毎年、ゴールデンウィーク、旧盆、そして年末年始が、鉄道をはじめとする公共交通機関がもっとも混雑する「繁忙期」と見なされている。曜日配列にもよるが、2017~2018年ならば、東京発の下りが12月29日、上りは1月3日が利用客数のピークとなることが予想される。
繁忙期になると、マスコミでは「下り『のぞみ○号』では、自由席の乗車率が150%に達した」といったニュースを流す。新幹線のような長距離輸送用の車両では、定員=座席の数だ。東海道新幹線のN700系は定員が1両100人前後であるため、乗車率150%ならば50人ほどが通路やデッキに立っている状態だ。こうなると、車掌や車内販売が車内を巡回することも困難である。
指定席は在庫が効かない商品
けれども、すべての列車が大混雑になるわけではない。マスコミは、いちばん極端なケースを流しているにすぎない。
ピークとなる日の朝夕などはともかく、それ以外の日や時間帯では、指定席が満席となる列車こそ多いものの、1人や2人なら何とかなるものだ。列車の指定席は払い戻しや変更が常に行われており、コンピュータシステムに戻された席が、しばらく次の買い手を待っていることが十分にありうる。
公共交通機関の座席は、いわば時間と空間を売っている。在庫が一切、効かない商品である。「12月31日の『のぞみ1号』、東京から新大阪まで、16号車1番A席」は、その日時、その列車、その区間にだけしか存在せず、空席のままであれば完全なロス。経費だけがかかり、収入は得られない。