若い世代の方々は、「自分たちは、将来年金は満足にもらえない」と思っているようです。ここでは年金問題は取り上げませんが、それでは将来に向けて自助努力はどうしているのでしょうか。

もし年金制度が破たんする、あるいは最低限の生活もできないほど年金額が少なくなるのであれば、社会が不安定になり、金融商品での自助努力も難しくなります。国の制度より民間制度のほうが先に破たんするはずだからです。預貯金や金融商品への投資ではなく、収入を生む資産を確保する必要となりますが、それにはやはり資金が必要です。

まずは預貯金や金融商品でどう年金額を増やすかを考えてみましょう。預貯金や金融商品であれば、いずれまとまった金額になれば、収入を生み出す投資先に転用も可能です。

  • 年金額を増やすには

単純試算をしてみよう

物価上昇や投資や貯蓄の利息などを考えずに、単純に月々の年金額を増やすためには、いくらの原資が要かを単純計算して目安をつけてみましょう。設定条件は下記のとおりとします。20年間の年金額を30年間で準備するので、増やしたい金額の2/3の金額を月々プールすることになります。

設定条件
・65歳まで働く
・定年までに住まいのローンは完済する
・85歳まで生きると考えて、65歳からの20年間の年金を考える
・現在35歳とし、65歳までの30年間で原資をプールする
  • 毎月2万円のプラス:2万円×12か月×20年間=480万円
    月々蓄えるべき金額は480万円÷30年間÷12か月=1.33万円

  • 毎月5万円のプラス:1,200万円
    月々蓄えるべき金額は3.33万円

  • 毎月10万円のプラス:2,400万円
    月々蓄えるべき金額は6.66万円

国民年金・国民年金基金と比較してみよう

【国民年金】

自営業等の方の場合は、国民年金第1号被保険者として国民年金に加入することになります。平成29年10月現在の国民年金の保険料は16,490円です。40年間加入した場合の老齢基礎年金額は779,300円で月々約6.5万円です。上記設定と同条件の30年間の保険料支払いの場合の年金月額は約4.3万円となります。4.3万円の年金額のための貯蓄額は上記設定では、その2/3の約2.8万円ですが、実際の保険料は1.64万円で済みます。

老齢基礎年金の原資の半分は税金、残り半分が保険料ですので、自助努力よりは有利です。また国民年金に加入すると、万一の場合は遺族年金や障害年金などを受け取れる保険機能もありますので、まずは国民年金の保険料を支払うのが得策です。

【国民年金基金】

上記の通り、国民年金の年金額はそれだけで生活できる金額ではありません。そのために上乗せ制度として、国民年金基金があります。35歳0か月の男性の場合、国民年金基金に加入すると1口目は年金額が毎月2万円プラスとなり、掛け金は月々11,270円(保証期間なしB型の場合)となります。2口目以降は1口当たりの年金額は1万円で、掛け金は5,635円(終身・B型の場合)です。

2万円の年金額上乗せ原資は?

単純計算で毎月13,300円捻出する必要があります。このケースは毎月の生活費を見直し、節約することで生み出しましょう。喫煙者の場合は禁煙すれば簡単に生み出せそうです。

例:メビウス毎日1箱→440円×30日=13,200円
ペットボトル毎日1本150円→マイポットにすると月々の差額3,800円

5万円の年金額上乗せ原資は?

2万円の年金増額と比べれば一段とハードルが高くなります。少しずつ節約も必要ですが、思い切って何かをあきらめる必要があります。前出の設定で、5万円×12か月×2/3で、年間40万円ずつプールする必要があります。

例えばボーナス全額を原資にするなど思い切った生活改善が必要となります。ボーナスで購入予定のものはあきらめることとなります。しかし原則ボーナスはおまけの収入で、いつも保証されるものではありません。不確定な収入をあてにして生活を膨らませるのは考え物です。転職すればボーナスはないかもしれません。

今現在ボーナスがない場合も同様に、思い切った生活の引き締めが必要となります。50年前の4畳半に風呂トイレなしアパートで生活していた時期から比較すると、今は数段贅沢になっています。贅沢すれば、その分老後に困窮するのは当然です。

10万円の年金額上乗せ原資は?

老齢基礎年金を満額もらえる前提であれば、プラス10万円あれば何とか生活できます。持ち家でないと都会では苦しいですが、まったく不可能というわけではありません。

厚生年金加入者であれば、たとえ将来年金額が減ったとしても、プラス10万円はゆとりの老後資金となります。プラス10万円の年金を確保しようと思えば前出の設定で、単純計算で毎月約6.5万円ずつ蓄える必要があります。日々必要な貯蓄は老後資金だけでなく、教育資金や住宅資金もありますので、毎月相当余裕がないとプラス10万円の年金は確保できなくなります。

プラス10万円を考えると、やはり別途収入を考えるのがベストです。サイドビジネス、週末起業など、プラスアルファの収入の道を考えてみましょう。今は安定した収入があったとしても、これからの時代何が起きるかわかりません。

社会の変化に対応できる保険(別の収入源)をかけておくのは大切ではないでしょうか。できればその仕事は定年退職後も続けられるものであれば、年金の増額だけでなく、老後の収入も確保できることになります。当面の収入は多くなくても構いません。上記の節約等を併用すれば、月々5万円の年金増額のための原資約3.5万円あれば済みます。

将来の不安は、具体的に数値化し、同じく数値化した対処方法で、地道に確実に解消していくことが大切です。数値化して明確にしないと不安ばかり増幅します。今回は単純計算で数値化しましたので、実際はもう少し将来の変化を加味しなければならないでしょうが、少なくとも単純計算すらできていないのが普通でないでしょうか。どの時代も理不尽なことはあります。

新入社員で入社した時、私のひとつ上の世代は、女性は35歳定年という理不尽さでした。親の世代から聞いた話や住宅の仕事をして知るときに見聞きした戦後のどさくさの理不尽さは、想像を絶するものがあります。多くが財産を不法に奪われてきました。現在でも戦後の不法占拠が尾を引いているのです。それと比較すれば、今はさほどのこととは思えません。

■ 筆者プロフィール: 佐藤章子

一級建築士・ファイナンシャルプランナー(CFP(R)・一級FP技能士)。建設会社や住宅メーカーで設計・商品開発・不動産活用などに従事。2001年に住まいと暮らしのコンサルタント事務所を開業。技術面・経済面双方から住まいづくりをアドバイス。