米労働省が12月8日に発表した11月雇用統計の主な結果は、(1)非農業部門雇用者数21.8万人増、(2)失業率4.1%、(3)平均時給26.55ドル(前月比0.2%増、前年比2.5%増)という内容であった。
(1) 11月の非農業部門雇用者数は22.8万人増加して市場予想(19.5万人増)を上回った。失業率を継続的に低下させるために必要とされる15~20万人増を2カ月連続で上回っており、8月から9月にかけて米南部を襲ったハリケーンの影響は完全に消えたと考えられる。3ヶ月平均の増加幅も17.0万人に上向いており、米労働市場が堅調である事を示す結果と言えそうだ。
(2) 11月の失業率は前月に記録した2000年12月以来の低水準である4.1%から横ばいとなり、市場予想と一致した。ただ、労働参加率も62.7%と低位のままであり、労働人口の増加が確認できない点はやや気がかりだ。なお、正規雇用を望みながらもパートとして働いている人を含めた広義の失業率(不完全雇用率)は8.0%となり、11年ぶりの低水準を記録した前月の7.9%からわずかに上昇した。
(3) 9月の平均時給は26.55ドルとなり、前月の26.50ドル(26.53ドルから下方修正)から0.2%増加。前年比では2.5%増えた。しかし、伸び率はいずれも市場予想(0.3%増、2.7%増)に届かなかった。前月分の下方修正も考慮すると、今回の賃金の伸びはやや物足りない結果であり、雇用の拡大ペースに比べると賃金の上昇ペースは鈍いと言わざるを得ないだろう。
米11月雇用統計では、物価上昇の先導役である賃金の伸びが力強さを欠いた事から、来年の利上げペースが緩やかになるとの見方も一部で浮上したようだ。それでも、今月12-13日の連邦公開市場委員会(FOMC)で利上げが見送りになる事はないとの見方が大勢を占めた。こうした中、ドルは雇用統計の発表直後こそ円やユーロなどの主要通貨に対して弱含んだが、発表前の上昇分を吐き出すには至らず堅調を維持した。一方、米国債利回りはおおむね横ばいの動きとなった。また、米国株はNYダウ平均などの主要指数が軒並み上昇して取引を終えた。米11月雇用統計に対する市場の反応は総じてマイルドなものだったと言えるだろう。
執筆者プロフィール : 神田 卓也(かんだ たくや)
株式会社外為どっとコム総合研究所 取締役調査部長。1991年9月、4年半の証券会社勤務を経て株式会社メイタン・トラディションに入社。為替(ドル/円スポットデスク)を皮切りに、資金(デポジット)、金利デリバティブ等、各種金融商品の国際取引仲介業務を担当。その後、2009年7月に外為どっとコム総合研究所の創業に参画し、為替相場・市場の調査に携わる。2011年12月より現職。現在、個人FX投資家に向けた為替情報の配信(デイリーレポート『外為トゥデイ』など)を主業務とする傍ら、相場動向などについて、WEB・新聞・雑誌・テレビ等にコメントを発信。Twitterアカウント:@kandaTakuya