Surface Pro Advanced LTE(以下、Surface LTE)は、通常のSIMカードスロットと共にeSIM(embed SIM)を備えている。筆者はIIJmioのデータSIMカードをSurface LTEに取り付けているため、日本国内から出ない限り、eSIMを使う機会はないと考えていた。
そんなところに飛び込んできたのが、CES開催で盛り上がったラスベガスではなく、タイ・バンコクへの海外出張。今回は現地でeSIMを使うまでの過程を紹介したい。
渡航にあたり、現地で使用するネットワーク対応機材はスマートフォン2台にPC1台。それぞれに現地用SIMカードを用意するのは経済的ではないと思い、タイで利用できるSIMカードを1枚購入し、後はテザリングやホテルのWi-Fiで済まそうと考えていた。
だが、よくよく考えればSurface LTEは、日本を含むアジア近辺で利用可能なeSIMを内蔵しているのである。ちょうどよい機会だと思い、早速試しようと機上で思いついたのだが、そもそも携帯データネットワーク通信プランを購入するためには、インターネット接続環境が必要だ。ホテルに到着してから続きを試すことにした。
ホテルで早速試したのだが、初っぱなから接続エラーの嵐である。そもそもホテルが用意したWi-Fiの電波も弱く、インターネットへの接続を確立できない。試した時間が悪かったのか、20~30分ほどすると、ようやく「モバイルプラン」に購入可能プランが提示された。
しかし、日本国内とは異なり、選択できるのは3,500円の「アジア500MB/15Days」のみ。今回の出張は2泊3日のため、700円の「日本国内500MB/1Days」と同じプランを購入できればと思っていたが、そうは問屋が卸さなかった。
だからと言って購入しないという選択を採用するわけにもいかないので、泣く泣くクレジットカードでプランを購入。後は接続するだけと思いきや、Surface LTE購入直後から悩まされた「APNを入力してください」だ。
TransatelのAPNはWeb上で開示していないため、手動設定では手に負えない。そこで思い出したのが、"複数プロファイルがある場合、接続までに時間を要する"という現象だ。改めてAPN設定を開き、「APNを添付する」から「既定のAPN」を選択することで、ようやく接続を確認した。
後はお約束ということでスピードテストを実施してみたが、下図をご覧になればお分かりのとおり、お世辞にも速いとは言えないレベルだ。それでもホテルのWi-Fiよりは速いので、大量データの送受信を伴わない仕事であれば使える。
なお、後から気付いたのだが、どうやら宿泊したホテル周辺は電波状態が悪いらしく、仕事で訪れたオフィスビルで確認したところ、HSPAではなくLTEで接続可能だった。
ひとまず接続およびスピードテストを終えて胸をなで下ろしつつも、通信可能データ容量の不足を強く感じる。前述のとおり、スマートフォン用にはAIS(タイではポピュラーな大手キャリア)2.5GB/1週間プランのSIMカードを購入した。
299バーツ(約1,000円)という価格を考えると、携帯データネットワーク通信プランの価格設定はかなり厳しい部類となる。これならSIMカードをデバイス分購入してから渡航した方が快適だったなと、ホテルで本稿を執筆しながら後悔した筆者だった。
あくまでも金銭的コストを考えると現時点では、携帯データネットワーク通信プランよりも渡航する国々のSIMカードを購入した方がお得である。現在のプラン構成と価格設定を踏まえると、携帯データネットワーク通信はアクセス環境がない場合の救済策であり、常用するものではない。
常時接続環境でワークスタイル変革を実現するAlways Connected PC構想は魅力的ながらも、コンシューマーユーザーにとって、いまのところeSIMを利用したネットワーク接続は、ハードルが高いサービスと言わざるを得ないだろう。改めてSurface LTEに一般消費者向けモデルを用意しない理由をかみしめる筆者だった。
阿久津良和(Cactus)