パナソニックがB2B事業への注力を加速させている。そうした中で、パナソニックの社内カンパニーであるAVCネットワークス社に加え、プロセスオートメーション事業部などが一体となった「コネクティッドソリューションズ社」が2017年4月に設立された。
同時に社長に就任したのが、ダイエー社長や日本マイクロソフト社長/会長を歴任した樋口 泰行氏だ。もともとパナソニック出身ということもあって古巣に凱旋した形だが、流通からIT企業まで、さまざまな企業を経験した樋口社長ならではの舵取りに注目が集まっている。
今回、B2B事業の強化を進めるパナソニックでも大きな役割を果たすと見込まれるコネクティッドソリューションズ社の現場で、何が変わり、何を目指すのか。同社 モノづくりイノベーション推進室 企画課 課長の一力 知一氏に、製造業としてのパナソニックが培ってきたノウハウを外販するというその取り組みの話を聞いた。
【特集】変わる、パナソニック。
2017年4月、前日本マイクロソフト会長の樋口泰行氏がパナソニックに舞い戻った。彼が担当するのはB2B領域のパナソニック コネクティッドソリューションズ。顧客の要望に合わせた製品づくりを得意としていた同社のB2B部隊だが、時代の変化から、もはや「ただの下請け」では生き残ることは出来ない。「どうやってビジネス転換を実現するかをしっかり考えないといけない」と話す樋口氏の覚悟、そして変わりゆくB2B部隊の今を追った。
第4世代のモノづくり、パナソニック流は「人中心」
製造業の世界では、ドイツが国策として推進する「インダストリー4.0」に代表される「第4世代のモノづくり」が世界中で動いている。パナソニックでも「第4世代のモノづくり」を意識し、モノづくりイノベーション推進室を3年ほど前に立ち上げた。
当時は「IoT」がバズワードとなりつつある時期だったが、「IoTと呼ばなかっただけでそれ以前からモノづくりにおける作業を計測し、データ化は行っていた」(一力氏)。ただし、作業員ごとの作業時間の比較をストップウォッチで計測したり、工場内の動線把握を◯歩といった単位で計測したりが中心で、多様な作業を長い時間分析することは難しかった。
これをセンサーデバイスに置き換えてデータ収集の簡素化・多様化・効率化を目指すのがIoTの姿だが、一力氏によればパナソニックが目指す「第4世代のモノづくり」には、単なるIoTとは異なるまた別の特徴があるという。それは、同社の経営理念でもある「人を中心に考える」だ。
人の作業によって付加価値が生まれる業務と、設備による自働化で効率化する業務を見極め、人と設備が共存する工場作りのためのIoT、そして第4世代のモノづくり。それがパナソニックらしさの一端、経営理念に基づいた考え方といえる。「人がどのように家電を使っても必要な効果(コト)を発揮(提供)できるようトコトン考える会社で、そうした家電のDNAがある」(一力氏)。
同社にはプロダクト解析センターがあり、「人が家電をどのように使うか」を研究している。例えば、「体勢によってどの程度身体負荷がかかるか」というデータをセンシングによって取得しており、高齢者に優しいトイレ作り、システムキッチンで女性や子供が調理器具を取りやすい棚作りなどに活かしている。
これを工場の現場に応用したのが一力氏らのチームだ。人にかかる負荷をセンシングする技術はもともと社内にある。これを活用すれば、荷物を持ち上げる時の作業員の負荷軽減、経過時間の短縮、あるいは時間を短縮しつつも、過大な負荷がかからないように時間をセーブするといったバランスの見極めまでが可能になる。
家電を使う"お客さま"に対してはセンシングしてその影響を一つひとつ切り出すのに、「現場の人に注目することがなかった」(一力氏)。これがIoTを以前から利用しつつも、炙り出せてこなかった工場の課題解決に繋がった。