スズキは新型車「クロスビー」を発売した。このクルマでスズキは、ワゴンの広さとSUVの走破性を併せ持つ「小型クロスオーバーワゴン」という新ジャンルを提案する。「ハスラー」に似ているとの指摘もあるクロスビーだが、果たしてどんなクルマなのだろうか。
ワゴンの広さとSUVの走破性を両立
新車発表会に登壇したスズキの鈴木俊宏社長は、「大人5人がしっかり乗れるワゴンの広さと、SUVらしい走破性を兼ね備えた新ジャンルのクルマ」とクロスビーを紹介した。「ハスラー」に似ているのは当然で、このクルマの成り立ちは4年前、前回の東京モーターショーでスズキがハスラーを公開したときに、顧客から「小型車版も欲しい」との声が多く寄せられ、その要望が増えていったことから開発が始まったと高橋正志チーフエンジニアは振り返る。
とはいえ、「クロスビーはクロスビーだ」と鈴木社長も語るように、軽自動車のハスラーと小型車のクロスビーは違うクルマだ。高橋チーフエンジニアの解説によれば、ハスラーの使いやすさやは継承しつつも、クロスビーでは「『イグニス』と同じAセグメント用のプラットフォームをベースとしつつ、デザインも含め一から見直し、小型車らしい質感や外観など、全てを新たにデザインし直した」という。ちなみに、クロスビーがハスラーと顧客を取り合う(カニバる)可能性について聞かれた鈴木社長は、むしろイグニスとの競合が十分ありうるとの見方を示していた。
小型車販売12万台に向け勢いはつくか
クロスビーのパワートレインは1.0L直噴ターボエンジン+マイルドハイブリッドというスズキ初の組み合わせだ。このクルマには「もっと皆で、もっと遠くに遊びに行こう」(高橋チーフエンジニア)という思いを込めたそうで、それに見合う性能のエンジンをチョイスしたのだという。
タイヤは16インチの大径タイヤを装着。これにより、地上最低高の高さとアプローチアングル(クルマ先端の最下部と前輪の設地面が作る角度のことで、悪路走破性の高さに影響する)およびデパーチャーアングル(クルマ後端の最下部と後輪の設地面が作る角度)の大きさというSUVらしさにつながるポイントを押さえた。四輪駆動(4WD)車では「スポーツモード」と「スノーモード」という2つの走行モードを採用。滑りやすい路面での発進をサポートする「グリップコントロール」などの機能も標準装備とした。
クロスビーの月間販売目標は2,000台。スズキは国内で登録車(軽自動車ではないクルマ)を年間10万台売るという目標を昨年度に達成し、今年度も台数をさらに伸ばす勢いだそうで、今後は早期に月間1万台、年間12万台規模に乗せたいとの考えを持っている。「スイフト」「ソリオ」「イグニス」などのラインアップにクロスビーを加え、小型車販売をさらに加速させたいところだ。