この10月に、ソフトバンクが働き方改革の一環として、社員の副業を解禁すると発表した。ただ、副業解禁となっても、「自分は何をしたらいいのか」と悩む社員も多いだろう。そうした副業の選択肢のひとつに派遣社員はどうかという意見がある。

仮に、筆者が勤める会社で副業が解禁されたら、ほかの企業でのライターという道が拓ける。ただ、その場合、立場はあくまでフリー。請け負った仕事の原稿料が買いたたかれる場合もあるし、最悪、入金されないことも考えられる。まあ、そうした事態にはなかなか遭遇しないだろうが、可能性としては0%ではない。

マッチングッド 代表取締役 齋藤康輔氏

派遣社員の労務管理や人材派遣会社をチェックするシステムを提供する、マッチングッドの代表取締役 齋藤康輔氏は、「これからは、副業を解禁する企業が増えていくと思います。その際、アルバイトやフリーではなく、派遣を選んでみては」と提案する。たとえば、ウィークデイは正社員として勤め、土日は派遣社員として働くということだ。

実際には、1週間まるまる働くというのは体力的にきついし、それこそ働き方改革に逆行してしまう。だが、アルバイトやフリーで副業するよりも、派遣社員のほうが何かと保障されている。

また、こんな例もある。筆者が紙媒体(雑誌)の副編集長を務めていたとき、フリーの立場で編集部に常駐していたスタッフがいた。彼に正社員になることを勧めてみたところ、見事に断られた。理由をうかがうと、「士業」を目指すために勉強する時間がほしいとのこと。そして彼は試験に合格し、自己実現に成功した。

都合のよい時間で働きたいが多数

厚生労働省のデータによると、「非正規雇用の労働者を選んだ理由」において、「自分の都合のよい時間に働けるから」がもっとも多く38.8%。続いて「家計の補助、学費等を得たいから」が33.2%、「家庭の事情(家事・育児・介護等)や他の活動(趣味・学習等)と両立しやすいから」が24.5%だった。「正社員として働ける会社がなかったから」は、22.3%である(いずれも2010年データ)。

前出の齋藤氏は、「ライフスタイルが多様化していること、同一労働・同一賃金という考え方少しずつ浸透していることなどが背景にあるのではないか」と指摘する。もちろん、福利厚生面は正規雇用者にはおよばない。ただ、「自分の時間を大切にしたい」という考えから、あえて非正規を選ぶ人が増えているのだそうだ。

なお、同社は各派遣会社に導入したシステムにより、600万件のビッグデータを保持しているそうだ。「この人はこういう仕事に向く。この人はある仕事でミスをした」といったデータをもとに、次の勤め先を派遣会社に推奨するのだという。

いずれにせよ、非正規雇用という道が存在感を増しているようだ。