外為どっとコム総合研究所の神田卓也氏が2017年11月の為替相場レビューと、今後注目の経済指標やイベントをもとにした今後の相場展望をお届けする。
【11月のドル/円相場振り返り】
11月のドル/円相場は110.843~114.732円のレンジで推移(ドル安・円高)。10月のドル反発の流れを引き継いで、米10月雇用統計発表の翌営業日には114.732円まで上昇した。しかし、米税制改革法案の年内成立に不透明感が広がった事や、米インフレに加速の兆候が見られない中で米長期金利が低下に転じた事が重しとなり、15日には113円台を割り込んだ。
その後も、米感謝祭休暇(23-26日)を前に、ポジション調整と見られるドル売り・円買いが優勢となり、22日には112円台を下抜けた。さらに27日には、北朝鮮がミサイル発射の準備を行っているとの報道もあって111円台も割り込んで110.843円まで下落した。ただ、月末が接近するにしたがって買戻しが入り、29日には112円台を回復した。
【12月のドル/円相場見通し】
12月12-13日に行われる米連邦公開市場委員会(FOMC)では今年3回目となる利上げが濃厚だ。シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)のフェド・ウォッチによると、0.25%のFF金利引き上げを市場は90%超織り込んでいる。このため、利上げに強く反応してドルが上昇する公算は小さいだろう。市場の関心も利上げの有無より来年の利上げペースに向かうと考えられる。
声明と同時に発表される「経済・金利見通し」や、イエレン米連邦準備制度理事会(FRB)議長の会見により注目が集まろう。FRBに関しては、次期議長こそパウエル理事に決まったが(議会は未承認)、本稿執筆時点で副議長も含めた7理事のうち3つのポストが空席という異例の事態が続いている。FRB指導部の人事も、12月相場の焦点のひとつになりそうだ。また、市場の関心が高い米税制改革についても、本稿執筆時点で上院を通過できていない。無事に上院を通過しても、下院案との相違を埋めるために両院協議会を開催した上で、修正案を作成。それを各院に持ち帰ってもう一度採決する必要がある。12月17日までの会期中に成立させられるかは予断を許さない。12月のドル/円相場は、これらの材料に神経質に反応しながら、2018年の着地点を探る事になりそうだ。
執筆者プロフィール : 神田 卓也(かんだ たくや)
株式会社外為どっとコム総合研究所 取締役調査部長。1991年9月、4年半の証券会社勤務を経て株式会社メイタン・トラディションに入社。為替(ドル/円スポットデスク)を皮切りに、資金(デポジット)、金利デリバティブ等、各種金融商品の国際取引仲介業務を担当。その後、2009年7月に外為どっとコム総合研究所の創業に参画し、為替相場・市場の調査に携わる。2011年12月より現職。現在、個人FX投資家に向けた為替情報の配信(デイリーレポート『外為トゥデイ』など)を主業務とする傍ら、相場動向などについて、WEB・新聞・雑誌・テレビ等にコメントを発信。Twitterアカウント:@kandaTakuya