子どもの風邪や胃腸炎などでお世話になる粉薬。薬剤師から飲ませ方を教えてもらっても、実際に家でやってみるとうまくいかなかったり、嫌がって大泣きしてしまったり、予想外のことが起こるものです。今回は、子どもたちに粉薬を飲ませる方法について、小児科医の竹中美恵子先生に聞きました。

  • 小児科医が教える、薬の飲ませ方(画像はイメージ)

Q.乳児に粉薬を飲ませるのがとても難しいです。どうやって飲ませたらいいですか?

粉薬は原則として、成分の変化を防ぎ正確に効能を出すために、水かぬるま湯で飲むものです。しかしまだ粉薬をうまく飲むことができない乳児には、粉薬を練って団子状にして飲ませる方法があります。

少量の水を指につけるか数滴の水を薬に垂らして粉薬を練り、団子状にして、赤ちゃんの口の上あごかほおの内側につけてあげましょう。事前に必ず手指を清潔にしてから行ってください。

子どもがグズって飲むのを渋るときには、ごほうびにミルクや母乳で押し流すのもひとつの方法ですね。

Q.子どもが粉薬を飲んでくれない場合、食べ物や飲み物に混ぜてもいいのですか?

小さな子どもたちはどうしても薬を飲んでくれないことがありますよね。そうした場合は、食べ物や飲み物に混ぜるのも選択肢のひとつです。ただ、そもそも、食べ物に混ぜて飲んではいけない薬もあるので、医師や薬剤師に確認を取ってからにしましょう。

Q.薬を混ぜるのにおすすめの食品はなんですか?

薬の味を消してくれるという観点からは、チョコアイスがおすすめです。また、プリンやチョコクリーム、コンデンスミルクも同様の効果が期待できます。

また、あまり知られていませんが、医師に頼めば乳糖や単シロップを併せて処方してもらうこともできます。これらの食品と同様、薬を飲みやすくするためのものなので、必要な場合は医師に一言伝えるといいでしょう。

Q.逆に、混ぜない方がいい食品はありますか?

ご飯などの主食には混ぜないようにしましょう。主食の味が変わることで、薬が混ざっていない場合でも食べなくなってしまい、子どもにとって必要な栄養がとれなくなってしまう恐れがあるからです。乳児の場合も同様の理由から、粉ミルクに薬を混ぜるのはやめましょう。

また、スポーツドリンクやオレンジジュースなど、酸味のある飲み物は薬の苦みを強くしてしまう可能性があるので、避けた方がいいでしょう。牛乳などの乳製品は、薬の効き目を弱くすることがあるので、薬と一緒に飲まない方がいいです。

さらに、温度の高いものに薬を入れると成分を壊してしまうことがあるので、注意が必要です。人肌程度までの温度なら問題はないでしょう。

これらについても、医師や薬剤師に確認するのが確実だと思います。

Q.別々に処方された薬を混ぜて飲ませてもいいですか?

薬同士は飲み合わせたときに味が変わってしまうものもあります。例えば、抗生剤と整腸剤は一緒に処方されることが多いですが、薬の種類によっては混ぜて飲むと苦くなるケースがあります。

医師や薬剤師が考えたうえで別々に処方している可能性もあるので、混ぜる場合は必ず相談してからにしましょう。

Q.薬をどうしても飲んでくれない場合、飲ませるためのコツはありますか?

時間を少しあけて飲ませてあげるのもひとつです。少々飲ませる時間がずれても大きな問題はありません。そして、あげる人を変えてみると飲んでくれることもあるようです。ずっとお母さんがあげてダメならお父さんがあげてみるという風に、工夫してみましょう。

さらに、味が嫌で飲んでくれない可能性もあるので、混ぜるものを変えてしまうのもいいですね。子どもが好きな味を一度把握できれば、「これなら飲んでくれる」と思えて親も子どもも気持ちが楽になるでしょう。

Q.先生ご自身は、どうやってお子さんに薬を飲ませていましたか?

初めはスポイトで薬をあげていたのですが、ある時から嫌がり始めて、飲ませるのに苦労しました。その時はまだ乳児だったので、手で薬を練って、直接その指を吸わせて飲ませたこともあります。

薬を飲んでくれないと焦ってしまうとは思いますが、多くの場合は一度薬が飲めなかったために、症状が劇的に悪化することはありません。あげる側はゆったりと構えて、飲めたら子どもをたくさん褒めてあげてくださいね。薬を子どもの体の中に入れるということが一番重要なので、親子で楽しみながら取り組んでもらえたらと思います。

竹中美恵子先生

小児科医、小児慢性特定疾患指定医、難病指定医。
アナウンサーになりたいと将来の夢を描いていた矢先に、小児科医であった最愛の祖父を亡くし、医師を志す。2009年、金沢医科大学医学部医学科を卒業。広島市立広島市民病院小児科などで勤務した後、自らの子育て経験を生かし、「女医によるファミリークリニック」(広島市南区)を開業。産後の女医のみの、タイムシェアワーキングで運営する先進的な取り組みで注目を集める。
日本小児科学会、日本周産期新生児医学会、日本小児神経学会、日本小児リウマチ学会所属。日本周産期新生児医学会認定 新生児蘇生法専門コース認定取得
メディア出演多数。2014年日本助産師学会中国四国支部で特別講演の座長を務める。150人以上の女性医師(医科・歯科)が参加する「En女医会」に所属。ボランティア活動を通じて、女性として医師としての社会貢献を行っている。