埼玉県入間市と聞いて、あなたは何を思い浮かべるだろう。男性ならブルーインパルスのアクロバット飛行が人気の航空自衛隊入間基地「入間航空祭」、女性なら「色は静岡、香りは宇治、味は狭山」と言われる狭山茶の生産1位を誇る緑茶だろうか。だが今一番の注目スポットと言えば、やはりスナップレイスの「SNS映えスポットランキング! 2016」にもランクイン、埼玉の新名所となった「ジョンソンタウン」だろう。
近年は週刊ジャンプで連載中の漫画「暗殺教室」の作者・松井優征さん、「斉藤楠雄のψ難」の作者・麻生周一さんの出身地としても知られ、ふたりのコラボ漫画で話題となった架空の入間市名物「いるまんじゅう」も製品化され、ファンの間で話題を呼んだ。そんな「ジョンソンタウン」を歩いてみたい。
荒廃から一変! ずっと住みたい未来のまちへ
ジョンソンタウンは西武池袋線入間市駅から約1.4km、入間市の中心街に位置。約2万6,000平方メートルの敷地に1950年代建設の米軍ハウスを今に残し、現役の住宅や店舗として活躍している。一時はスラムと呼ばれるほど荒廃した街だったが、2002年から約10年をかけて再生事業「ずっと住みたい未来のまち」作りに取り組み、「子育てしたくなる」「何かやりたくなる」「ペットと共生できる」などのコンセプトを掲げ、米軍ハウスのDNAを受け継ぐ現代版ハウス「平成ハウス」35棟も整備した。
現在、79棟の建物に131世帯、210人が暮らし、約50店のレストランやカフェ、ショップや生活関連専門店などが営業する。ここは賃貸でありながら申請して許可が得られれば、自由にリノベーションもできる。住宅兼店舗としてカフェやショップを開業する人も多く、そのため移住してくる人も少なくない。
街のいたるところがフォトジェニック
入間市駅から徒歩で約18分、ジョンソンタウンに入ってまず目を引くのは、入り口あたりに置かれた年代物のスクールバスだろう。ここはフォトスタジオとなっており、その隣にはオーナーが米軍ハウスを改造、自らセレクトしたキッチン雑貨やインテリア用品が並ぶ、人気雑貨店「agatha(アガサ)」もある。
塀を作らず、統一感のある街並みを大切にした街区は道の両側に住人やオーナーがこだわった個性豊かな住宅や店舗が立ち並ぶ。79棟の建物の中には米軍ハウス以外にも1938年に日本陸軍の将校や下士官向けに建設された「日本家屋」も見られる。
街区の真ん中あたりには二軒長屋の日本家屋を生かした雑貨店「MiMi+MoM(ミミマム)」と「黒糖カフェKAFUU」がある。店の前に古びたドラム缶が置かれ、店頭にはオシャレな雑貨が並ぶ、ジョンソンタウンの顔とも言える通りだ。その先、北欧雑貨などを扱う雑貨店&カフェの「zakka&ateria Kiitos(キートス)」の目印は窓からムーミンが顔を出すツリーハウス。いずれも多くの観光客が足を止め、写真撮影を行うフォトジェニックなスポットだ。
またタウン内には花屋や美容室、パン屋、歯医者やマッサージ店のほか、オーダー家具店などの生活関連の専門店も充実。ダンススタジオや猫カフェまであり、食事や買い物だけでなく、こだわりの専門店巡りも楽しい。
街区内のショップ&レストランの位置を記したマップを参考に、店巡りや路地散策をしてみよう。ジョンソンタウンでは犬や猫を飼っている人も多く、歩いていると犬の散歩や路地を歩く猫たちに出会うこともある。
多種多様なグルメをオシャレ空間で
ジョンソンタウンは食も楽しみのひとつだ。レストランでは本格イタリアンから韓国料理、ステーキ、アジアン料理や餃子料理、カレー専門店など多様だ。隠れ家的なカフェや自家焙煎の珈琲店、焼き芋やクレープを味わえるカフェにも個性が見られる。
ジョンソンタウンのイメージに合わせた青いポストの隣に建つ「THE PORK SHOP」は、千葉県木更津市産で残留農薬ゼロの林SPFポークを100%使用した豚肉料理専門店だ。お店の入り口には葡萄棚があり、葉の下には丸まるとした葡萄の房が見える。柔らかな光が差し込むテラス席はペットと一緒に利用でき、デザイナーとセレクトした帽子や雑貨も扱っている。
ここではSPFポークを100%使ったハンバーグやとんかつ定食、生パスタのほか、サンドイッチやホットドック、デザートメニューも充実。ランチメニューはサラダ、スープ、ご飯が食べ放題となっており、ディナーやパーティでの利用も可能だ。豚肉料理の「塩胡椒グリル」(税込1,400円)では入間らしく、狭山茶塩&柚子胡椒を使ったメニューもある。
ついつい長居してしまう温かいカフェ
また、2017年新オープンの「THE SOUTH」はトレーラーハウスを活用したカフェだ。栗の木広場に置かれた銀色に光るエアストリーム社のトレーラーハウスの前にはテラス席、キッチンカウンターが置かれたトレーラーハウス内にはカウンター席やテーブル席もある。
店は12時オープンし、23時まで営業する。夜も楽しめる店として新たにオープンし、温かみのある手作り家具も魅力的なカフェ空間だ。ドリンクメニューにはコーヒー以外にもワインなど酒類、フードメニューにはバターミルクビスケットお酒に合うハムやソーセージなどもある。一番人気は肉や魚などをはさんだビスケットサンド(税別530円)はリピーター続出。全品テイクアウトもできる。
ここは居心地が良く、ずっとここにいたいと思うオススメのカフェだ。ジョンソンタウン散策の休憩などに立ち寄ってみてはどうだろうか。このほか、ジョンソンタウンは自分好みのレストランやカフェを探してタウン内を歩くのも楽しい。路地散策や雑貨屋巡りの合間にランチやカフェ巡りをしてみては。
入間市内には「三井アウトレットパーク入間」や一面に広がる約400ヘクタールの茶畑もある。人気の「いるまんじゅう」はショッピングモールのイオンでも買える。ジョンソンタウンに来たついでにこちらも一緒に廻ってみるのもいいだろう。
筆者プロフィール: 水津陽子
フォーティR&C代表、経営コンサルタント。地域資源を生かした観光や地域ブランドづくり、地域活性化・まちづくりに関する講演、企画コンサルティング、調査研究、執筆等を行っている。著書に『日本人がだけが知らないニッポンの観光地』(日経BP社)等がある。