今回の機体移動では、787の機体構造材を空輸するために使用している747LCF「ドリームリフター」を一緒に展示したため、747LCFを避けるように移動する必要があった。そのため、ZA001の移動経路は「左折→右折→右折→左折」となり、「コ」の字型が加わった。これがなければ右折と左折が一回ずつで済んでいたところだ。
また、こんな大物を移動するとなると風の影響も無視できない。しかも、中部国際空港は海上空港だから吹きさらしだ。実際、機体移動の当日は風が強かったので、その分だけ移動には神経を使ったことだろう。
こうしてみると、ZA001そのものだけでなく、トーイングカーの操縦が、もうひとつの見どころであったと言える。ちなみに、われわれがクルマを運転する時は「車体感覚」「車幅感覚」などと言うが、トーイングカーで飛行機を動かす時も、似たような話があるそうだ。
仮設通路の構造は?
空港の滑走路や駐機場といった、いわゆる「制限区域内」であれば、機体の重量を支えられるだけの強度を持たせた舗装がなされている。ところが今回の機体移動では、その制限区域を出て「FLIGHT OF DREAMS」の建設現場まで移動しなければならない。
駐機場と、隣接する駐車場の間は、フェンスをどけるだけで行き来できるが、その先が問題だ。そこで、駐車場から建設現場まで、一直線に仮設の通路が造られた。
そこで問題がある。modernairliners.comによると、787-8の運用自重は118,000kg(118トン)ある。それを10個のタイヤで支えている。仕様上の運用自重を単純に10で割ると、1個のタイヤで11,800kgの重量を支えることになる。
ZA001は試験用機で内装がないから、その分だけ軽くなっただろうが、何割も減るわけではないだろう。そして、路面はその荷重に耐えられなければならない。しかるべき強度を持たせないと凹んでしまう。
ところが、実際に造られた仮設通路を見てみたら、特別に頑丈そうなものを造ったようには見えなかった。それに、仮設通路に向かう途中で経由する駐車場は以前からあるもので、今回のためにわざわざ補強したわけではない。つまり、道路というのは意外と頑丈に造られているのだった。
なお、屋外の仮設通路はアスファルト舗装だが、「FLIGHT OF DREAMS」の建屋の中は、分厚い鉄板を未舗装の地面の上に置く形になっていた。これはこれで、凸凹を作らないように注意が必要だ。路面の凸凹があると、トーイングカーの運転にも影響する。それに、高さが設計値より高くなると、ただでさえ少ない垂直尾翼と鉄骨の間の空間余裕が、さらに減ってしまう。
今後の予定
まだ、「FLIGHT OF DREAMS」の建屋は鉄骨が組み上がった段階で、外壁は一部分だけ組み付けた状態だった。これから外装を完成させて、続いて内装工事に入り、テナントの入居作業という流れになる。施設のオープンは2018年8月になる予定だ。