AI(人工知能)がこれまで見逃していた太陽系外惑星を発見し、企業が人材採用や人事研修に活用し始めるなど、我々の日常を大きく変えつつある。企業に留まらず政府レベルの取り組みも進むなか、Microsoftは2017年12月13日(米国時間時間)、プレスイベント「Everyday AI」を米サンフランシスコで開催し、WordやExcel、Bingなど自社製品にAIを活用して、レベルアップを図ることを明らかにした。

同社EVP AI and Research, Harry Shum氏は、AIの技術革新が「研究」「製品」「活力」「プラットフォーム」「ビジネスソリューション」に影響を与えると説明する。

  • Microsoft EVP AI and Research

    Harry Shum氏

Microsoftは、これまでAIを活用したアプリケーションをいくつかリリースしてきたが、同イベントではスマートフォンのカメラを通じて内容や外見を読み取る「Seeing AI」(iOS版のみ。日本未公開)のアップデートや「LUIS(Language Understanding Service)」「Azure Bot Service」のGA(一般提供)化を発表。「24万人の開発者は我々のチャットボットを活用できる」(Shum氏)と説明した。

だが、我々エンドユーザーの関心を引くのは、すでにあるサービスのAI利用である。今回のイベントで同社は、AI能力を活用したBingのインテリジェント検索機能を発表した。

  • AI能力を活用したBingの新検索機能

    AI能力を活用したBingの新検索機能。筆者が確認した限りだが日本語版Bingは未対応である

「Intelligent Answers」「Intelligent Image Search」「Conversational Search」といった各機能は、Intel製FPGAを使った深層学習アクセラレーションプラットフォーム「Project Brainwave」の技術を応用し、会話型検索でも必要な情報を容易に取り出すことを実現する。

デモンストレーションでは、映画俳優の検索から得られる情報が増加したほか、絶対菜食主義者と議論するためにケールに関する情報を、Wikipediaなど各所からピックアップする検索方法を披露した。

  • 参照すべきサイトのサマリーやWikipediaなどを表示する

    「ケールの真実」と検索すると、参照すべきサイトのサマリーやWikipediaなどを表示する

筆者も同様の操作はBingで試してみたが、同機能が動作するのは米国版Bingのみである。この他にも「ヨガとピラティスの違い」を検索し、1つ1つリンク内容を確認するのではなく、知りたい情報を素早く得られる検索体験の向上を示した。

  • Intelligent Image Searchの利用例

    「Intelligent Image Search」の利用例として、ドレスに合うネックレスを探すデモンストレーションを披露。Microsoftは素早い検索で時間とコストを短縮できると語る

今回の発表ではRedditとパートナーシップを結んだことも明らかにしている。米国のソーシャルニュースサイトであるRedditは、ニュースやゲーム、音楽などさまざまなトピックに対して自由に議論を行う大型掲示板のような存在だ。

  • Redditの共同設立者Alexis Ohanian氏

    Redditの共同設立者Alexis Ohanian氏

MicrosoftはReddit内で注目が集まったスレッドやAMA(Ask Me Anything: 何でも聞いて)を検索結果として提示し、今後は別企業を経由してRedditのデータをPower BIでも利用可能にするという。

  • Bingの検索結果にはReddit経由の情報だと分かるアイコンを付与する

    Bingの検索結果にはReddit経由の情報だと分かるアイコンを付与する

Redditは英語圏を中心としているが、Bing日本語版で同機能を展開する際、どのようなパートナーを日本マイクロソフトが選択するのだろうか。国内の大型掲示板2ちゃんねる(現5ちゃんねる)は、分裂騒動や利用者の高齢化から、昔ほどの賑わいはなくなっているため、同社の判断に注視したい。

この他にもCortanaスキルセットのアップデートや女子高生AIりんな(中国ではXiaoice、米国ではZo!)の進捗、「フォト」の動画加工機能などを披露したが、やはり注目はOffice 365に加わるAI機能だ。

Excelには、抽出したパターンの強調表示や図表を提案する「Insights」が新たに加わる予定だ。Microsoftの担当者は今月のインサイダープログラムで本機能を公開すると説明する。

  • Excelの「Insights」機能

    Excelの「Insights」機能。図表は選択して、ワークシートに挿入できる

Wordには社内専門用語や略称を判別・定義する「Acronyms」が加わった。日本マイクロソフトの関係者によれば、米国本社も含めた同社は頭文字用語が飛び交っており、日本マイクロソフト本社が入る品川グランドセントラルタワーは「SGT」と称している。

  • Wordの「Acronyms」

    Wordの「Acronyms」。頭文字などの社内専門用語を判別・定義する機能

筆者は目にしていないが、社内には頭文字をまとめた非公式ドキュメントが存在するとかしないとか。そのためAcronymsに関しては、「自分たちが必要だから実装したのでは?」といぶかしんでしまう。

  • スマートフォン版Outlook

    スマートフォン版Outlookには、渋滞や事故などのリアルタイム情報を通知する機能が加わる予定だ

より詳しい情報と背景は今後日本マイクロソフトから説明があると思われるが、同社がAIに最注力してきた結果を改めて示したイベントだ。こちらはYouTubeに動画がアップロードされているので、ご興味を持たれた方は視聴することをお薦めしたい。

阿久津良和(Cactus)