若者のビール離れが叫ばれている。ビールだけでなく発泡酒も減少傾向だ。そんななか、ジワジワと人気を伸ばしているのがワインだ。
ワインは1998年頃に、ポリフェノールがフックとなり、第6次ワインブームを迎えた。その後、景気低迷で消費量を落としたが、2010年頃から少しずつ復活。2012年から消費量最大を更新し続けている。2016年は伸びが鈍化したが、それでも右肩上がりだったと報告されている。
では、2017年はどうだったのか。横ばい、もしくは若干の伸びではないかと、ワイン関係者は話す。統計がまだ出ていないので詳細はわからないが、着実に日本人に馴染んできているといえよう。だが、フランスやイタリアといったワインの本場の国と比べると、まだ日本のワイン消費量は少ない。ただ、それだけに、飽和してしまっているビールに比べれば、伸びしろが十分にあるといえる。
市場を牽引するチリ産ワイン
そんなワイン業界の2017年を振り返ってみると、やはりチリ産ワインの勢いが強い。2007年にEPA(経済連携協定)をチリと締結したことにより関税が削減され、安価に入手できるのが支持されている原因だろう。2015年にはオーストラリアともEPAを締結した。オーストラリアもワイン原産国なので、人気が高まってくるとにらんでいる。
こうしたなか、にわかに注目され始めているのが日本産ワインだ。とくに日本固有のブドウ種、「甲州」を使用した白ワインは、完全に市民権を得たといってよい。やはり日本固有の黒ブドウ(赤ワインの原料)である「マスカット・ベーリーA」の名前も知られるようになった。ちなみにマスカット・ベーリーAは、「日本ワインの父」と呼ばれる川上善兵衛により誕生した。
山梨県にある「岩の原葡萄園」が倒産危機に陥った際、川上のブドウ栽培技術を見込んだ鳥井信治郎が出資。鳥井は寿屋を創業した人物で、この会社は成長し現在、サントリーとなり、ぶどう園は同社の日本ワイン製造の拠点「登美の丘」と呼ばれている。
余談が長くなったが、2016~2017年にはワイン業界に動きがあった。そのなかで目立つのが、日本のワインの雄、キリンの動きだ。同社傘下のメルシャンは、長野県塩尻市片丘地区に約7ヘクタールのブドウ農園を拓くとした。ブドウの収穫には3~5年、場合によっては10年近くかかるかもしれないが、生産力アップの投資といえるだろう。
なお、同社のぶどう農園は、秋田県や福島県、そしてワイン生産が盛んな山梨県にあるが、長野県の農園開発に力を入れている感がある。長野県には片丘以外にも、桔梗ヶ原や椀子(まりこ)といった農園があり、そこで収穫されたブドウを使って醸造したワインに、各農園の地名を冠している。
さらに、ブドウ栽培だけではない。ワインを醸造するワイナリーの新設もリリースした。前出の桔梗ヶ原と椀子地区だ。これまで、日本産ワイン醸造のおもな拠点は、山梨県甲州市にあるシャトー・メルシャンだった。それが一気に2カ所も新設されることになる。
同社が、ブドウ農園やワイナリーに対して、これだけ投資を進めるのは、やはり日本産ワイン人気の向上を見越しているからだろう。