「ゆったり空間電動マッサージ付きの夜行バス」と聞いて気になっていたのが、さくら高速バスの最上級クラス「さくらクオリティエクスプレス」だ。長時間のバス旅において、身体をほぐしながらくつろげるという環境はありがたい存在だろう。早速、体験してみた。
深夜でも安心なバスタ新宿発
さくらクオリティエクスプレスが導入されているのは、東京(新宿/秋葉原)=名古屋線の夜行バスだ。新宿24:15発/秋葉原24:50発⇒名古屋南6:30着、または、名古屋22:30発⇒新宿4:50着/秋葉原5:20着なので、車内で過ごす時間は5時間40分~6時間50分程度となる。通常プランは4,700円から、早期割引だと2,840円から展開している(価格は時期によって変動)。今回は新宿から利用した。
新宿のバスターミナルと言えば、2016年4月に開業したバスタ新宿である。開業後約1年間で、累計利用者数が1,000万人を突破。周りを見てみると外国人の姿もあるのだが、分かりやすい案内掲示板やカラー展開で導線もしっかり確保されているように感じた。また、トイレやベンチの増設や、コンビニの新設など、運用しながら利便性向上も図られている。乗車時間は24:15という深夜であっても、安心して過ごせる。
マッサージのほどよい刺激から眠りへ
さくらクオリティエクスプレスは縦7列で横2×1列という仕様のため、ひとり利用でも、ペア利用でも両方に対応可能。それぞれの席の間にパーソナルカーテンが設けられているので、プライベート空間も確保できる。
前列とのシートピッチは97cmと広く取られており、シートは座面幅70cmに奥行き50cmの広さがある。また、ボタンひとつでシートは140度までリクライニングが可能。横で見ていると、もう少しリクライニングできた方がいいかもと思いつつだったが、実際に座ってみると、周りに十分な空間が確保されていることもあり、寝る空間としてぴったり収まるような印象を受けた。
車内はWi-Fi(無線LAN)対応。基本的に車内では寝るだけになるだろうが、テーブル、ドリンクホルダー、コンセント、ブランケット、読書灯(窓側のみ)を備えているので、寝る前の読書やちょっとしたPC作業などにも不自由ない環境と言えるだろう。秋葉原に到着するまでは車内はまだ明るく、秋葉原到着後は間もなく消灯となる。早めに寝たい人は、アメニティーとして用意されているトラベルピロー、アイマスク、スリッパ、耳せんを早速装着するといいだろう。
眠る前に、やはり電動マッサージは体験しておきたい。マッサージは基本的に背中と腰が中心で、「Step」「Full」「Auto」の3タイプから選べるようになっている。Stepはステップを踏むようなリズムで、Fullは一定のリズムで、Autoはその両方を組み合わせたようなマッサージとなる。
始めは、静かな車内でマッサージの音が隣の席で漏れていないかと気になったが、音は身体への振動で大きく聞こえるような気がするだけで、特に音漏れの心配はなさそうだった。強度は強くないので、ちょっとほぐして身体を休めるという意味ではちょうどいいように思えた。個人的には、車内でむくみやすい足のマッサージもできたらなおいいと感じたが、今後、さらに改良されることに期待したい。
走行中、2回程度トイレ休憩とドライバー交代があったようだが、それに気付くことなくぐっすりと眠れた。満席でも一般客席は20席だけという環境もあってのことだろう。
+2,000円で身体にもおいしい朝食を
もうひとつ、さくら観光のサイトを利用するメリットがある。名古屋南から名古屋駅までは歩いて15分程度。名古屋南のバス停に到着するのは6時30分頃だが、この時は6時15分頃に到着した。そこから早朝よりオープンしている飲食店を探すもの面倒だろう。そこで、よりリラックスしたサービスの提供として、バス停の側にある「ストリングスホテル名古屋」と提携した朝食プランを、さくら観光は展開している。
シックなデザイン空間の「ストリングスホテル名古屋」は、健康をクリエイトするための趣向がゲストルームやレストランなどに施されており、もちろん、一日をスタートする朝食においても、そのこだわりが随所に見受けられる。
朝食会場の「シェフズライブキッチン」では、"ヘルシー・ビューティー・フレッシュ"をコンセプトに、ライブ感あふれる和洋中のブッフェを提供。広々とした空間の中心にはカウンターキッチンが設けられており、シェフが目の前で料理を仕上げる。アルガンオイル入りオムレツや、カスピ海ヨーグルト、国産小麦100%の天然酵母パンなど、身体が喜ぶメニューがずらりと並ぶ。彩の美しい野菜の側には、月替わりのシェフ自家製ドレッシングが控えている。
名古屋に来たのであれば、やはり名古屋メシも食べたいところ。セルフスタイルの鶏味噌煮込みきしめんのほか、赤だしのみそ汁も用意している。また、パンの側にはあんこが用意されているので、自分で名古屋名物の小倉トーストを作ってみるのもいいだろう。
オレンジジュースや野菜ジュースなどに加えて、炭酸とシロップで作るオリジナルノンアルコールもなんだかオシャレ。早朝からの朝食ならば、食後のコーヒータイムも十分にあることだろう。窓からはニューヨークのセントパトリック教会をモチーフとした「アートグレース大聖堂」も楽しめ、とても優雅な気持ちになってくる。
この朝食は通常2,900円だが、さくら観光サイトでバスと一緒に予約すると2,000円で利用できる。また、朝食利用者は名古屋駅までの無料シャトルバスも利用可能で、朝食時間(6:30~10:00・最終入店9:30)は20分おきに運行されている。名古屋駅までは歩いて10分程度ではあるが、大きな荷物がある時や雨の日などはありがたい存在だろう。
東京=名古屋間の新幹線だと2時間程度で価格は1万円程度となる。夜行バスは、深夜時間の活用や交通費と宿泊費の節約というメリットがあるが、その中に快適性が加わるのであれば、あえて夜行バスを選ぶという選択がより身近なものになるだろう。その意味でも、さくらクオリティエクスプレスは十分、メリットの大きい選択肢のように思えた。