2018年のラスベガス……CES開幕前日、LGエレクトロニクスがプレスカンファレンスを開催。独自のAIプラットフォーム「LG ThinQ(シンキュー)」を、2018年に発売するスマートOS搭載テレビやホームアプライアンス家電に広く展開していくことを発表しました。
LGの有機ELテレビは、日本でも発売されています。2018年の新モデルでは、新開発の映像処理プロセッサー「α9」を搭載して、さらに画質を強化します。CESでは北米向けのラインナップとして、フラグシップの極薄モデル「W8」のほか、5つの有機ELテレビのシリーズが2018年モデルとして発表されました。サイズは88型から55型までバラエティに富んでいます。
α9プロセッサーの高度な処理能力によって、4段階のマルチプロセッシングで超解像処理を行い、4K映像を高精細に表示します。画面の表示内容を分析しながら、シャープネスをかけるべき部分と、テクスチャーをスムーズにすべき部分を自動判別。立体感にあふれた映像を再現します。カラーテーブルの見直しをかけて、2017年モデルに比べて約731%も色再現性の精度が向上するそうです。HDR(ハイ・ダイナミック・レンジ)映像を高精細に再現する技術は一般的なHDR10のほか、Dolby Vision、放送コンテンツ向けのHLGのほか、米テクニカラー社の高画質化技術をすべてサポートしています。
このほか液晶テレビも、独自の「NanoCell」テクノロジーを搭載した高密度なパネルにより、どの角度から画面をのぞき込んでも均一に正確な色再現を可能にしていた点を特徴としています。上位機には直下型LEDを配置して、高精度なバックライトコントロールにより自然なコントラスト感と深い黒再現を可能にします。北米モデルとして4K対応の「Super UHD TV」シリーズを発表。SK95/SK85/SK80という3つのラインで発売を予定しています。
また、今日のプレスカンファレンスでは登場しませんでしたが、LGでは8K(7,680×4,320画素)解像度の有機ELパネルを搭載する88型コンシューマー向けテレビの試作機を、CESで展示するようです。有機ELパネルはグループ会社のLGディスプレイが開発したもので、日本のテレビメーカーを含む他社製の有機ELテレビも多くこれを採用しています。88型でしかも8Kの有機ELパネルは初めて発表されたものです。日本国内にはいつごろ、どのような形で発売されることになるのか楽しみです。
LG独自のAIプラットフォーム「LG ThinQ」
テレビについては、2018年以降に発売するモデルに対して、LG独自のAIプラットフォーム「LG ThinQ」をベースにしたアシスタント機能を搭載することが大きく時間を割いて紹介されました。先に名前を挙げた有機ELテレビ、液晶テレビのラインナップを中心に搭載されることになりそうです。
プレスカンファレンスではデモも交えて、LG ThinQを搭載するスマートOSテレビで何ができるのかを見せてくれました。例えば、視聴中の動画配信サービスの作品に登場している俳優やサウンドトラックについてインターネットで調べたり、本編映像を見ながらオーバーレイ表示で野球の結果をチェックすることなどが可能になります。なお、スマートOSのインタフェースはLG独自の「webOS」になります。
視聴しているテレビ番組のチャンネル変更やピクチャーモードの変更はもちろん、電子番組表(EPG)と連動して、視聴中の番組が終了したら自動でテレビをオフにすることも可能です。デモンストレーションでは、リモコンの内蔵マイクに話しかけて音声入力による操作を行っていましたが、デモ映像ではテレビに向かって直接話しかける様子も。どうやらテレビそのものに、常時オンのマイクがビルトインされる可能性もありそうです。
Googleアシスタントとも連携
LGエレクトロニクスのスマートOSテレビは将来、Googleアシスタントもハイブリッドで内蔵することも発表されました。2018年に北米で発売するテレビには間に合わないようですが、例えばGoogleフォトやマップ、翻訳やニュース、ウェザーなどのサービスを、音声入力でコントロールしながらテレビでも使えるようになる予定です。
合わせて、LGはグーグルとのパートナーシップをさらに強化していくことも発表しました。連携は今後スマートOSテレビだけでなく、LGブランドのスマートスピーカーやネックバンドタイプのワイヤレスイヤホン「Tone」シリーズにも広がっていきます。
プレスカンファレンスの壇上にはLGエレクトロニクスのプレジデント兼CTOであるI.P. Park氏が登壇しました。Park氏はAIプラットフォームのLG ThinQを、2018年以降に発売するLGのスマート家電に乗せていくことを宣言しました。LGのスマート家電プラットフォームは「SmartThinQ」として、すでに欧米など海外で走り始めています。これに、ユーザーの行動履歴をデータとして蓄積するディープラーニングの技術を統合し、LG ThinQ対応のスマート家電としてさらに強化を図ります。
Park氏は「当社のスマート家電は今後100%、Wi-Fi内蔵とAI対応を実現していく」とコメントしています。具体的には、エアコン、冷蔵庫、ロボット掃除機、洗濯機などのラインナップが連なってくることになりそうです。日本でも発売されているスチームクローゼット「LGスタイラー」も、Wi-Fi/AI対応が強化されます。
Park氏がLG ThinQプラットフォームの強みとして強調するのが、その「オープン性」。Park氏は「プラットフォームをオープンに開放して、パートナーが乗り入れやすいように展開していく。LGだけでなく、他社のスマート家電やIoTデバイスとの連携も、ユーザーの利便性を第一に考えて積極的に図っていく」と述べています。
そのコントロールセンターになる製品のひとつとして、LGのスマートロボット「CLOi(クロイ)」も壇上で紹介されました。これまでにIFAなど海外の展示会で紹介されてきたスマートロボットの名前が正式に決まった格好です。
クロイのAIプラットフォームはLG ThinQになる予定ですが、GoogleアシスタントやアマゾンのAlexaとの連携も可能になるようです。例えばクロイに向かって「冷蔵庫にあるチキンを使った献立を教えて」と話しかけると、おすすめのレシピをプッシュしてくれるような使い勝手が壇上で紹介されました。
LGエレクトロニクスは、スマート家電の規格標準化団体であるOCF(Open Connectivity Foundation)のメンバー企業です。LG ThinQのプラットフォームを発展させながら、そしてGoogleやアマゾンとの連携も深めながら、「スマートホームのリーディングブランド」としてのポジションを確立させていこうという強い意気込みを感じる発表内容でした。願わくば日本にもぜひ上陸してもらいたいものです。