自社製品を首都圏に売り込みたい――。様々な取組みを進めつつも、首都圏への売り込みの難しさを感じている地方の中小企業は少なくない。ここでは県産品の売り込みというくくりになるが、課題の解決手段として、地域商社やまぐちの取組みは興味深いものがある。

  • 首都圏に産品を売り込むにはどうすべきか

地域商社やまぐちとは?

地域商社やまぐちは、山口県の県産品を首都圏へ売り込むために10月に設立された会社だ。もともとは地方創生を目的に、山口銀行と山口県がゼロベースで研究を進めたのが始まり。県内の企業の抱える課題などを約2年かけて調査した結果、首都圏への販売を拡大させるには地域商社が必要と判断、山口フィナンシャルグループ、山口県内の民間企業6社、ベンチャーファンドの出資によって設立された。

2年に渡る調査から見えたのは、首都圏に向けた販路開拓の困難さだった。個々の企業では、展示会などを通じてバイヤーに売り込みをかけてきたものの、全国から売り込みがかかっており、「生産者単独で商談に来られても全部は見られない」「セット販売などの企画を持ち込んで欲しい」などといった要望を聞くにとどまるところもあった。山口県産品の少量多品種という特徴も、供給面の問題から売り込みには足枷となっていたようだ。

地域商社やまぐちの果たす役割

そうした課題を解決するのが地域商社やまぐちだ。生産者に代わり、業界経験を持つ同社社員が首都圏で営業を行い商談を行なう。首都圏の高級スーパーや百貨店のバイヤーなどへ売り込みをかけ、BtoBビジネスを展開することになるが、単に話を持ち込むだけでは、差別化には乏しい。何かしらのインパクトが欲しいところだ。

そこで生み出されたのが「やまぐち三ツ星セレクション」というブランド。県内に本社を置く事業者が、主要原材料に山口県産品を使用し、県内で生産・製造、さらに原料や製法に地域性やこだわりを持つものをブランドの対象品とする。さらに、生産者がどんな思いで作り上げた産品なのか、そうしたストーリー性に溢れたものをやまぐち三ツ星ブランドの商品としていく考えだ。こだわりの商品を揃えてセットでの売り込みを可能とすることで、かつてのように門前払いに近いような状況を回避しようというわけだ。

  • やまぐち三ツ星セレクションとして採用予定のヤマカ醤油のフルーツビネガーとにいやの漬物

  • やまぐち三ツ星セレクションの商品に使われるブランドロゴ。3つの丸は毛利藩の家紋に用いられる三ツ星をイメージしたという

さらに売れ行きの良し悪しに関わらず、東京の営業社員から消費者ニーズ、マーケット情報をフィードバックしてもらい、商品のブラッシュアップや新商品の開発につなげていこうという考えも持ち合わせる。

特に強みを持つのが山口銀行のネットワークを活用できる点だ。そもそも地域商社やまぐちの代表は山口銀行出身の坪倉昭雄氏。坪倉社長によると、本社も山口銀行本店内にあり、県内のどの企業がどういった商品を作れるのか、情報収集がしやすい環境にあるという。

将来に向けた構想も描いており、中国や東南アジアへの展開、ECサイトを活用した販売も視野に入れている。また、販売機会の拡大にとどまらず、県産品を一括集荷・配送する物流機能や支払い代行機能など、生産者に対するサービスも充実させていく方針だ。

会社自体がスタートを切ったばかりということもあり、「やまぐち三ツ星セレクション」が高級スーパーや百貨店などでお目見えするにはまだ少し先のことになる。まずは、30品目をメドとして商品を拡充、その作業を進めている最中だ。見立てどおり事がうまく運ぶのか、今後が気になるところだ。