「WIRED」日本版とアウディは、さまざまな分野で革新的な取り組みを続けるイノベーターを顕彰する「WIRED Audi INNOVATION AWARD 2017」を開催した。2回目となった今回は、音楽家の坂本龍一氏など30組を選出して表彰式を実施。このイベントに協賛するアウディに思いを聞いた。
ブランド理解を深める機会に
「WIRED Audi INNOVATION AWARD 2017」に選出されたのは坂本龍一氏のほか、「塊魂」などを手掛けたゲームデザイナーの高橋慶太氏や「ブレードランナー2049」にも参加している3DCGコンセプトアーティストの田島光二氏、エヴェレスト登頂と7大陸最高峰(セブンサミッツ)の日本人最年少記録を打ち立てた冒険家の南谷真鈴氏など。受賞者の中で、自動車に関連する取り組みが顕彰されているのは、中古車の部品販売において、自動車解体から部品販売にいたる世界規模のシステムを構築した会宝産業代表取締役会長の近藤典彦氏くらいだ。
こういったイベントに、アウディが協賛しているのはなぜか。アウディ ジャパンでマーケティング本部長を務めるシルケ・ミクシェ氏は「スポンサーシップがすぐにクルマの販売に結びつくわけではないが、ブランドを知ってもらうためにはいい機会だ。日本では欧州に比べ歴史が短く、そこまでアウディのブランドが浸透していないとも思うので」と話す。
自動車業界のトレンドは「所有」から「使用」へ
「クルマ自体の技術に関心がない人でも、アウディのブランドには共感してもらえるかもしれない。そういったターゲット層にリーチすることもできる」とも語ったミクシェ氏。この言葉を聞いて思い出したのは、アウディなどのプレミアムカーブランドにとって、顧客層の若返りが課題となっているという話だ。年配のアウディファンが、クルマの技術的な側面に無関心とは思えない。おそらく、ミクシェ氏が言及しているのは若くて、将来的にアウディの顧客になるかもしれない人達のことだろう。
「(クルマの)所有から使用へという流れが進めば、ブランドの持っている世界観やライフスタイルが今以上に大事になる」。ミクシェ氏はカーシェアリングの進展により、クルマが買って所有するモノから必要な時にだけ使うモノへと変化していくかもしれない現状を踏まえ、ブランド戦略の重要性を語った。確かに、シェアリングで使うクルマを選ぶ場合は、メンテナンスのしやすさなどの現実的な側面よりも、そのクルマが好きであるとか、一度は乗ってみたかったとかいうような理由で判断しそうなので、ブランドイメージは大事になるだろう。
ブランドで若年層に訴求するには、プレミアム感の他にもさまざまな見せ方が必要になる。そういった意味で、多様なジャンルから気鋭のイノベーターを選んで顕彰する今回のイベントは、アウディブランドへの間口を広げる取り組みとして効果的なのかもしれない。