猫は人によって大きく評価が割れる動物だと感じます。実際にあるアメリカのアンケートでは、犬が嫌いと答えた人は2.6%だったのに対して、猫が好きになれないと回答した人は17.4%になりました。犬は忠誠心があり社交的なので多くの人に好まれますが、猫は服従心に欠け支配されることを嫌うのが大衆に好かれない理由かもしれません。
一方で、猫好きな方は強い愛情を注ぐ方も多く、たくさんの猫に囲まれた猫中心の生活を送る方もいます。私も猫専門病院を開業するほど猫に魅了された一人でもあります。そのため猫と人の関係は時代や土地によってさまざまです。今回はそんな猫の歴史的背景を見ていきましょう。
かつて猫は●●だった……!?
神の化身
エジプトの歴史の中で最も古い時代からバステート神は、都市ブバスティスの中心的な存在でした。もともとバステート神というのは「都市ブバスティス(バステート)の女神」という意味で地名から付けられたと考えられています。いつからか猫がバステート神の化身とみなされるようになりました。
バステート神は多産、安産、養育の象徴とされていました。この時期の猫の地位は現在のインドにおける牛と同じようなもので、多くの人々が猫を飼い、猫が死んだ場合は家族全員で喪に服し、弔意を表す意味で眉毛を剃っていたそうです。
悪魔の使い
キリスト教が生まれ、広まっていくにつれてヨーロッパで猫に対する考え方が劇的に変化していきました。それまで安産や養育の象徴とされていた猫が、悪魔の使い、裏切りの象徴といったように全く反対のものになってしまったのです。
一説ではキリスト教がそれ以前の古い宗教を鎮圧するため、それまでの宗教のシンボルであった猫を悪魔の使いとしたと考えられています。猫の自分勝手な性格もそのイメージに拍車をかけました。
No.1 ペット
ヨーロッパでは不遇の時を過ごした猫ですが、その後の近代化により猫に対する恐怖は薄れ、現代のようにコンパニオンアニマル(ペット)として暮らすようになります。今では猫は世界中で最も飼育頭数が多いペットになっています。多忙な現代人とって手のかかりにくいん猫は最適なパートナーとして受け入れられるようなったのでしょう。
まとめ
猫はその性格と行動から、異なる解釈をされてきました。古代エジプトでは母性の女神であるバステート神の象徴として、反対に中世ヨーロッパでは悪魔の使いとして迫害の対象になることもありました。しかし現在では猫の自立性や自由な振る舞いはポジティブに捉えられ、最も人気なペットになりました。日本でも猫の飼育頭数が犬を超えることは確実と考えられており、より身近な存在になっていくでしょう。
参考資料:「ドメスティックキャット―その行動の生物学」チクサン出版
※写真はイメージ
山本宗伸
獣医師。猫の病院 Syu Syu CAT Clinic で副院長を務めた後、マンハッタン猫専門病院で研修を積み帰国。現在は猫専門動物病院 Tokyo Cat Specialistsの院長を務めている。ブログ nekopeidaも毎月更新中。