12月14日に発売となり、発売前3カ月の予約受注台数が月間販売目標である1,200台を大きく上回る7,300台に達した、マツダの3列シートSUV「CX-8」。多人数乗用車の新たな選択肢として展開する、同車の魅力とは? その乗り心地を一足お先に体験した。

  • CX-8 XD L Package(ボディカラーはマシーングレープレミアムメタリック)

“多人数乗用車=ミニバン”という固定観念を打ち破る、マツダの新提案

マツダはミニバンの新規開発を凍結し、「MPV」や「ビアンテ」もすでに生産を終了、「プレマシー」は2017年中の生産終了がアナウンスされている。そんな中、今回新たに展開する「CX-8」は、マツダのラインナップの中でも久々に登場した3列シート車となる。

  • 車体寸法は、全長4,900×全幅1,840×全高1,730mm

マツダは、同車を日本国内におけるSUVシリーズのフラッグシップとして位置付けており、ミニバンの代替としての需要はあまり見込んでいなかったという。しかしフタを開けてみると、小さな子供を持つ若いファミリー層からの反響が非常に大きく、嬉しい誤算となったようだ。

  • 外観からの印象よりも室内空間は広く感じられる

  • 上級グレードの「XD L Package」のみ、2列目シート中央にアームレスト付コンソールボックスを装備している

ラインナップは全車ディーゼルエンジン

同車のエンジンは、すでに「CX-5」でも採用され高い評価を受けている、「SKYACTIV-D 2.2」と呼ばれるSH-VPTS型ディーゼルエンジン1種類。グレードは、ベーシックな「XD」、中間グレードの「XD PROACTIVE」、そして上級グレードの「XD L Package」の3つがラインナップされており、上級グレードの「XD L Package」が6人乗り、それ以外の2グレードは6人乗りと7人乗りが選択できる。また、それぞれのグレードで2WDと4WDの2つの駆動方式を用意している。

  • CX-8には全グレードで「SKYACTIV-D 2.2」が搭載される

価格は、319万6,800円(「XD」の2WD)~419万400円(「XD L Package」の4WD)となるが、エンジン・ミッションは全て共通であるため、比較的買いやすい価格と言えそうだ。

走りの質感はとても軽快

CX-8の車両重量は、最も軽量なものでも1,780kg、重いものでは1,900kgと、乗員も含めれば2tに迫る。いくらトルクの厚いディーゼルエンジンを搭載しているとはいえ、さすがに重さを感じるだろうと、いざ走らせ始めてビックリ。ほとんど重さを感じさせないのである。

エンジンの駆動トルクを変化させ、4輪への接地荷重を最適化する制御技術「G-ベクタリングコントロール」の効果もあってか、首都高のコーナーもスムーズかつ軽やかにクリアしてくれた。その滑らかな車両挙動は、制御そのものを感じさせないほど。月並みな表現ではあるが、まさに「運転が上手くなった」感覚を味わえる。ミニバンの運転に退屈を感じていたユーザーにとっては、この走り味だけで購入を検討する価値があると言っても過言ではない。

  • 高級感だけでなくマツダらしいスポーティさも感じさせてくれる運転席周り

3列目もしっかり乗れるSUV

近年では世界的にSUVがブームとなっており、3列シートを備えるSUVも少なからず存在している。しかし、3列目はあくまでエマージェンシーのような扱いで、「ないよりはマシ」というレベルの車両も多い。3列目まで余裕がある車種の場合はボディサイズが大きく、価格も高価というケースがほとんどであった。

  • 170cm前後の身長であれば、全く窮屈さを感じない快適な3列目シート

しかし、このCX-8は3列目シートまで快適な姿勢をとれる居住性を基本に開発されており、実際に身長170cmほどの筆者であれば、窮屈さを感じることなく快適に過ごすことができる空間となっていた。

  • 3列目シートから運転席を望む。高い静粛性により、運転手との会話も問題なく可能だ

さらに特筆すべきはその静粛性である。車両後端である3列目はロードノイズが侵入しやすいのにもかかわらず、高速道路を走行中でも運転席の人と通常の音量で会話ができるほどの静かさを実現している。こういった点からも、空間品質へのこだわりが感じられた。

Dピラー内に吸音材を設定するという基本的なものから、より高性能な吸音材の採用、路面から車体に伝達する振動を最小限にするためのフロントのダイナミックダンパー、リアフェンダーパネル内に貼り付けられた制振材、ルーフモール後端とルーフスポイラーとの段差を縮小したことによる風切り音の低減など、細かなところまで創意工夫が詰まっている。

ボートも牽引できるトレーラーヒッチなどのオプションも

同車にはディーラーオプションとして、750kg以下のキャンピングトレーラーなどを牽引することが可能なトレーラーヒッチが用意される。それに伴い、「トレーラー・スタビリティ・アシスト」というブレーキ制御機能を全車に標準装備している。

トレーラーが路面変化や突風などで横揺れした際にも、この機能により状況に応じてブレーキやエンジンがコントロールされ、トレーラーの横揺れを収束してくれる。先に登場した「CX-5」には、これらのオプションは用意されていなかった。なぜなら「CX-8」のベースは「CX-5」ではなく、一回りサイズの大きい海外専売車の「CX-9」であるからだ。シャシー性能に余裕があることの裏返しとも言える。

  • CX-8を所有することで、アクティブライフの可能性が大きく広がる(トレーラー本体はオプション設定なし)

このように、走りや質感という面だけでなく、3列シート車としてもかなり高いレベルに仕上がっているCX-8。スライドドアの便利さも捨てがたいが、もっと違うところに軸足を置きたいと考えているファミリー層にヒットするのも頷ける。“ファミリーカー=ミニバン”という図式を崩すのは、このCX-8なのかもしれない。

※価格は全て税込