「中谷恵子です。よろしくお願いします」
2016年9月、4万18通の中から「第1回ミス美しい20代コンテスト」女王に輝いた是永瞳(22)は、このセリフで女優デビューを飾った。10月12日放送、テレビ朝日系ドラマ『ドクターX ~外科医・大門未知子~』第5シリーズの第1話、西田敏行演じる蛭間重勝医院長から第一秘書として紹介された中谷は、艶やかな雰囲気を漂わせながら恭しく頭を下げた。
主演・米倉涼子の同事務所後輩が代々務めている秘書役。しかも是永は、本作が初めての演技なのだから、相当なプレッシャーがあるのは想像に難くない。誰もが大門未知子の「私、失敗しないので」に憧れるが、是永は事前に通っていたレッスンでの”涙の大失敗”が、冒頭のセリフにつながっていた。
張り切っていた自分がバカらしい
――前回、晴れ着イベントでインタビューさせていただいてから間もなく1年になります。その間、徐々に活動の幅も広がっていますね。
あっという間で、充実していました。
――是永さんの出演シーンを注目して観たんですが、滑舌が磨かれている印象でした。
MCレッスンのほかに、演技レッスンでも発声や滑舌の練習をしています。結構そこは重点的に鍛えてもらっていたので、すごくうれしいです。
――最初の登場シーンで役名を名乗りますよね? すごく聞き取りやすかったです。MCレッスンというのは、具体的にどのような内容なんですか?
原稿をもらって、報道番組を想像しながら読み上げるレッスンです。イントネーションが間違っていたりするので、そういうところに気をつけて。講師は遠藤ミカ先生(教育開発部チーフ)です。
――厳しいですか?
礼儀も含め厳しく指導していただいています。指摘されている時の顔つきも注意されて(笑)。難しいことを一気に言われるとフリーズしてしまったことがあったんです。MCレッスンのほかに、演技、ダンス、ウォーキング、アクションのレッスンがあります。
――最初のレッスンは何か覚えていますか?
たぶん、ウォーキングだったと思います。1日1レッスンです。
――空手を経験されているので精神面も鍛えられてきたと思うのですが、心が折れそうになったことは?
ありました(笑)。MCレッスンです。それぞれ先生が違うんですけど、MCレッスンの時はガラスのハートが砕け散ったような感じで(笑)。表参道から自宅まで泣きながら帰ったことがありました。本業としてMCをやってらっしゃる先輩もいる中で、打ちのめされてすごく落ち込みました(笑)。
――先生からどのような問いかけがあったんですか?
残り5分ぐらいで「最後にやりたい人は?」という質問があり、いつものように最初に手を挙げました。一生懸命やっても途中で詰まってうまくいかないことが悔しくて、先輩がたくさんいる中だったのでそんなレベルなのに出しゃばった自分が恥ずかしくなっちゃって。原稿読んでいるうちに涙が溢れてきました。
――誰も助けてくれなさそうな雰囲気ですね(笑)。
そんなことないですよ(笑)! 優しい先輩たちばかりなので「大丈夫だよ」「私も最初そうだった」みたいに励ましてくださいました。でも、本当に恥ずかしくって。張り切っていた自分がバカらしいというか。本当に落ち込みました(笑)。
――空手で精神が鍛錬されていると、涙を流すこともあまりなさそうですね。
どちらかというとないほうだと思うんですけど、末っ子なので怒られることに慣れてないんだと思います。空手の先生からもたくさん怒られて、本当に大嫌いでした(笑)。でも、こうして上京して離れて時間が経つと、すごく大切な先生だと思えます。本当に感謝しかありません。
共演は大物役者からロボットまで
――役者さんはいろいろなスキルが求められますが、声もその1つだと思います。そういう点でいうと、「中谷恵子」の第一声はすばらしかったですよ。すごく聞き取りやすかった。
ありがとうございます。最初のシーン……私にとっては初めての演技です。どういうふうに役柄を作っていけばいいのか分からなくて、「それは自分自身で見つけるものだから、あえて言わない」「1話の撮影までに、自分なりに考えてきて」と言われたのでひたすら考えて、何パターンもできるように事前に準備して現場に入って。自分なりの答えを出して、合っている部分と修正すべき部分を表情の違い含めて細く説明してくださいました。
――記念すべき初演技の初シーンが役名を名乗る。一生忘れられないですね。
そうですね。でも、意外と前日はぐっすり眠れました(笑)。本当に直前じゃないと実感がわかなくて、昔からそうなんです。