不動産を所有していると毎年土地や家屋の固定資産税・都市計画税の納付通知書が送られてきます。東京都の場合は「固定資産課税台帳に登録された価格に不服がある場合には、この納税通知書の交付を受けた日の翌日から起算して3月以内に、東京都固定資産評価審査委員会に対して審査の申し出をすることができます」と書かれてはいます。しかし、評価の仕組みや書かれている文言の意味を知っている方はどのくらいいるでしょうか。
固定資産税と都市計画税とは
■ 固定資産税
売買価格の事例などから想定される妥当な売買価格をもとに決定され、市町村長が固定資産課税台帳に登録します。3年に一度見直され、評価額はおおむね公示価格の70%程度とされます。固定資産税額は固定資産課税台帳に登録された評価額の1.4%です。下記の小規模宅地以外の住宅用地については、一定の条件範囲内であれば、評価額の1/3、都市計画税については2/3を課税標準と算定されます。
■ 都市計画税
都市計画事業等に必要な費用に充当するために、原則として市街化区域内の土地と家屋の所有者に課せられます。税額は上記固定資産課税台帳に登録された評価額の0.3%以下を条例で定めます。
■ 小規模住宅用地の特例
住宅用地で200平米以下の部分については、固定資産税については評価額の1/6、都市計画税については1/3を課税標準と算定されます。集合住宅の敷地については200平米×戸数分が軽減対象です。これは人が住むことによって、住民税等の税収が得られ、消費が活発になり地域が活性化するためです。そのため空室があったり、空家であったりすると、本来はその分は軽減措置の対象とならないことになります。平成27年に施行された「空家等対策の推進に関する特別措置法」では、特定空家に指定された場合は、この特例を受けられない場合があることが明記されました。
負担調整率とは
土地の固定資産税評価額は3年に1度評価替えが行なわれています。その際、固定資産税評価額が急激に上昇すると、納税者の負担が急に増大し、納税が困難になる場合があります。土地の固定資産税評価額が大きく上昇したときでも、土地の固定資産税課税標準額の上昇を低く調節する措置が講じられます。その時に定められた上昇率を「負担調整率」です。 具体的には、下記の式により今年度の土地の固定資産税課税標準額を定めています。
「前年度の固定資産税課税標準額×負担調整率=今年度の固定資産税課税標準額」
負担水準とは
上記の調整の結果、価格等と課税標準額との離れ具合(これを負担水準といいます)にばらつきがあります。その結果、同様の価格の土地であっても課税標準額に差が生じ、税負担が異なる場合があります。負担水準を均衡化し税負担の公平を図るため、負担水準が一定水準以上の土地は課税標準額を抑え、それ未満の土地はなだらかに課税標準額を引き上げています。具体的には負担水準は下記の式で計算されます。
「負担水準=前年度の固定資産税課税標準額 ÷ (今年度の固定資産税評価額×課税標準の特例率)×100」
地目って何?
不動産登記法では、田、畑、宅地、学校用地、鉄道用地、塩田、鉱泉地、池沼、山林、牧場、原野、墓地、境内地、運河用地、水道用地、用悪水路、ため池、堤、井溝、保安林、公衆用道路、公園、雑種地の23種類に区分されています。普通の市街地は「宅地」ですが、畑や山林、原野などは住宅の設計をしていると経験することがあります。敷地内に水路が通っているケースも何度かありました。水路には簡単に建物を建てることができませんので、管轄部署とアレコレ調整や確認が必要です。もちろん水路とあっても表面的には水が通っているわけでも地面がくぼんでいるわけでもなく、周りの地面と何ら変わりはありません。それでも地下は水の通り道になっているかもしれませんし、水の権利は難しいのです。地目によっては建物が建てられなかったり、建てる人が制限されたりします。
非課税地目とはどんな部分?
墓地、境内地、運河用地、水道用地、用悪水路、ため池、堤、井溝、保安林、公衆用道路などは非課税地目に指定されています。
実際に計算してみよう
マンションの場合を例にとると、マンションは区分所有なので価格として全体の価格が示されます。
価格×1/6(100%小規模宅地適用の場合)=固定本則課税標準額
固定本則課税標準額÷持ち分比率)=固定課税標準額
固定課税標準額×1.4%=固定資産税額
上記は固定資産税と都市計画税の説明部分以外は、すべて土地のケースですが、家屋の場合は構造種別ごとに㎡当たりの課税標準額が決められていて、構造種別ごとに定められている法定耐用年数に応じて減価償却されていきます。したがって土地の固定資産税額や都市計画税額は市場価格によって上下しますが、建物の固定資産税額や都市計画税額は次第に低くなっていきます。
<著者プロフィール>
佐藤 章子
一級建築士・ファイナンシャルプランナー(CFP(R)・一級FP技能士)。建設会社や住宅メーカーで設計・商品開発・不動産活用などに従事。2001年に住まいと暮らしのコンサルタント事務所を開業。技術面・経済面双方から住まいづくりをアドバイス。
※画像と本文は関係ありません