声優・渡部優衣の3rd Live「FUN FAN BIRTHDAY 2017」が2017年12月2日、東京・新宿BLAZEにて開催された。今回は夜の部の模様をレポートする。
「FUN FAN BIRTHDAY」は渡部の誕生日に合わせ、毎年開催されているバースデーイベント。2016年に渡部がアーティストとして再出発したこともあり、現在はライブを中心とした構成となっている。今回は、「渡部がファンが待つ駅にみんなを迎えに行く」というコンセプトの2ndアルバム『vivid station』をひっさげてのライブとなったこともあり、スタート時には汽笛が会場に鳴り響いた。会場にバンドメンバー、そしてドレスアップした渡部が登場すると会場のボルテージは一気にマックスへ。。
最初に奏でられたのは「アスナロ」だ。本曲はデビューアルバム『FUN FAN VOX』でも見せてきたクールな渡部優衣の延長線上として位置付けられた2ndアルバムのリード曲。馴染みのある渡部の一面を、あえてド頭からぶつけることで成長を見せつけた。
続いて歌唱したのはデビューアルバムに収録されていた楽曲「笑顔がイイネ☆」。昨年の「FUN FAN BIRTHDAY」や1st Live「FUN FAN STORY」でも歌ってきた曲だけにライブに駆け付けたゆいとんズ(ファン)とのコール&レスポンスもバッチリ。「アスナロ」と併せて見事な開幕スタートダッシュを切ることに成功した。
止まらない勢いに乗って歌ったのは「湾岸ヴィーナス」。渡部本人が「ギャップが面白い曲に仕上がっている」と語っていたとおり、楽曲だけでなく、歌の雰囲気とは裏腹なエネルギッシュなダンスも、見ているだけで楽しさがこみあげてきた。
4曲目「Love Holic」でここまでの雰囲気を一変させる。サポートバンド・イエローサンダーズの演奏が始まると同時に会場が赤く染まり、それに呼応するが如く渡部が艶やかな表情と歌声を魅せた。続く「DAY BRACK」は非常にメッセージ性が強い楽曲。マイクに声をしっかりとのせて、詩に込められた想いをゆいとんズに伝えようとする渡部の姿に思わず胸が熱くなった
5曲目の「6th Breeze」では歌のフレーズごとに振りをつけたり、動きをつけたりと、ここまでのセットリストでは表現してこなかったパフォーマンスを見せる。本曲でアーティストとしての新たな表現方法に挑戦する彼女の姿が垣間見えた。
ここで、渡部が舞台から一度降壇し、恒例となったバンドメンバー紹介「イエローサンダーズのテーマ」が行われる。今回はアルバムコンセプトに併せて、「電車の車内アナウンス風」にバンドメンバーを紹介した。
「イエローサンダーズのテーマ」が終わりに差し掛かったところで、渡部がステッキを持って舞台に登場。そして、意中の人をコントロールしたいのになかなかうまくいかない女の子の心情を表した「joystick」を披露した。ステッキを使ってのパフォーマンスは今までにない試みで、「6th Breeze」に続き渡部の新たな魅力が垣間見えた。
対する9曲目の「秘密の呪文」はこれまでも何度かライブで歌ってきた楽曲。今まで通りの魅力も決して見られなくなったわけではない、ということが本曲を笑顔で歌う渡部から感じ取ることができた。
続く10曲目の「sensing」は美しいメロディーが特徴的な曲で、渡部が2ndアルバムにどうしても入れたいとお願いした一曲。楽曲提供者のKOHが「渡部とファンの方々が互いに感じ合って、通じ合っている」というコンセプトを元に書いた本曲は、訴えかけるような表現と歌声に併せたダンスも印象的。その動き、一挙手一投足に不思議と見入ってしまい、気が付いたら一曲が終わっていた。
不思議な世界観の余韻に浸る間もなく、次の楽曲がスタート。セットリストの11曲目に選ばれた「Remember…」もKOH提供の楽曲で、優しい歌声が会場に響き渡る。ペンライトを持ったまま聞き入るゆいとんズの姿もちらほら見られた。
ライブもいよいよラストスパート。12曲目に歌ったのは「ステップ」だ。バラード調の本曲は渡部自身が「次のステップのためのキーポイントになる曲」と答えていたもの。ここまでのパフォーマンス、そしてこの曲で会場を温かく包み込んだ彼女は間違いなく、次の「ステップ」に進んでいるだろう。曲が終わった後に自然と起きた拍手の大きさが、それを物語っていた。
