コネクティッドカーが実現するもの

コネクティッドカーが実現することに関して、山本氏は「クルマ・街とつながる『ITS(Intelligent Transport Systems)』、ドライバーとつながる『マルチメディアテレマティックス』、社会とつながる『車両ビッグデータ』の3つだ」と述べた。

ITSは、道路交通が抱える事故・渋滞や環境問題などを最先端の情報通信(情報化)と制御技術(知能化)により解決するシステム。同社では、車車間、路車間の通信により、見通しの悪い交差点でのクルマや歩行者の事故を防止する「インフラ協調型運転支援システム」を活用し、路車間通信システム(右折時注意喚起など)と車車間通信システム(緊急車両存在通知など)で構成した「ITS Connectサービス」などを提供している。

  • 「インフラ協調型運転支援システム」の概要

    「インフラ協調型運転支援システム」の概要

  • 「ITS Connectサービス」の概要

    「ITS Connectサービス」の概要

マルチメディアテレマティックスはリモートサービス、運転支援、ハイブリッドナビゲーション、ネット情報/SNSへの安全なアクセスの4つのカテゴリーを設けている。

リモートサービスではクルマの警告灯が点灯すると車両のデータ解析を行い、異常要因の推定と以降の走行可否判断をはじめ適切なアドバイスを自動的に生成する「eケアサービス」、運転支援については車両データから事故の状態や障害程度を推定し、障害度に応じたドクターヘリの出動を要請することで救命開始時間を短縮する「先進事故自動通報システム(AACN)」などがある。

  • 「eケアサービス」の概要

    「eケアサービス」の概要

  • 「先進事故自動通報システム(AACN)」の概要

    「先進事故自動通報システム(AACN)」の概要

さらに、ハイブリッドナビゲーションでは、ナビに目的地を設定していなくても過去の走行履歴から行き先と走行ルートを予測し、ルート上の規則・渋滞情報などを案内する「目的地推定」、ネット情報/SNSへの安全なアクセスに関しては、あいおいニッセイ同和損保と共同で車両運行情報などを自動送信し、保険料算出・サービス提供に必要なデータ連携を行うコネクティッドカー向けの運転挙動反映型テレマティックス自動車保険を開発している。

  • 「目的地推定」の概要

    「目的地推定」の概要

  • 運転挙動反映型テレマティックス自動車保険の概要

    運転挙動反映型テレマティックス自動車保険の概要

車両ビッグデータについては、自社の自動車ビジネス分野では車両データを分析、匿名化、フィルタリングし、開発・設計やクルマの機能拡張などに活用する。そして、非自動車ビジネス分野で、それらのデータをパブリッククラウドに提供し、テレマティックスサービスや保険・金融、スマートフォン連携、交通情報や交通管制、シェアリングをはじめとしたMaaS(Mobility-as-a-Service)などに用いる。

  • 車両ビッグデータ活用の概要

    車両ビッグデータ活用の概要

また、車両ビッグデータは「位置情報+α」「車両状態監視/診断」「動的地図自動生成」の3つの活用例があり、位置情報+αでは2016年の熊本地震時には地域における安全運転を図るため「通れた道マップ」を提供した。また、車両状態監視/診断では札幌市で降雪時にドライバーが急ブレーキを踏み、ABS(Antilock Brake System)が作動したカ所を地図上に表示し、融雪剤を散布する優先順位の決定などを検証したという。

  • 通れた道マップの概要

    通れた道マップの概要

  • 札幌市における降雪時の活用例

    札幌市における降雪時の活用例

これらの技術を組み合わせることで数秒先までクルマ本体が自律で先読みし、そこから5分後までは前を走行しているコネクティッドカーが渋滞情報などを察知し、クラウドに送り、後続車に伝えることが可能となり、同社では「After 5 minutesの先読み」と位置づけている。

  • 「After 5 minuteの先読み」の概要

    「After 5 minuteの先読み」の概要

加えて、動的地図自動生成は現在、カメラ画像から空間情報を自動生成する技術開発に取り組んでおり、後方カメラ+高精度測位により路面画像を生成し、画像特徴照合でデータを統合することで情報を抽出する。

  • 動的地図自動生成の概要

    動的地図自動生成の概要

膨大な情報を、いかにクラウドで管理するかが重要

トヨタが取り組むコネクティッドカーの技術に関して、山本氏は「DCMと車載システムソフトウェア技術、スマートデバイス連携技術、通信インフラ技術、AI・データ分析技術の5点となる。特にわれわれが、これから考えなければいけないのは通信インフラ技術とAI・データ分析技術となり、クルマは単体商品ではなく、クラウドと一体型の製品になっているほか、膨大な情報を管理しなければならないため、いかにクラウドで処理するかに懸かっている」と強調していた。今後、同社のコネクティッドカー戦略はクラウドの活用が鍵を握りそうだ。

  • コネクティッドカーの実現に向けた技術の概要

    コネクティッドカーの実現に向けた技術の概要

また、同氏は「2020年に向けたコネクティッドカーのあるべき姿として、『街と対話するクルマ』『ドライバーと対話するクルマ』『社会と対話するクルマ』の3つの提案価値を『快適・便利』『安心・安全』の2軸で推進し、バージョンアップによるクルマの経年進化を目指す。また、2018年夏には、トヨタ初となる本格的コネクティッドカー『クラウン』の発売を予定しており、クルマの開発は車両とコネクティッド技術の両輪で進めるようになっている」と、述べていた。