PM2.5に対する関心は一時期に比べると減少しつつあるが、中国では依然として深刻な問題となっている。当然、日本に対する影響も少なくない。一方で、花粉やホコリの問題は、これからの季節にとても気になるものだ。
こうしたなか、三菱電機は、大気中のPM2.5や花粉、ホコリなどを除去する摩擦帯電方式の空気清浄デバイスを開発したと発表。しかも、約10年間、メンテナンスフリーで継続使用が可能という。「換気空調システムに搭載することで、清浄した快適な空間の実現に貢献できる」(三菱電機 先端技術総合研究所の水落隆司所長)。
まずは中国市場に向け、換気空調システムに採用するとともに、中国におけるフィールド試験を開始する予定であり、2020年度にも事業化を目指す。「オフィスビルや家庭向けの換気空調システムへの搭載を計画しており、将来的には、小型化することで、空気清浄機やエアコンへの採用なども視野に入れている」(三菱電機 環境システム技術部の古川誠司部長)。
三菱電機は、家庭やオフィスにおいては、外気を活用した空気清浄が重要であると指摘する。三菱電機 先端技術総合研究所の水落隆司所長は、次のように話す。
「ZEH(ゼロエネルギーハウス)やZEB(ゼロエネルギービル)などが注目を集めるとともに、建物の高気密化、高断熱化が進展しており、住空間はまるで魔法瓶のような様相になっている。これまで以上に、清浄な外気による換気が重要。
今回の技術は、室内換気を可能にした新たなデバイスに位置づけるものであり、世界初の技術。湿度が高い場所でも、静電気の制御を可能にしており、同時に、省メンテナンスできれいな空間を提供できる。事業化の成果を大きく期待している」
家庭内やオフィス内の空調が重視されるなか、新たな技術により、空質を改善することができるというわけだ。
新開発の空気清浄デバイスでは、プラスチック製の捕集板と、不織布ブラシの摩擦によって静電気を発生。プラスに帯電したPM2.5や花粉、ホコリなどが、マイナスに帯電した捕集板に付着する。世界保健機関が定めた環境基準「PM2.5濃度年間平均10μg/m3以下」を満たす、空気清浄による換気を実現できるという。
また、千葉県市川市の三菱電機 東浜リサイクルセンターで取り組んでいる、家電リサイクル「静電気によるプラスチックリサイクル技術」を活用。外気中のダストを静電気の力で捕集し、ブラシを動かして、1日1回、自動清掃および摩擦再帯電を行う。
これにより、捕集性能を低下することなく、継続利用が可能な点も特徴だ。摩擦帯電方式集塵部で約70%のダストを捕集し、フィルター部を含めた空気清浄デバイス全体では90%以上の捕集率を実現する。ダストボックスに捕集したダストは、10年間に一度交換すればいいという。
「これまでのフィルターによる空気清浄では、2年に1回はフィルターを交換する必要があった。新たな技術では、ブラシによる清掃でフィルターの目詰まりが起こりにくくなり、約10年間の使用を可能にしている。フィルター交換のコストを考えると、新技術のほうが低価格化できる」(三菱電機 環境システム技術部の古川誠司部長)。
長期にわたって安定した性能を維持し、省メンテナンス化できる点は、BtoB用途でも、BtoC用途でも大きなメリットとなりそうだ。
実は、以前から同様の性能を持ったものとして「電気集塵機」があったが、これは放電による帯電。対して今回の技術は、摩擦による帯電(非放電)になるため火災リスクがない。合わせて、オゾンや窒素酸化物(NOx)の発生を抑制し、高い安全性を実現しているという。
摩擦による帯電は、コスト面でもメリットがある技術だといえよう。コンシューマ領域においても、早期の実用化を期待したい技術だ。