米労働省が1月5日に発表した12月雇用統計の主な結果は、(1) 非農業部門雇用者数14.8万人増、(2) 失業率4.1%、(3) 平均時給26.63ドル(前月比0.3%増、前年比2.5%増)という内容であった。

(1) 12月の非農業部門雇用者数は前月比14.8万人増と市場予想の19.0万人増を下回った。小売業の減少などによって前月の25.2万人増から減速した。もっとも、よりトレンドに近いとされる3カ月平均は20.4万人増となり、2017年の最高水準を記録。夏場のハリケーン襲来などで一時鈍化した雇用の増加基調は、第4四半期に入り再び勢いを強めたと見られる。

(2) 12月の失業率は、4.1%となり市場予想と一致。2000年12月以来の低水準を3カ月続けて維持した。米連邦準備制度理事会(FRB)が完全雇用とみなす水準をすでに下回っている。ただ、労働参加率が62.7%と低水準にとどまった(労働人口が増えていない)点や、不完全雇用率(フルタイムを希望しながらパートタイムで働く労働者を含めた広義の失業率)が8.1%と2カ月連続で上昇した点はやや気がかりだ。

  • 米非農業部門雇用者数と失業率

(3) 12月の平均時給は26.63ドルで、前月の26.54ドル(26.55ドルから下方修正)から0.3%増加。前年比では2.5%増加しており、伸び率はいずれも予想どおりだった。ただし、前月分の下方修正を考慮に入れるとやや物足りない数字と言わざるを得ないだろう。少なくとも、市場にインフレ加速を意識させる内容ではなかった。

  • 米国平均自給

米12月雇用統計は、FRBの利上げペースに対する市場の見通しに、ほとんど影響を及ぼさなかった。米国の雇用情勢は改善が続いているが、賃金の伸びが緩やかである限り利上げも緩慢なペースでしか進まないという市場の見方に沿った雇用統計だったと言うべきかもしれない。いわば想定通りの雇用統計に、米ドルと米国債は控えめな反応しか示さなかったが、米国株は想定どおりの結果を好感して比較的大きく上昇した。

なお、市場は今月末の連邦公開市場委員会(FOMC)については、追加利上げの可能性をほぼゼロと見ている一方、3月のFOMCでは追加利上げに動く可能性を7割前後織り込んでいる。イエレンFRB議長が2月に退任し、3月からパウエル議長体制となっても、緩やかなペースで利上げを行う方針は変わらないとの安心感が市場に広がっているようだ。

執筆者プロフィール : 神田 卓也(かんだ たくや)

株式会社外為どっとコム総合研究所 取締役調査部長。1991年9月、4年半の証券会社勤務を経て株式会社メイタン・トラディションに入社。為替(ドル/円スポットデスク)を皮切りに、資金(デポジット)、金利デリバティブ等、各種金融商品の国際取引仲介業務を担当。その後、2009年7月に外為どっとコム総合研究所の創業に参画し、為替相場・市場の調査に携わる。2011年12月より現職。現在、個人FX投資家に向けた為替情報の配信(デイリーレポート『外為トゥデイ』など)を主業務とする傍ら、相場動向などについて、WEB・新聞・雑誌・テレビ等にコメントを発信。Twitterアカウント:@kandaTakuya