JR西日本は19日、新幹線車両の台車に亀裂などが発見された重大インシデントについて、詳細を公表した。12月11日の「のぞみ34号」に使用され、名古屋駅で運転取りやめとなった同社所有のN700系は12月18日までに車両所に収容されている。
通常ダイヤの東海道・山陽新幹線上り「のぞみ34号」は博多駅13時33分発・東京駅18時33分着、N700系16両編成で運転。12月11日の同列車に関して、JR西日本はこれまでに把握している事実として、「小倉駅発車時、7、8号車付近でパーサーおよび客室乗務員より『焦げたようなにおいがする』との申告があり、車掌による車内点検を行いました」「福山~岡山駅間走行中、パーサーがお客様(30代男性)から13号車車内にモヤがかかっている旨の申告を受けました」と説明している。
岡山駅から車両保守担当社員が添乗し、確認したところ「13~14号車間で『うなり音』を確認しましたが、指令員とのやりとりのうえ、指令員が走行に支障するような音ではないと認識し、運転を継続しました。においは若干ありましたが、継続的なものではございませんでした」「車掌は、においがしたりしなかったりという状況だったとのことであり、運転に支障がある状況とは認識しておりませんでした」とのことだった。
その後、走行中に異臭と床下からの異音を認めたため、17時3分頃に名古屋駅で床下点検を実施。13号車の歯車箱付近で油漏れを確認したことから、「のぞみ34号」は前途運休となった。後に台車の亀裂や継手の変色も確認されている。今回、車両に関する事実として、13号車東京方の台車にて「台車枠の一部に亀裂」「継手(モーターの回転を歯車に伝達するためのもの)の変色および油脂の付着」「歯車箱(継手からの動力を車輪に伝える歯車を収めた箱)への油脂の付着」を確認したと説明している。
「本件は新幹線の安全性に対する皆様からの信頼を裏切るものと認識しており、日ごろ新幹線をご利用いただいているお客様をはじめ、関係する多くの皆様に、深くお詫び申し上げます」とJR西日本。当該編成はJR東海など関係機関の協力の下、12月18日までに名古屋駅14番線ホームから車両所に収容されたが、「これまでの間、列車に遅延を生じさせてしまいましたことを重ねてお詫び申し上げます」としている。
今後に関して、運輸安全委員会の調査に全面的に協力するとともに、JR西日本としても原因の調査を行い、把握した事実をもとに考えられる再発防止策を講じていくと説明。12月16日付けで「新幹線安全性向上委員会」を立ち上げ、原因究明と再発防止に向けた調査、対策の策定・実施を進めるという。
また、今回の課題認識として「車両の極めて重要な部位である台車に亀裂や油漏れを発生させたこと、運行中に異常を感じたにもかかわらず走行を継続させたことに、大きな課題があったものと重く受け止めています」とJR西日本。当該部位の目視による緊急点検は12月15日までに完了し、今後は原因究明に向けた調査を継続しつつ、仕業検査での目視点検、運用間合いの臨時検査、全般検査・台車検査でのより詳細な検査(当該箇所を重点検査箇所に指定)も行う。車上から台車の異常を検知できるような方法も検討する。
社員教育においても、「異常が無いことを確認できない場合は、躊躇無く列車を止めること」「『音、モヤ、臭い』等が複合的に発生した場合は、直ちに列車の運転を見合わせて車両の状態を確認すること」を徹底するほか、現地の状況がより正確に指令員に伝わるように、コミュニケーションツールの活用も検討する。