KDDIは29日、ドローンを活用したビジネスモデル構築を目指した「スマートドローン構想」において、新たにウェザーニューズと提携したことを発表した。今後、構想に基づいてウェザーニューズの気象情報を活用したドローンビジネスの実現に向けて取り組んでいく考えだ。
スマートドローン構想は、KDDIのモバイル通信ネットワークを利用してドローンを遠隔制御し、より安全に長距離を飛行できるようにすることで、さまざまな分野でドローンを活用しようというもの。ネットワークとしては既存の4Gに加え、今後5Gの利用も想定する。農業や測量、点検、災害、警備、配送の各分野での利用を想定して構想が進められている。
このスマートドローン構想を実現するためのプラットフォームとして、KDDIのネットワークに加え、ドローンの機体、3次元地図、運行管理、クラウドが必要だとして、KDDIはドローン用通信モジュールを提供するクアルコム、上空の3次元地図を開発するゼンリン、各種産業用ドローンを開発するプロドローンと提携している。
3月にはドローンの運行管理システムを提供するテラドローンも参画し、4月にはLTEを使った完全自律飛行実験に成功し、5月には新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)のプロジェクトにドローン警備が採択された。
今回ウェザーニューズとの提携では、運行管理システムがドローンの飛行指示をする際に天気情報を利用し、例えば突風情報があれば飛行計画を変更することができるようになる。
ウェザーニューズは長くKDDIと提携して天気情報を提供しており、全国のau基地局約32万局のうち3,000局に気象観測装置を設置して気象観測システム「ソラテナ」を構築している。こうしたウェザーニューズの気象情報と運行システムが連携し、より安全なドローンの飛行を実現するのが狙いだ。
さらにKDDIが持つ全国10カ所のネットワークセンターと基地局をドローンのインフラとして活用することも検討する。ネットワークセンターはドローンステーションとして、駐機・充電、点検・整備、セッティング、遠隔監視の場として、基地局はドローンポートとして、駐機・充電を担うようにする計画だ。
このインフラを活用するために、ドローンが画像認識で駐機・充電場所に自動で着陸できる機能を構築。実際に実験にも成功させており、長距離飛行時に途中で充電に立ち寄る、といった利用法を想定する。長距離飛行のために、送電鉄塔の上空の「ドローンハイウェイ」を活用するため、東京電力とゼンリンとも検討を行う。
これによって、ドローンステーションから飛び立ったスマートドローンがハイウェイ上を飛行し、途中でドローンポートで充電しつつ、広範囲のエリアを遠隔で飛行する世界の実現を目指す。
政府はドローン利活用に向けたロードマップを描いており、2018年ごろにはレベル3として無人地帯での目視外飛行の実現を想定しており、2020年代にはレベル4として、友人痴態での目視外飛行を想定する。
KDDIは11月に、新潟県長岡市山古志においてドローンステーションから飛び立ったドローンが、ドローンポートを経由して錦鯉の養殖を行うため池への薬剤散布を遠隔で行うという実証実験を実施して成功している。
この実験では、飛行距離6.3km、高低差100m以上という複雑な地形の上を、ゼンリンの3次元地図やテラドローンの運行管理システム、プロドローンの機体を使って飛行を行った。自動高度設定や自動充電を経て、種池の上空3mから薬剤を散布することができたという。
同社の執行役員常務である山本泰英氏は、「手作り感満載だが、やろうとしていることが一歩ずつ、着実に実現している」と強調。さらに長距離の自律飛行を成功させたことで、さらに実験を継続したい考えを示す。
その一環として、近畿日本鉄道とともに鉄道災害時を想定した実験を、長岡市とは自治体が抱える課題の解決を目指した取り組みを行う。さらに、道路検査や警備など、さまざまな分野での実験を進める意向で、一部声がかけられている分野もあるようだ。
現時点では国の法整備が追いついていない面もあり、制度面での充実を想定して実験を継続。法制度が整った場合に早期に事業化できるよう準備を進めていく考えだ。