芸術の秋ともなれば、部屋にセンスよくアート作品を取り入れておしゃれな雰囲気を出したくなりますよね。でもアートといってもいろいろなものがあり、どんなアートを選んで、どんな感じに飾ればいいのか難しいもの。なかなか手が出しづらいという方も多いのではないでしょうか?

そこで今回は、日本の中でも最大級のインテリアショップIDEE(イデー)の原田陽子さんに、一人暮らしの空間を彩る身近で手軽なアート作品の取り入れ方を教えていただきました。

初心者が部屋にアートを取り入れるコツはありますか?

「基本的に、アートにはこれが正しいという決まりはないんです。なので、センスに自信がないとか部屋のイメージに合わなかったらどうしようとか、あまり堅苦しく考えることなく、好きなものを自由に楽しんでもらいたいと思っています。

どうしても、何を選んでよいかわからない方は、まず自分の部屋をどんなイメージにしたいかを想像し、自分が理想とする部屋のテーマやメインカラーに合ったものを選ぶと見つかりやすいかもしれません。例えば、シックで落ち着いた部屋にしたいならモノトーン、女性らしい部屋が理想ならパステルカラーの優しい色合い、華やかさや元気さを出したければ原色使いのダイナミックな絵柄、といった感じ。他にもダイニングに飾るなら食べ物がテーマのアートにするなど、部屋の用途に合ったものを飾ってもよいかと思います。

また、一口にアートといってもいろんなものがあります。一人暮らしの若い方であれば比較的手頃な値段で買えるポスターがおすすめ。エディション(シリアルナンバー)のない大量作品でもすてきな作品がたくさんあります。家具やファブリックを新しくするお金がなくても、大きなポスターを1枚飾るだけで模様替えしたくらいお部屋のイメージをガラリと変えることができますよ」

作品を美しく保つためのコツや飾り方のポイントはありますか?

「紙でできたアートは直射日光(紫外線)を浴び続けると変色してしまう作品もあるため、アクリルパネルなどでカバーしたり、じかに太陽光が当たらない場所に置くとよいかと思います。他に紙の作品で気をつけることは水分が多いとシワシワになってしまいますから、湿度の少ない場所に置くようにしてください。どうしても部屋がジメジメしがちなら素材が紙ではなく湿気に強いものを選ぶのがおすすめです。ベッドの近くに飾る場合は地震などがきても落ちてこないようにしっかりと固定することが大切。市販のフックには耐久重量の記載がありますから、作品の重さに耐えうるものを使うこと。そして、一つのフックにかけるのではなく、二つのフックを使った2点留めがおすすめです。重さが左右に分散されることでバランスがよくなります。

飾り方についてですが、ポスターや絵画などの平面アートは壁に飾るのが一般的と思いがち。でも狭い部屋で壁に沿って家具が並んでいる場合など、壁に大きなスペースがない場合もありますよね。大きな作品なら思い切って床に置いて飾ってみてはどうでしょうか? 逆に壁の面積が広い場合はその部分に大きな絵を飾ることで空間の主役になります。小さくてこまごましたものをコレクションのように飾りたい場合は、一番のお気に入りを真ん中に置いてポイントにし、そこを中心軸に縦と横の軸に合わせてジグザグになるように配置すると、飾るものがバラバラでもまとまりがよくなります」

最後に、自分の好きなアートはどうやって見つければよいのでしょうか?

「なんといってもいろんなアートをたくさん見て触れてもらいたいです。あちこちで無料の展示会もありますし、家具やインテリアショップの店にもアート作品やアートになるような雑貨がめじろ押し。見つけた瞬間に一瞬で気に入ってしまうような、いわゆる一目ぼれの出会いもあれば、何度も何度も足を運んで時間をかけて選ぶ方もいます。選び方は人それぞれ。これといった決まりはありません。アート作品との出会いは生き物と同じ。新しいペットを迎える時に、合わなかったらどうしよう、とは思いませんよね。ビビっと来た出会いがあればそれは運命。いろんなものをたくさん見ているうちにきっとすてきな出会いがあると思いますよ」

取材協力:原田陽子(イデーショップ 自由が丘店)

1975年に「黒崎貿易株式会社」を設立。ロンドンより西洋アンティークの輸入販売を開始。1985年にIDEE SHOPを南青山(骨董通り)に出店。その後ミラノを皮切りにニューヨーク、ロンドン、東京、ベルリンで展示会を開催し、現在は六本木や渋谷などに複数店舗を構えると共にオンラインショップも展開している。
http://www.idee-online.com/shop/