国立がん研究センター がん対策情報センターはこのほど、「紙巻タバコの禁煙方法と有効性に関する調査」の結果を明らかにした。同調査は過去5年間に紙巻タバコの禁煙施行者798名を対象にインターネットで実施したもの。
日本でも禁煙目的として販売されている「電子タバコ」だが、その禁煙効果については、世界的に意見が分かれているという。
電子タバコの支持者は、電子タバコが紙巻きタバコの健康影響を減らす潜在的可能性を持っていると主張しているが、電子タバコに批判的な者は、電子タバコは喫煙者の禁煙意欲を失わせ、社会全体で見ると、タバコの使用を増加させるリスクがあると主張しているとのこと。そこで今回、電子タバコの禁煙の有効性を確認することを目的に調査を実施した。
調査の対象者となったのは、過去5年間に禁煙に取り組んだ20~69歳の禁煙施行者798名。禁煙方法(電子タバコ、禁煙外来の受診、禁煙補助剤、ニコチンを含まない薬の処方など)と禁煙の成功者数/失敗者数をもとに分析した。
その結果、電子タバコ使用による禁煙の有効性は低いことがわかった。電子タバコを使用した人は、使用しなかった人よりもタバコをやめられた人が38%少なく、電子タバコが禁煙の成功確率を約1/3低下させていることが示されたという。この1/3低下という結果は、米国等海外で分析、評価されている既報報告のメタ解析結果と一致しているとのこと。
一方、禁煙外来を受診して、薬物療法(ニコチンを含まない薬の処方)を受けた人では、禁煙の成功確率が約2倍になっていることも明らかとなった。今回の調査は断面調査であり、さまざまな調査上の限界や制約はあるものの、電子タバコによる禁煙の有効性を否定する結果が示される形となった。
同センターは今回の結果から、「電子タバコが喫煙の全体的な減少に大きな貢献をする可能性は低く、禁煙の手段として推奨または促進すべきではない」としている。
多くの電子タバコは「電子タバコで禁煙」などと宣伝されているが、製品説明の中に禁煙成功の効果を発揮するための用法、用量が示されていないものも多いとのこと。医療関係者からの指導や支援とも関わりがないため、「禁煙外来の受診など、医学的に証明された禁煙方法と同様に電子タバコを扱うことはできない」としている。