相模鉄道の新型車両20000系が2月11日から営業運転を開始する。デビューに先立ち、1月17日に発表会が行われることになった。20000系は相鉄において、11000系以来約9年ぶりの新型車両である。今年度は7000系の代替として1編成が導入される。

  • 相模鉄道の新型車両20000系。2月11日の営業運転開始を予定している

新型車両20000系は相鉄・東急直通線用の車両として導入される。相鉄・東急直通線は2022年度下期に開業予定で、羽沢横浜国大駅(相鉄・JR直通線に設置される新駅)と東急東横線・目黒線日吉駅を結ぶ連絡線を新設し、東急線と相互直通運転を行う。その際、相鉄のブランドイメージを確固たるものとして示す車両がこの20000系となる。

車体色に採用された濃紺色「YOKOHAMA NAVYBLUE(ヨコハマ・ネイビーブルー)」は、新しい相鉄線の象徴となるカラーだ。相鉄グループが進める「デザインブランドアッププロジェクト」によってイメージカラーとされ、すでに9000系リニューアル車両などにも採用されている。新型車両20000系はカラーもさることながら、外観デザインもインパクトが強い。相鉄・JR直通線の車両とともに、これまで東京都心へ直通していなかった相鉄の存在感を高める車両となるに違いない。

新型車両20000系、快適性を向上させる設備とは

新型車両20000系は東急線への直通運転を見据え、相鉄の従来の車両より車幅を狭くしながらも、快適性を重視する方針で開発された。コンセプトは「安全×安心×エレガント ~目先のトレンドに左右されない『醸成するデザイン』~」とされている。

快適性を向上させるために何をしたか。大きな特徴として「ユニバーサルデザインシート」を一部の優先席に導入したことが挙げられる。座席の高さを上げ、座り心地を損ねない範囲で座面を小さくした。また、座席下に大型の荷物を収納できるようにすることで、荷棚を使いにくいという人でも安全に利用できるようにしている。車いす・ベビーカー用のフリースペースも全車両に設置した。立ち客のための吊り革も、2016年度グッドデザイン賞を受賞した独自の設計としている。

  • 一部の優先席に立ち座りが容易な「ユニバーサルデザインシート」を導入(イメージ)

  • 新型車両20000系の車内はガラスを多用し、開放感のある空間に(イメージ)

車内環境にも配慮し、パナソニック「ナノイー」搭載の空気清浄機を導入。空調効果を高めるために個別ドアスイッチを設けた。停車時に乗客によるドア操作が可能となる。

座席端部の仕切り板は大型化され、日差しを遮る「ブラインド」も復活。かつての相鉄線利用者にはなじみの深かった「車内の鏡」も復活する。時間帯で変化する調光式のLED照明も採用。夜間には暖色系の照明でくつろぎを感じることもできる。

車内での情報提供も強化される。ドア横や通路の天井に大画面21.5インチの案内表示器が設置され、どこを走っているのか、あと何駅で目的地の駅に着くのかなどがわかりやすくなった。通路の天井には広告画面が設置される。通信環境も改善され、車内でWi-Fiを使うことも可能になる。

新しい車両が相鉄線を「選ばれる沿線」にする

新型車両20000系は日立製作所の笠戸事業所が製造し、昨年8月に山口県から相鉄線かしわ台駅構内の車両センターまでやって来た。この車両は新型素子(SiC素子)を採用したVVVFインバータ制御機と高効率電動機を併用し、室内灯などをLEDにして消費電力を低減している。主電動機を密閉し、車輪を防音タイプにして、騒音も減らしている。

  • 新型車両20000系の第1編成は昨年8月、日立製作所笠戸事業所(山口県)から相鉄線かしわ台駅構内の車両センターへ輸送された

この車両は前述の通り、相鉄グループの「デザインブランドアッププロジェクト」の一環で導入される車両である。「選ばれる沿線」をめざすために、クリエイティブディレクターの水野学氏、空間プロデューサーの洪恒夫氏に依頼し、駅舎や車両、制服などのデザインリニューアルを進めている。

相鉄・東急直通線用の新型車両20000系は、相鉄線の都心へのアクセス向上に貢献する車両となるはず。相鉄・JR直通線、相鉄・東急直通線の開業をきっかけに、相鉄線が都心への利用者からも「選ばれる沿線」になり、多くの人々が暮らすことになるかもしれない。そのための車両として、20000系が必要とされている。