ここでクライマックスと言ってもよい雰囲気ではあったがライブはまだ終わらない。クールでロックな「100% Believe」と可愛らしい楽曲の「スキがあふれて止まらない!」という正反対の曲を立て続けに歌唱。そして、本ライブのラストを飾ったのは、2ndシングル「スペアミント」だ。「みんなに大好きの気持ちをもっともっと届けたいと思います」ということばと共にポップで爽やかなラブソングを歌い上げた。
まだまだ渡部の歌を聴きたいという会場に、2分30秒に及ぶ「ゆいとんコール」が巻き起こる。そのコールに応えて再び舞台に登場した渡部はアンコール一曲目「夢のキセキ」を熱唱した。
歌い終えた渡部は、ここで会場に駆け付けた方々へ挨拶。しかし、どこからともなく「ゆーいーとん」という声がいきなり聞こえてきた。ると突然、舞台の袖から「6th Breeze」の作詞を担当した桃井はるこが姿を現す。まさかのサプライズにまともに話すこともできなる渡部。それもそのはず、渡部は桃井をライブに誘っていたものの、「仕事で来られない」と言われていたため、今日は来ないものだと思っていたのだという。
サプライズに驚く渡部にはケーキと共に桃井と会場のゆいとんズからハッピーバースデーの歌が贈られた。火を消す際、「幸せになるぞー」とさり気なく言っていたのが、実に彼女らしかった。
サプライズのお祝いの後には、桃井からライブの感想を聞かれる。まだサプライズの余韻があるからか、たどたどしく返答したり、野球に関連した話を事あるごとにしたりなどしていたが、「(ライブを終えるのが)寂しいという気持ちがある」と素直に答えた。
渡部は桃井が駆けつけてくれたことが本当に嬉しかったようで、実家に帰ったときに声優雑誌を広げたら桃井が載っていたという思い出話を続けて語り始める。そのトーク中には「諦めずにやってきてよかった」ということばも。このことばの重み、そして喜びは本人にしか分からないだろう。しかし、そんな彼女だからこそ、応援したくなるのだ。こんなにも必死でやってきた彼女をこれからも応援したい、と思える一幕であった。
その後、壊れた衣装を客席に投げるファンサービスや「イエローサンダーズ」とのライブ振り返り、そして脱線しまくりのトークを経て、アンコール2曲目の「ユメ☆アドベンチャー」へ突入。本曲は「タオルを振り回して楽しめるような曲も作ろう」というコンセプトのもと作成された楽曲。サビの「夢アドベンチャー」の部分で星を描いてほしいと渡部がお願いしていたことも相まって、会場はお祭り騒ぎの賑わいを見せた。
本ライブを締めくくる曲に選ばれたのは「JUMPER」だ。「最後にゴールテープを切ってジャンプ! そして次へ進む」というニュアンスが歌詞に含まれているという本曲は、諦めずに歩み続けてきた渡部、そしてそれを支えてきたゆいとんズにピッタリの楽曲。最後まで楽しい雰囲気が途切れることなく、ライブは終了の時間を迎えた。
今回のライブで渡部は「みんなのこと好きすぎて、ついみんなのこと見ちゃう。真似しちゃう」、「楽しませてくれてありがとう」と、ファンへの想いを事あるごとに言葉にしていた。言葉だけでなく、パフォーマンスや楽曲からもその想いは伝わってくる。以前のインタビューで渡部は、2ndアルバムに収録されている楽曲の多くが「ファンの方々とのつながりをイメージして(楽曲提供者の皆さんが)曲を作ってくださった」と語っていた。
それくらい、渡部のファンを大切にする気持ちは周りにも漏れている。でもそれでいいのだ。ファンへのお返しはまだまだ足りないと語る彼女は、これからもファンと一緒に歩んでいくだろう。その軌跡は電車のレールのように、どこまでも続いていく。
渡部優衣3rdライブ「FUN FAN BIRTHDAY」夜の部セットリスト
M-1.アスナロ
M-2.笑顔がイイネ☆
M-3.湾岸ヴィーナス
M-4.Love Holic
M-5.DAYBREAK
M-6.6th Breeze
M-7.イエローサンダーズのテーマ
M-8.joystick
M-9.秘密の呪文
M-10.sensing
M-11.Remember…
M-12.ステップ
M-13.100% Believe
M-14.スキがあふれて止まらない!
M-15.スペアミント
【ENCORE】
M-16.夢のキセキ
M-17.ユメ☆アドベンチャー
M-18.JUMPER