JR西日本は5日、同社所有の新幹線車両の台車に亀裂などが発見された重大インシデントに関して、再発防止に向けた対策の進捗状況を報告した。あわせて同社役員の報酬返上や異動なども行うとしている。
12月11日の「のぞみ34号」で発生した重大インシデントを受け、JR西日本は同社所有の全台車(山陽新幹線2,169台、北陸新幹線318台)について、当該部位の目視による緊急点検を実施。12月15日までに緊急点検を終え、同様の異常がないことを確認している。新幹線の台車の点検については、仕業検査における当該部位の入念な目視点検を継続して実施するとともに、より精密な検査方法も検討しているという。
同社は今回の課題として「車両保守担当社員と指令員の間で車両の状況についての認識のズレがあり、運行停止に関する判断基準も曖昧であった」「異音などが発生しているにもかかわらず、運転に支障がないと判断し、JR東海に指令間協議を申し出ずに運行を引き継いだ」「車両保守担当社員と指令員は運行停止に関する判断を相互に依存する状況であった」の3点を挙げている。これらの課題克服に向け、12月に「音声モニターの増備(指令所内)」「におい、モヤ、音、振動等が複合する事象への対処ルールの策定と指導」をはじめ、「指令間協議による引き継ぎの徹底」「現場判断最優先の徹底」も実施した。
その他の対策も1~2月にかけて実施するほか、新たに「車両添乗による確認体制の強化」の項目を追加し、「車両保守担当社員の即応体制の整備」(2月実施予定)を行う。加えて「安全であることが確認できない場合は躊躇なく列車を停止させる」ことを改めて指導し、今後あらゆる機会を通じて繰り返し伝えていくという。また、安全運行に向けたルールやしくみを見直すための「新幹線重大インシデントに係る有識者会議」を1月8日に設置。3月末をめどに評価および提言を取りまとめる予定としている。
JR西日本は重大インシデントの発生を受け、「新幹線の安全性に対する多くの皆様からの信頼を裏切り大きく信用を失墜するものであること、及び安全マネジメント体制(情報共有、運行停止の判断)に不備があったことの重大さを鑑み、その経営責任を問うもの」として、代表取締役社長兼執行役員の来島達夫氏、代表取締役副社長執行役員 鉄道本部長の吉江則彦氏を「報酬5割×3ヶ月」とするなど、役員の補修返上および関係部門長の処分を行う。1月5日に行われた取締役会で役員の異動も決定し、吉江氏は取締役に降格。緒方文人氏(鉄道本部長)ら3名が代表取締役副社長兼執行役員に就任する。