「アドミュージアム東京」(東京都港区)は12月1日、リニューアルオープンした。開館15周年を迎え、もっと一般の人に広告の面白さを知ってほしいという想いから、「plain・simple・warm」をテーマに全館リニューアルしたという。生まれ変わったアドミュージアム東京の魅力を、展示のポイントとともに紹介しよう。

  • 「アドミュージアム東京」は、「plain・simple・warm」をテーマにリニューアルした

アドミュージアム東京って何があるの?

白を基調とした明るい館内の同ミュージアム。1階の常設展示室に入ると、まず最初に目を引くのは、白い雲のような謎の物体だ。オブジェかと思いきや、反対側に回ると、なんと入口がある!

  • 突然現れる謎の白いオブジェ

  • 謎のオブジェの正体は試聴ブース!

実はこれ、CMの試聴ブースなのだ。時代は変わっても、広告の普遍的なテーマは「人の心を動かす」というところにある。そこで、この試聴ブースでは「4つのきもち」として、びっくりする広告・考えさせられる広告・心あたたまる広告・元気がでる広告の4つに分けてCM動画を展示している。また試聴できるCMは、今後も変更を予定している。

  • 無数の広告がゆらゆら……

次に、中央にあるテーブル。覗いてみるとたくさんの広告がゆらゆらと漂っている。そして、テーブルの中央に立ってみると……

  • テーブルの中央に立つと、ゆらゆらしていた広告が整列する!

漂っていた広告たちが整列した! このテーブルはタッチパネルになっており、気になった作品を選んで閲覧したり、検索したりすることができる。2017年12月時点で、デジタルコレクションとして約2,000点の閲覧が可能だ。

  • デジタルだけじゃなくアナログ展示も多数展開

さらに、アナログコレクションとして、CM制作に使用された絵コンテなどの資料も展示している。

  • CM制作のために用意された絵コンテ

2階は、日本で唯一の広告コミュニケーションに関する専門図書館。こう書くと、広告業界の人が資料探しにくるような場所をイメージする人も多いかもしれないが、実際はもっとオープンな場所だ。図書館の一角には、GINZA SIXの蔦屋も協力し、毎回テーマを変えて選書するという特集コーナーも設置しており、スタジオジブリでおなじみの宮崎駿氏の本や建築家の本、さまざまな絵本など、幅広い選書が魅力的だった。

  • 図書館は明るく開放的な空間だ

  • 特集コーナーの選書には、GINZA SIXの蔦屋も協力している

常設展「ニッポン広告史」

1階の常設展示室の壁には、江戸時代から現代までの広告を6つの時代区分で構成した「ニッポン広告史」を展示している。各時代の先頭には概要をわかりやすくまとめた2分間ほどの動画が用意してあるので、広告に詳しくない人でも安心だ。

  • 「ニッポン広告史」は江戸時代からスタート

早速見てみると、「世界初!? の天才マーケター」という興味をそそられるキャッチコピーが! 担当者によると、実際、マーケティングが理論として確立していなかった江戸時代の広告やマーケティングはとても発達していたそう。

  • 錦絵「駿河町越後屋 店頭美人図」

例えば、錦絵「駿河町越後屋 店頭美人図」に登場する美女の着物は新作デザイン。当時、錦絵は庶民のための美術品であると同時に、現在でいうファッション誌やポスターの役割も果たしていた。

  • 江戸時代の看板も展示している

また、マーケティングの原点とも言える「看板」。江戸時代の看板は、文字が読めなくても何屋かわかるようなデザインが取り入れられていたそう。実際に展示している看板を眺めていると、こんな看板が通りに並んでいたなんて、江戸の街並みってすごくオシャレだったんだろうなあと想像が膨らむ。

  • 「江戸名物当時流行双六」

すごろくとして配布されたという「江戸名物当時流行双六」も、実は広告。お店側が制作費を補助し、楽しく遊べる広告として仕上げたのだそう。現在でいうタイアップの原型とも言えるものが、江戸時代にはすでに存在していたということだ。ちなみにこのすごろくには、現在でも営業している店名も残っている。

広告にも文明開化の音がする

「広告にも文明開化の音がする」というコピーの通り、明治時代に入ると広告はガラッと変わる。モデルが洋装になったり、輸入された顔料を使用することで色も鮮やかに出せるようになった。

  • 明治時代に入ると広告がガラッと変わる

スタークリエイターの誕生

大正時代になると、西洋から写真や出版の技術が取り入れられ、企業にも宣伝部などが設置されるようになる。アイディアが競い合われるようになる中で、今も色あせないデザインを生み出したスタークリエイターたちの作品も展示している。

  • スタークリエイターの特集も

広告「冬の時代」から戦後復興~高度経済成長へ

戦争が近づくにつれ、商品広告は減少し、戦意高揚を目的とした宣伝色が強まる。この時期を、広告の「冬の時代」と呼ぶ。そして、戦後復興を経て高度経済成長へ突入すると、ラジオ・テレビの登場で、テレビが広告メディアの主流に。あのヤン坊マー坊のCMも見ることができた!

  • 広告の「冬の時代」から戦後復興の希望を感じる広告へ

  • ヤン坊マー坊の若き頃!

  • ポスターも写真を取り入れたものが多くなる

「ニッポン広告史」は、広告のデザインの変遷を楽しむことはもちろん、広告が人々の生活に寄り添うものだからこそ、その時代を反映しているものだと教えてくれる展示だった。

  • 白い肌が主流だった日本に、新しい女性美を作った資生堂のキャンペーン

特別企画展「思いつく」を考える展

同館は2018年2月24日まで、オープニング特別企画展「『思いつく』を考える展 のぞいてみよう、アイデアの裏側」を実施している。

  • 「『思いつく』を考える展 のぞいてみよう、アイデアの裏側」

同展は、「うんこ漢字ドリル」や「SNOW」といった話題のヒット作などを生み出したアイデアの裏側を探るもの。かくしてみた・くっつけてみた・いれかえてみた・くらべてみたなど、独自に分類した9つのテーマごとに思考の過程に迫る。

  • ヒット商品の裏側とは?

  • 「うんこ漢字ドリル」誕生の裏側も!

  • 考えることのヒントが見つかるかもしれない

担当者は、「広告自体は私たちの生活に根付いているものなのに、広告業界というと、なぜか少し壁を感じてしまう人もいると思う。しかし、ヒット商品の広告を作っているのは特別な人ではなく、みんなと同じような人が、閃きだけではなく、努力をして作ったということを伝えたい」と話す。

歴代の広告を通して、その時代や制作の裏側に思いを馳せてみるのもよし、現代のヒット広告から新しい発見や考え方のヒントを見つけるもよし。ぜひ、新しくなった「アドミュージアム東京」で、広告の面白さを体験してみてほしい。

「アドミュージアム東京」へのアクセスは、地下鉄都営大江戸線「汐留」駅新橋駅方面出口より徒歩1分。開館時間は火~土曜が11~18時、休館日は日曜と月曜。入館料は無料となる。