「今、"防振双眼鏡"が熱いんです」と、編集部のデジタル家電担当がささやいてきた。新製品の発売を紹介した記事がSNSで拡散されているというのだ。
キヤノン、防振双眼鏡に強力な手ブレ補正機能「パワード IS」搭載 https://t.co/l9nkEvSc5p
— 【公式】マイナビニュース (@news_mynavi_jp) 2017年8月2日
防振双眼鏡とは、手ブレ補正機能のついた双眼鏡のこと。昨今のライブエンタメの盛況のためか、東京ドームなどの大型ライブや、舞台観劇時に愛用している人が多く、市場も伸びてきているらしい。今回、発端となった双眼鏡の商品企画を担当しているキヤノン ICB光学事業部の家塚さん、島田さんに話を聞いた。
バードウォッチング用の機能が思わぬところでヒット
――防振双眼鏡という存在に驚いたのですが、製品としてはいつごろからあったのですか?
家塚:1995年です。当時、家庭用のビデオカメラに手ブレ補正の技術が入ってきた時代でした。キヤノンの場合、2枚のガラスの間を蛇腹でつなぎ、特殊な液体を入れて、それ自体をプリズムにする、バリアングルプリズム(VAP)という技術を使っていました。プリズムの角度が自在に変化することで手ブレを防止するのです。
この、ビデオカメラ用の手ブレ補正技術を使って新しい製品を作りたいという、どちらかというと技術的な発想からできた製品でした。私どもの部門は一眼レフの交換レンズを作っていましたので、そのレンズの技術が防振双眼鏡の開発に使えるのではないか、と思ったのです。
超望遠レンズを作っている開発センターのメンバーが設計しているので、いろいろな光学技術のノウハウを防振双眼鏡の開発に活かしています。双眼鏡の世界は長年大きな技術的な進化はなかったのだと思いますが、そこにエレクトロニクスの技術を入れて防振双眼鏡を作りました。光学技術と電気工学技術の両方を持っているという、キヤノンの強みを活かした製品が誕生しました。
――確かにもう、カメラに近いですよね。
島田:撮影機能はありませんが、カメラメーカーのノウハウが活かせていると思いますね。
――使い方として想定していたのは、やはりバードウォッチングだったんですか?
家塚:そうですね。当時はインターネットで用途を検索すると、バードウォッチングか天体観測がほとんどでした。星が趣味の方の中には、手ブレを抑えるために、双眼鏡を三脚に固定して使われる方もいらっしゃいますが、バードウォッチングの方の多くは手持ちで使われます。
ところが手持ちの場合、しっかりと双眼鏡を構えても、手ブレを抑えられるのは8倍くらいが限界で、持ち方が上手な人でも10倍が限界だと思います。防振双眼鏡は手ブレが補正されるので、10倍、12倍でも手持ちでストレスなく使えるのです。
島田:手ブレ補正のない双眼鏡で満足されている方も多いと思うのですが、手ブレ補正の「あり」と「なし」を実際に比べて、違いを実感される方が増えているのだと思います。
――持ち方も手ブレに影響するんですね。
家塚:構え方とか、脇の締め方とか、大事ですね。