路地に、所狭しと飲み屋が連なる夜の街――北千住を語る際、少なからずそのようなイメージを思い浮かべる人は多いのではないだろうか。しかし、実はここを訪れてみるべきは夜だけではない。散策や食べ歩きも楽しみたい街なのだ。今回は、昼間に歩きたくなる北千住を紹介しよう。
宿場町にロケ地、いろいろ楽しい北千住
北千住(東京都足立区)があるのは、東京都の東側、隅田川と荒川にぐるっと囲まれた地域だ。JR日暮里駅から8分、東京メトロ大手町駅からも15分程度と、アクセスもなかなかいい。
この北千住、いろいろな意味で盛りだくさんなところである。江戸時代の宿場町で、歴史ある建築や古くから続く銭湯も多い。『3年B組金八先生』でお馴染みの荒川の土手に登れば、青春ドラマな気分まで楽しめる。寺社ファンなら七福神の御朱印巡りも数時間でできてしまう。そして言うまでもなく、グルメはオシャレ系、レトロ系、居酒屋系のいずれも豊富だ。ただし、今回は食べ歩きグルメのみを紹介する。
ココも見どころ「千住 街の駅」
街のメインとなっている「宿場町通り」は旧日光街道にあり、かつては江戸から地方への最初の宿場町として栄えていた。『奥の細道』の松尾芭蕉が旅をスタートさせたのもここだ。一瞬戸惑うのは、名前に反して予想外に普通の商店街となっているところなのだが、このあたりは多くの建物が空襲で焼けてしまったというから大目に見よう。
この通りでまず訪れたいのが「千住 街の駅」だ。地味な響きだからといってサラッと通り過ぎてはいけない。ここは見どころのひとつであり、筆者としては、今回の街歩きで一番気に入った場所でもある。
街の駅に入ったら、内部をよくよく見回してもらいたい。「なぜここに?」と思うところに蛇口が付いていたり、壁に業務用の大型冷蔵庫がはめこまれていたりする。実は、ここは大正時代の建築で、以前は魚屋だったという。そして特に改修をすることなくそのまま使っているらしい。街の駅の案内人さんは「まだお皿がたくさん入っているんだよ」と、古い木棚を開けて見せてくれた。
そんなお茶目な街の駅でもらえるのは、無料の街歩きマップ、銭湯マップ、千寿七福神巡りマップなど。そのほか、お土産品も豊富に販売している。足立名物の小松菜や、芭蕉にちなんだものが多いらしい。今回は「芭蕉せんべい(小松菜入り)」(180円/2枚入り)をチョイスしたが、「芭蕉インソール」(3,500円)も高価ながらかなり気になるグッズだった。お金に余裕のある人は、このインソールを購入して果てしなく歩いてほしい。
レトロ建築、そして現代アート!?
北千住には、宿場町通りを中心に老舗や歴史的日本家屋が点在している。かと思えば、不意に現代アートも登場する。しかし、いずれもうまく調和している。ここには、新旧混合の独特な文化があるようだ。
歴史的建築として知られているのは、「横山家住宅」「千住絵馬屋・吉田家」「板垣家」「名倉医院」など。数ある銭湯も歴史的建築と言えるだろう。銭湯はともかく、そのほかは個人の家や医院なので、外観だけそっと拝見しよう。
なぜか、このあたりにはプチプライスな食べ歩きグルメがいろいろある。ここに長くいすぎると、ほかでは暮らせなくなりそうな昭和価格である。続いてはそんなグルメたちを紹介しよう。