりして、平日の調理時間を短くする工夫をしています。さらに余裕があれば、餃子、シュウマイ、ハンバーグなどを作って冷凍しておくと、どうしてもごはんを作れない時に便利です。
――食事作りにもメリハリが必要なんですね
食事は365日、1日3回あるので、毎日がんばり過ぎると続かなくなってしまいますよね。食事作りに時間をかけすぎて、子どもと一緒に食べたり話したりする時間が取れなくなるのは本末転倒です。
一番重要なのは、食事作りを楽しむこと。まずはやってみて、子どもと一緒に食べて「おいしいね」と言ってもらえたら、きっと「よし、次もがんばろう!」と思えるはず。長続きさせるために、自分自身が楽しんで作れるように、自分なりのコツを見つけてみましょう。
※画像は全て『成功する子は食べ物が9割』より引用
『成功する子は食べ物が9割』(税別1,300円/細川モモ、宇野薫監修/主婦の友社)
ラーメン1杯完食で、塩分は1日分以上! 甘い炭酸飲料には角砂糖10個分の糖分!……今の子どもたちは「砂糖」「油脂」「塩分」をとりすぎです。子どもに何を食べさせたらいいのかわからない、献立を考える気力も時間もないママたちへ。「冷蔵庫の中身がカラダの中身」、食べた物が体を作ります。
「メニューがワンパターンになっている」「疲れたからと、惣菜や加工食品、外食に頼ってばかりいる」「子どものおやつにジュースやお菓子を与えている」「子どもの好きなもの、よく食べるものばかり作ってしまう」……1つでも当てはまることがあれば要注意! 知らないと20年先に後悔すること、将来に後悔しないための解決策がまるごとわかります。