「Windows TimeLine」は、ユーザーのアクティビティ(活動)の履歴をクラウドに記録し、異なるデバイス間で活用できる機能。例えば会社のPCで行った作業を自宅のPCなどでも行えるようになるものだ。「Fall Creators Update」(バージョン1709)に盛り込まれる予定だったが、見送りとなり、Windows 10の時期アップデート「Redstone 4」(開発コード名)以降で利用可能になる予定だ。
エンドユーザーにとって、Windows TimeLineはいまのところ分からないことが多い機能で、霧が立ちこめた状態といえる。しかし、2017年11月16日(米国時間)にMicrosoftがリリースしたWindows 10 Insider Preview ビルド17040で、わずかながらだが、その一端が見えてきた。
「設定」の<プライバシー>には、<アクティビティの履歴>が新たに加わり、履歴削除機能やWeb上の「プライバシーダッシュボード」にアクセスするリンクを用意している。もちろんWindows TimeLineに関するUI要素を目にすることはできないが、Windows TimeLineの概要を踏まえると、アクティビティ(活動)の履歴と直結しているのは明白だ。
プライバシーダッシュボードに目を向けると、既存の「音声」「検索」「閲覧」加えて、デバイスの場所を示すBingマップで示す「場所」が確認できる。下図は自宅の情報を含んでいるため履歴は削除しているが、取材で訪れた場所なども記録されていた。Windows TimeLineと訪れた場所の情報がどのようにリンクされるか分からないが、Microsoftの説明からセキュリティを担保するために利用するのだろう。
Microsoftは位置情報を記録する理由として、「普段は東京からサインインしているユーザーが突然ロンドンからサインインした場合、本当に本人による操作かどうか疑う必要がある」と認証の一意性を挙げて説明する。
Microsoft/日本マイクロソフトでは、社員が自社施設に入る際にIDカードを必要とするが、「日本マイクロソフト本社ビルでロック解除をした社員が、オーストラリアから社内LANへアクセスを試みると、利用場所とIPアドレスの場所が異なるためアカウントを即座にロックダウンする」と言う。一般的なPCユーザーには、やや過剰なセキュリティポリシーと言えるが、Windows TimeLineの利用時にセキュリティの心配は不要になるだろう。
Redstone4には、macOSやiOSのAirDropのように、無線LANやBluetooth経由でファイルを送信する「近くの共有」や、モバイルデバイスで閲覧中のWebページをPCで続きを読む「Continue on PC」など、PCとモバイルデバイスの連携を強化する新機能が次々と投入される予定だ。
さらにMicrosoftは、以前からデバイス間の垣根を越えた「Project Rome」を推進してきた。こちらはクロスプラットフォームを実現するIaaS(Infrastructure as a Service)と、Windows/iOS/Android、そしてMicrosoft Graph向けAPIの提供、インフラストラクチャーとAPIをつなげるデバイスランタイムから構成される。Windows 10バージョン1607から実装しているが、前述の機能はProject Romeに沿ったものではないだろうか。
Windows TimeLineが、ユーザーに対してどんな利益をもたらすのか、筆者も測りかねている。今回のプライバシーの変更についても公式ブログでは取り扱っていない。PC一強時代が過ぎたいま、日常的に持つスマートフォンと連携し、ユーザー体験を高める方向にWindows 10は進んでいる。この方向性が正しいか否かは、2018年3月にリリースされる次の機能更新プログラムで明らかになるだろう。
阿久津良和(Cactus)