鉄道関連の機材メーカーなどが一堂に会した「第5回 鉄道技術展 2017」が12月1日まで幕張メッセで開催されている。各社とも鉄道に関連する最新技術を公開し、「鉄道大国・日本」を支える技術力を示す場となっている。
向谷実氏も登場、訓練用シミュレータを出展
JR東日本テクノロジーと音楽館は、運転士・車掌教育教材「乗務員区所シミュレータ」を共同出展した。ブース内では運転士用のシミュレータの後ろ側に車掌用のシミュレータが設置され、実際の列車での運行環境が再現されている。展示された車掌用のシミュレータは、幕張メッセの近くを走る京葉線の仕様となっていた。
このシミュレータは運転士・車掌の連携訓練が可能となっており、フルハイビジョンモニタで正面・後方・左右側方の映像が速度に応じて動くようになっている。車掌用シミュレータでは客室扉の開閉動作もでき、戸挟みやドアコックの扱いも行える。
音楽館は向谷実氏が代表取締役社長を務めることで知られ、これまで各鉄道事業者や鉄道関連の博物館などに運転台のシミュレータを提供してきた。一方、共同出展したJR東日本テクノロジーの担当者によると、「JR東日本では教育に力を入れており、そのために車掌のシミュレータが必要だった」とのことだが、じつは「車掌のシミュレータはこれまでなかった」という。実車でもいいのでは……というわけではない。「ダイヤなどの制約が大きい」とのことだ。
そこで、これまで運転台のシミュレータを手がけてきた音楽館と協力し、運転士と車掌の連携が可能な訓練用シミュレータを製作したのだという。「当社には部品調達能力があるものの、シミュレータの技術がない。そこで音楽館と協力しました」とJR東日本テクノロジーの担当者は話す。
そこへ向谷実氏が現れた。「リアルなシミュレーションという点で私たちの技術を使っています」と向谷氏。この訓練用シミュレータは、現場に置く初めてのケースとなるという。「各地域の状況に合わせてカスタマイズしています。それぞれの違いを網羅するのには時間がかかりますが……」と向谷氏は言う。
音楽館がいままで培ってきた鉄道シミュレータの技術が、JR東日本テクノロジーの技術と一体となり、各地域の安全な運行に寄与することとなるだろう。
QRコードでホームドアが開く!? 都営浅草線で検証も
デンソーウェーブは新型QRコードを利用したホームドア開閉制御システムを展示している。このシステムでは、新型QRコードを列車車両ドアに貼り付け、駅ホームに設置した専用スキャナで読み取り、ドア数や編成車両数に応じたホームドアの開閉操作を行うことが可能になるという。QRコードはデンソーウェーブが開発したものである。
電車がやって来ると、停止直前にQRコードを把握し、停車の状態を確認する。そこでQRコードを読み取り、ドア数と編成車両数を把握してホームドアを開扉する。ドアが閉じると、連動して閉じるようになっている。
デンソーウェーブの担当者によると、このシステムは東京都交通局との共同開発であるという。今年8月に都営浅草線大門駅で実証実験を行い、11月24日から大門駅1番線ホームに1ドア分だけホームドアを設置して実運用上での検証も行われている。
都営浅草線では相互直通運転を行う京急電鉄や京成電鉄、さらに北総鉄道など各社の車両が乗り入れるため、他線区のようなホームドアを入れにくい。そこで「どんな車両でも適切なホームドア開閉のために」このホームドア開閉制御システムが開発されたという。加えて「車両改造投資が押さえられる」という利点もあるとのことだった。
自動化が利便性を向上させる
オムロンは駅窓口での自動化対話技術を公開していた。音声認識技術を利用し、駅窓口でのきっぷの購入を自動化する。きっぷを買いたい人が話しかけると、それに応答して適切なきっぷを提示する。スマートフォンでこのやり取りを行い、購入したいきっぷに合ったQRコードを提示し、そのQRコードをスマートフォン連動券売機に読み取らせて購入する。窓口での対話と同じような方法で、家でもきっぷが手配できるようになる。
JR東日本情報システムでは、遺失物管理システムの展示が行われていた。年間200万件の遺失物があるJR東日本では、返却率向上が求められている。かつては手書きで管理していたものの、それでは効率が悪かった。そこで、イントラネットシステムにこのシステムを導入することにより、返却率が1割向上したという。
最新技術が導入されることで、より安全性や利便性が向上し、スムーズで使いやすい、私たちにとって便利な鉄道のシステムになることに役立っている。鉄道技術展の各ブースを見学しながら、そんなことを感じさせられた。
「第5回 鉄道技術展 2017」は12月1日まで幕張メッセで開催。同会場で「第2回 橋梁・トンネル技術展」も同時開催されている。鉄道技術展、橋梁・トンネル技術展ともに開場時間は10~17時で、一般入場も可能。入場料は2,000円(招待券持参者、ウェブでの事前登録者は無料)となっている。