2018年以降、ゲームAIはどのように進化していくとお考えでしょうか?
森川氏:2018年以降は、AIがゲームにもう一段階のパラダイムシフトを起こすと思います。サポート的な作業をしているAIが、実際にゲームを作れるようになったり、イベントをゼロから作れるようになったり、人を楽しませる会話ができるようになったりする、という日がやってくるでしょう。
ただし、ゲームの歴史を見る限り、市場が好調な時期は革新的な取り組みが行われないことも多く、従来通りのゲームがウケているうちは、「AIを根幹部分へ積極的に取り入れて、新しい体験を提供する」という次元までは至らないかもしれません。
かつてPlayStationを出したばかりのソニーは最後発で、任天堂やセガを追いかけるという立場でした。2番手3番手のポジションにいるときは、革新的なチャレンジを繰り返します。当時は、我々が「そこまでやっていいんですか」と思うほど、既存の枠組みにとらわれないゲームの制作に挑戦していましたね。
ソニーが成功を収めると、次は任天堂が停滞気味になりましたが、その少しあとに登場したのがニンテンドーDSです。これまでの任天堂ならば考えられない斬新なソフトなども登場しました。やはり、追いかけているときのほうが、人はおもしろいものを生み出せるのでしょう。逆にトップになると保守的になってしまいがちで、イノベーションは起こりづらくなってしまいます。
2017年はPlayStation4の大型タイトルやNintendo Switch(ニンテンドースイッチ)が登場したこともあり、ゲーム市場が少し元気を取り戻しました。そう考えると、パラダイムシフトが起きるのはもう少し先かもしれません。
2018年の抱負をお聞かせください。
森川氏:先ほども申しましたが、ゲームとAIそれぞれを理解している点は、我々のアドバンテージだと考えています。しかし、大手企業が人と環境を用意して、それなりの規模で追いかければ半年ほどで追いつかれてしまうでしょう。20年前とは異なり、今ではネット上にプログラムもミドルウェアもゴロゴロ落ちていますからね。
2018年はアドバンテージのあるうちに、「ゲームAIならモリカトロン」と思われるところまで走り切りたいと考えています。そのためにも、早く実績を積んでいきたいですね。また、ゲームAIのポテンシャルはとても高く、自分の中にもアイデアがたくさんあります。今はまだクライアントの相談を受けてから開発に取り掛かっていますが、ゲームAIを使ったアイデアを主体的にプレゼンしていきたいと考えています。